『家政婦のミタ』『過保護のカホコ』『同期のサクラ』といった人気ドラマを手掛けた脚本家・遊川和彦の監督作だ。運命で結ばれた男女の30年間を“3月”だけ切り取って描いている。その3月だけが繰り返される構成こそが、この映画の魅力の要因となっている。

 3月は、桜の季節であり、卒業や年度替わりなど人生の節目の時期。東日本大震災が起きた月でもある。だから男女の激動の恋模様を描くのに、うってつけなのは間違いない。それでも、人生の節目は3月に限られているわけではない。遊川監督がこだわったのは、むしろ同じ月が“繰り返される”ことの方だろう。

 ここでは、ヒロインが乗り遅れたバスを追い掛けるシーンや、若くして亡くなった親友の墓参りが、時代を移して繰り返し描かれる。とりわけ、親友の墓の前では、同じシチュエーションや構図、動きによって、その時々の二人の境遇や距離感の変化が視覚的に表現される。これは小津安二郎が築き上げた映画ならではの芸術表現であり、切なさとユーモアがない交ぜとなった喚起力は、その一つの発展形と言っていい。

 テレビドラマの脚本家による、映画の特性を熟知したアプローチに驚かされる。確かに、クライマックスでカセットテープの声が重要な役割を担うなど、セリフ=言葉に頼る“脚本家の映画”の側面も垣間見えるものの、コアな映画好きにも観てもらいたい作品である。★★★★☆(外山真也)

脚本・監督:遊川和彦

出演:波瑠、成田凌、杉咲花

3月20日(金)から全国公開