新型肺炎の感染が発覚したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」には、今も多くの乗船者が船内待機を余儀なくされている。船室から見える横浜の景色は変わることがなく、不安で押しつぶされそうな日々が続く。情報も限られ、疲労は蓄積する一方。変化のない日々に、今日が何日なのかもすぐには分からなくなってきたという。客室で下船を待つ札幌市の男性(70)が12日夜、スマートフォンを使って自らの思いをつづり、47NEWS編集部に送ってくれた。

 ▽感染者の搬送

 2月12日朝、ダイヤモンド・プリンセス号は、横浜市の大黒ふ頭に接岸した。ふ頭には、約30台の救急車が待ち構えていた。船長の定時のアナウンスは、「現在、新たに確認された38人(後に39人に訂正)の搬送作業を行っています」と伝えた。

 次々と船に救急車が近づく。ブルーシートの中を、感染者とみられる乗客が車内に運ばれている。デッキからのぞき込む乗客は「明日はわが身かも」と不安そうな表情を浮かべている。

 ふ頭には、横浜市の消防車や自衛隊の車両も見える。積み込まれる生活用品などの補給物資が、うずたかく積まれ、フォークリフトがせわしなく作業を続ける。日の光に包まれたのどかな横浜港。このふ頭だけが異様な緊張感に包まれている。

 ▽妻の高血圧

 私の妻は高血圧と糖尿病の持病がある。不足していた医薬品は、船室に届けられた。しかし10日、上の血圧が200を超え208に上がった。その後も160以上の高い血圧が続き、12日午前、船内の医療スタッフに連絡した。数時間後、医師と看護師ら3人のチームが部屋を訪れた。

 「現在の血圧は?」と尋ねられたので、「さっき測ったら155でした」と妻は答える。「それなら大丈夫。血圧が200を超えたり、ふらつきや頭痛があったりしたら、教えてください」と言われた。1分間の診察で終わった。

 1週間以上続く、船内での軟禁生活。三度の食事は届けられるものの、次第に食欲は低下してきている。起きているのか、眠っているのか分からないような、ぼーっとしている時間が多くなってきた。昼夜に関係なく、たまらなく眠い。蓄積疲労だろうか。

 ▽限界超える不安

 約30平方メートルの私の船室。歩数計を見ると、当初は1日で2千〜3千歩だ。船側は乗客の健康に配慮し、デッキでの約1時間の散歩を許可した。船内には全く窓のない内側キャビン(客室)がある。ここに一日中閉じ込められたら、普通の人でもストレスで押しつぶされてしまうだろう。

 この1時間の散歩も、マスクの着用はもちろん他の人との間隔を2メートル以上開けるなどの厳しい条件付きだ。

 「無事に下船できるか」「下船できる時期はいつか」という思いが乗客の中で高まっている。85歳の顔見知りの乗客は、数日前に検体検査を行ったという。

 「下船の時期が早まるのではないか」と期待したが、そのメドは何も伝えられていない。日に日に感染者は増えている。「このままならいつか自分も感染してしまうのではないか」と吐露した。

 乗客の不安は、とうに限界を超えている。