池袋暴走、88歳男性が逮捕されなかった事情 有罪の場合は3年6月〜4年の実刑か

池袋暴走、88歳男性が逮捕されなかった事情 有罪の場合は3年6月〜4年の実刑か

 東京・池袋で4月19日、乗用車が暴走して母子が亡くなり、9人が重軽傷を負った事故で、運転していた飯塚幸三・元通産省工業技術院長(88)が12日、書類送検された。警視庁は起訴を求める「厳重処分」の意見を付けたが、なぜ元院長を逮捕しなかったのだろうか。インターネット上などで批判が相次いでいた。また起訴され、有罪の場合はどの程度の刑が科されるのか、類似事件の判決を紹介する。(共同通信編集委員=竹田昌弘)

 なるべく任意捜査、逃亡や罪証隠滅のおそれがポイント

 逮捕に関する法令から見てみよう。刑事訴訟法には、検察官や警察官などは「被疑者(容疑者)が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる」(199条1項)と定められ、逮捕状を請求された裁判官は「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある」と認めた場合、逮捕状を発付する(2項)。 

 ただ刑事訴訟規則では、裁判官は逮捕の理由があっても「被疑者の年齢および境遇ならびに犯罪の軽重および態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡するおそれがなく、かつ、罪証(犯罪の証拠)を隠滅するおそれがないなど明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない」(143条の3)とされ、逃亡や罪証隠滅のおそれの有無が大きなポイントとなる。 

 警察官が捜査に当たって守るべき心構えや捜査の方法、手続きなどを定めた犯罪捜査規範(国家公安委員会規則)では「捜査は、なるべく任意捜査の方法によって行わなければならない」(99条)、「逮捕権は、犯罪構成要件(犯罪行為を類型化したもので、犯罪と犯罪でない行為を区別するカタログ的な役目を果たす)の充足その他の逮捕の理由、逮捕の必要性、これらに関する疎明(証明より低いが、一応確からしいとの推測を裁判官に与える)資料の有無、収集した証拠の証明力等を十分に検討して、慎重適正に運用しなければならない」(118条)となっている。 

「逮捕しないのは通常の捜査」

 元院長の正式な容疑は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律違反の過失運転致死傷。殺人や傷害などの故意犯ではなく、運転上の必要な注意を怠った過失犯にとどまる。 

 さらに元院長は事故で胸の骨を折る重傷を負い、1カ月入院した。捜査関係者によると、警視庁は現場で車を押収。元院長が入院中に、自宅などの関係先を家宅捜索したほか、車の機能検査も実施し、証拠収集を進めた。その結果、車の機能に異常はなく、アクセルとブレーキの踏み間違えが事故原因と断定した。元院長は当初は「ブレーキが利かなかった」と話したものの、その後は「パニック状態になりブレーキとアクセルを踏み間違えた可能性もある」と供述しているという。 

 こうした事情を踏まえ、事故現場や車の状況などから過失運転致死傷の罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由はあるものの、元院長が逃亡したり、罪証を隠滅したりするおそれはなく、逮捕しなかったとみられる。 

 元検事の弁護士によると、交通死亡事故では、被疑者が負傷していない場合、現行犯逮捕するケースは少なからずあるが、勾留請求はせず、48時間以内に釈放することが多い。機能検査など捜査に時間がかかる事故もあり、容疑者が取り調べなどに協力する場合は任意捜査を続けるという。「元院長を逮捕しないのは通常の捜査」とこの弁護士は話している。

 法定刑は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金

 一方、事故で妻の松永真菜さん=当時(31)=と長女の莉子ちゃん=同(3つ)=を亡くした男性(33)は、12日の記者会見で「2人や社会のためにも、軽い罪で終わらないようにできることをやり、少しでも交通事故が減るように活動していく」と語った。9月には、元院長に厳罰を求める署名約39万人分を東京地検に提出している。

 2人が亡くなるなどして被告が過失運転致死傷の罪に問われた類似事件では、次のような一審判決となっている。①は道交法違反(過労運転)の罪でも起訴された。

 ①広島県東広島市の山陽自動車道のトンネルで2016年3月、トラックが渋滞の列に突っ込み、2人が亡くなり、8人が負傷した事故で、トラックの運転手は広島地裁で懲役4年

 ②同年10月、石川県七尾市の自動車専用道路でワゴン車を運転中、居眠りして対向車線にはみ出し、マイクロバスに正面衝突、乗っていた中学生2人を死亡させ、13人に重軽傷を負わせたとされた被告は金沢地裁で禁錮3年6月

 ③神戸市のJR三ノ宮駅前で今年4月、市営バスが横断歩道に突っ込み、歩行者2人が亡くなったほか、4人が重軽傷を負った事故で、バスの運転手は神戸地裁で禁錮3年6月

 過失運転致死傷の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金で、検察側の求刑は①懲役6年、②禁錮6年、③禁錮5年だった。元院長が有罪の場合、これらの量刑が参考になりそうだ。


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