漫画家の夫名義のTwitterを、妻が更新して宣伝する。そんな家内制手工業感溢れる、ちょっと変わったアカウントを見つけた。家庭内の出来事を描いたコミックエッセーについて物語の中心人物である妻自身が発信する、その一連のツイートが味わい深くて印象的で、そしてなにより九州の方言丸出しの妻がとてつもなく可愛くて(一人称は「オイ」)、最新作を手に取った。

 福満しげゆきの新刊は、子育てを中心に描いたフィクションという形の「私漫画」である。結婚して数年経ち、「僕」の漫画でなんとか食べられるようになると、妻はずっと続けていた仕事をアッサリ辞め布団の上でゴロゴロするようになる。ある日、妻はムックリ起きてこう言った。「赤ちゃん欲しい」と。かなりの難産で、頭を器具で引っ張られて誕生した長男は、生まれつき右耳が小さく、その聴覚に問題があると診断されてしまう。それが原因なのか言葉が遅く、幼稚園に入園してからも他の子どもに比べてかなりマイペースな長男。その苦悩の日々を、文字通り笑いあり涙ありで描いている。

 作中、妻と「僕」が子どものことで涙するシーンや意見が衝突するシーンがあり、読んでいて辛くなる瞬間も多々あった。その一方で、息子が検査でベッドに横たわりヘッドフォンをさせられている姿を見て「僕」の笑いが止まらなくなったり(その後、妻にも伝染)、耳の形の矯正のため、医師が針金で固定しようとしているところを見て、19歳くらいの頃「包茎だからモテない」という仮説を導き出し、ティッシュで作った「包茎養成ギプス」なるものを長時間装着していたことを思い出したりしている。そんな思考のとっ散らかりを、正直に描こうとしているのもまた印象的だ。

 幼稚園でボスママ軍団に標的にされたり、「うちの子天才かも!?」的瞬間があったり、小学校に入学したら同級生や上級生にまでいじめられたり。前途は多難で両親からも「この子大丈夫かな……」オーラが漂っているが、物語の中盤、ある転機が訪れる。そこからの長男の快進撃が、すごい。メキメキと自信をつけ、この間まで泣いてばかりだったのに、嫌なことは嫌だと主張ができるようになり、自分の身を自分で守れるようになっていく。そして自分が楽しいと思える世界の中で他者と交流し、友達を作る。その成長が鮮やかに描かれていて、ああ、奥さんから「あんたなんもせんくせに」って罵られているけど、ちゃんと見守ってるんだなあっていう、その眼差しが感じられる。

 子どもって、大人が自分の可能性を信じると、伸びしろは天井知らずになるのかもしれない。そんな親子の信頼関係が描かれた本書。これからどんなふうに成長していくんだろう。その過程をこれからも見続けたいと思わせてくれる、あたたかな一冊だ。

(講談社 720円+税)=アリー・マントワネット