足を踏み入れると、床には大量の骨が散らばる。目を刺すような悪臭が漂う中、やせ細った猫たちは積み重なったふんの上で餌を求めて泣き叫んでいた―。3月末、札幌市北区の一軒家で、238匹の猫が市や動物愛護団体に保護された。大量に繁殖し、十分に飼育ができない「多頭飼育崩壊」の状態に陥っていたとみられる。動物愛護法を所管する環境省は「1カ所で200匹を超える猫が保護されるのは非常に珍しい」としている。猫の繫殖力は極めて高く、不妊・去勢手術を怠ると1組の猫から2000匹以上に増える可能性があると言われている。(共同通信=大日方航)

 ▽10匹程度から

 何の変哲のない一軒家。ここに50代の夫婦と息子が大家から借り受け住み始めたのは2018年末から。家賃を滞納したため大家が訪れたところ、238匹もの猫を発見した。1階と2階にそれぞれ半数ずつ。特に2階の衛生環境が悪く、猫の皮や骨が散乱していた。大家は、明け渡しを求め札幌簡裁に提訴し、夫婦らは20年の3月末に退去した。

 大家側からの相談を受けた同市動物管理センターや動物愛護団体のスタッフらがその後、屋内に立ち入り、猫を順次保護していった。

 共同通信の電話取材に応じた飼い主の男性によると、一軒家に妻と息子と引っ越した2018年末当時、猫は10匹程度だったという。その後、100匹程度に増えたが、ペットとしてそれぞれに名前をつけ、愛情をもって接していたと説明する。建築関係の会社を経営しており、月に約70万円の収入があったといい、「毎月40万円程度は餌代などに費やしていた。猫のために一生懸命働いていた」と話す。

 19年になって筋肉が思うように動かなくなる病気になり入院した。仕事もままならなくなり、同年6月から家賃を滞納するようになる一方、不妊や去勢の手術費用も払えず、猫は増え続け、手に負えなくなった。

 ▽ためらい

 男性は、市の動物管理センターに連絡することも考えたが、「殺処分される可能性があるのが嫌でためらってしまった」と振り返る。結局、大家の提訴を受け、ことし3月末に猫を残したまま一軒家を離れた。「家を出る時、涙を流しながら手放した。猫に謝りたいという思いでいっぱい」と反省の言葉を口にする。

 残された238匹の猫はセンターが保護し、その後全ての猫は愛護団体が預かったり、個人が引き取ったりした。愛護団体は再譲渡先を探している。

 男性は今でも毎日、保護された猫の様子を愛護団体のホームページで確認しているといい、「猫に申し訳ない気持ちでいっぱい。将来的に団体への寄付などを通して、できるだけ罪の償いをしていきたい」と話す。

 ▽刑事責任

 約70匹を預かった札幌市のNPO法人「ニャン友ねっとわーく北海道」の勝田珠美(かつた・たまみ)代表は「耳が聞こえないなど障害を抱えた猫もいた。動物愛護法に抵触するのは明らかで刑事責任を追及すべきだ」と指摘する。今回の件については地元の警察署も把握している。

 多頭飼育崩壊は不衛生な環境下で餌や水が満足に与えられないこともあり、過去の判例などによると動物虐待に当たると判断されるケースも多い。さらに6月1日には改正動物愛護法が施行され、著しく適正を欠いた密度で飼育し、衰弱させた場合も虐待であると規定。1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられることとなった。

 愛護団体から委託され、保護された猫の去勢や不妊の手術を担当した高橋動物病院(札幌市)の高橋徹(たかはし・とおる)会長は「かわいい猫を増やしたいという気持ちはわかるが、飼い主は手術を絶対に徹底しなければいけない。自分が余裕を持てる数以上を飼育することは、ケースによっては虐待といえる」と話した。

動画はこちら

https://youtu.be/OtUDR8oz5pY

にゃん友ねっとわーく北海道のホームページはこちら

https://nyantomo.jp/