昭和天皇が日本に無条件降伏を求めた米国、英国、中華民国、ソ連によるポツダム宣言の受諾を、ラジオの「玉音放送」で国民に伝える5日前の1945年8月10日。日本政府各省の官房長らが内務省(戦後廃止)に集まって決めた、戦争終結処理方針の中には、公文書の焼却があった。ポツダム宣言に「戦争犯罪人ニ対シテ厳重ナル処罰加ヘラルヘシ」と定められていたからだ。

 当時課長補佐クラスの内務官僚で、戦後は衆院議員となり、文相や法相などを歴任した奥野誠亮さん(2016年11月死去)が生前、公文書の焼却を証言し「戦犯の問題が起きるから、会議では私が『証拠にされるような公文書は全部焼かせてしまおう』と言った。犯罪人を出さないためにね」と語っている。地方の行政機関にも、奥野さんら内務官僚が公文書焼却の指令書を届けたという(15年8月10日の読売新聞朝刊)。 

 政府が「桜を見る会」の招待者名簿は既に廃棄したと主張し続けているのも、よもや「全部捨てさせてしまおう。犯罪人を出さないためにね」と廃棄を指示したり、廃棄したことにするよう命じたりした人がいるわけでもあるまい。 

 ただ今年に入り、内閣府が公文書管理法に違反し、招待者名簿を「行政文書ファイル管理簿」に記載していなかったことが発覚。廃棄の際、首相と協議して同意を得る手続きも経ておらず、公文書管理法を無視していたと言われても仕方がない対応は、何やら都合の悪いものを隠そうとしているようにも思えてくる。 

 そういえば、安倍政権では、森友学園への国有地売却問題を巡り、財務省と学園の交渉記録などは「保存期間1年未満」の公文書として廃棄された上、国有地売却の決裁文書が改ざんされた。加計学園問題では、内閣府の審議官らから獣医学部新設は「総理のご意向」と言われ、文部科学省が早期開学を迫られたと記された文書について、菅義偉官房長官は当初「怪文書」と決めつけ、文科省内の2度目の調査で、文書の存在が確認されると、文科省と内閣府で「言った」「言わない」の水掛け論となった。 

 さらに南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報は、情報公開請求に陸上自衛隊が「廃棄した」と回答しながら、実際は、防衛省や陸自で電子データを保管していた。イラクへ派遣された陸自部隊の日報も、防衛省が野党からの提出要求に「不存在」とし、当時の稲田朋美防衛相も「確認したが、見つけることはできなかった」と答弁したが、陸自に電子データで、陸上幕僚監部には紙で残っていた。公文書をないがしろにする安倍政権の姿勢は、目に余るものがある。 

 内閣府が無視した公文書管理法の1条では、公文書は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置付けられ「主権者である国民が主体的に利用し得る」と定められている。そして「国民主権の理念にのっとり(中略)現在および将来の国民に説明する責務が全うされるようにする」としている。敗戦時と同じように、政権にとって都合が悪い公文書を廃棄するなどして隠蔽(いんぺい)したとすれば、健全な民主主義と国民主権の理念に背く行為に他ならない。(共同通信編集委員=竹田昌弘)

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