コワーキングスペース大手「WeWork(ウィーワーク)」は9月24日、同社の中国事業に対し「摯信資本(Trustbridge Partners)」が2億ドル(約210億円)を出資して、過半数の株式を取得したことを発表した。摯信資本の運営パートナー姜躍平(Michael Jiang)氏が中国事業のCEO代行を務める。

WeWorkの親会社「We Company」は中国事業に対する経営権を手放すものの年間サービス料は今後も徴収し、中国事業が引き続きWeWorkブランドやサービスを使用できるようにする。

WeWork中国事業の身売りを巡り、市場ではこれまでもさまざまな臆測が飛び交っていた。

今年1月には、シンガポールの政府系ファンド「テマセク・ホールディングス(Temasek Holdings)」が摯信資本と共同で中国事業の株式取得を目指していると、ロイター通信が報じた。

そして今回、テマセクではなく摯信資本への売却が決まったわけだが、市場はこの取引をそれほど好意的に見ているわけではない。

あるマーケットアナリストはインタビューに答えた際に、次のように指摘している。「WeWork中国事業としては、1元(約15円)以上の値がつけば御の字だ。業界からすれば、現地マーケットになじめず失敗した事例が1つ増えたに過ぎず、新しい企業がそれに取って代わるだけだろう」

昨年に上場計画が頓挫してからWeWorkは一気に凋落する。その評価額はピーク時の470億ドル(約5兆円)から、今年3月には30億ドル(約3100億円)へと急落した。

出資者であるソフトバンクとはあつれきを生じ、事業引き継ぎや資本注入、訴訟問題などで大いにもめた。また大規模リストラや私立小学校「WeGrow」の閉鎖、大企業偏重という大幅な戦略転換など、WeWork内部の問題も次々に明るみに出た。

それに追い打ちをかけるかのような新型コロナウイルス大流行で、WeWorkの先行きにさらなる暗雲が立ちこめる。全体の4分の1を占める月契約会員のうち多くが、感染症対策を理由に契約更新を行わず、そのまま月額料金を踏み倒しているケースもあるという。アセットヘビー型の経営を行っているWeWorkにとっては大打撃だ。

今年3月、WeWork CEOと会長は債券保有者に宛てた手紙の中で、感染症拡大により、すでに公表した2020年の目標を達成することは不可能であろうとの見方を示した。

期待を寄せられていた中国事業の業績も及第点にはほど遠い。目論見書のデータによると、2019年上半期の中国市場での売上高は全体の5%にも満たない730万ドル(約7億7000万円)にとどまる。

現在、WeWorkは中国の12都市で100カ所以上のコワーキングスペースを運営しているが、フィナンシャル・タイムズ紙のデータによると、各都市のWeWork空室率は上海市が35.7%、深圳市が65%、西安市が78.5%となっており、中国はWeWork全体の中でも業績不振が顕著な市場だと言える。

欧米諸国のパンデミックはいまだ終息していないが、中国市場はアフターコロナへと移りつつある。今回のWeWork中国事業の売却が果たして吉と出るのか、疑問が残ると言わざるを得ない。
(翻訳・畠中裕子)