2018年6月23日、タイ北部のタムルアン洞窟に地元サッカーチームの少年12人とコーチが閉じ込められた。豪雨で水位が上昇し、狭い通路が塞がれてしまったのだ。世界中が見守る中、18日後に13人全員が無事救出された、まだ記憶に新しいニュースの映画化だ。この映画の面白さの要因は、いくつか考えられるが、(1)事故が起きて間を置かずに製作されたこと、(2)ドラマチックな奇跡の感動作を目指さなかったこと、この2つが大きいだろう。

 まず(1)だが、事故直後から当事者や関係者に入念なリサーチを行い、その年の10月には既に撮影がスタートしている。しかも、その際に協力を得た当事者たちが、本人役で出演もしているのだ。それがキャスト陣の演じていないかのような存在感につながっている。

 (2)に関しては、端的にリアリティー重視と言い換えた方が分かりやすいかもしれない。徹底してフィクションの作劇法が排除され、主人公がいないばかりか主要キャラの紹介もなされない。ただ救出へのハードルだけが提示され、劇的な演出もなければ、緊迫した場面でBGMも流れない。バックボーンの説明もなくいきなり遭難し、そこから救出されるまでの推移が淡々と描かれるのだ。

 でも、だからこそその場に立ち合っているかのような臨場感が生まれ、結果が分かっていても最後まで緊張感が途切れない。この題材にとって最良の選択がなされた証拠だろう。★★★★☆(外山真也)

監督:トム・ウォーラー

出演:ジム・ウォーニー、エクワット・ニラトウォラパンヤー

11月13日(金)から全国公開