猛暑日が連日続くなか、全国では熱中症による搬送者数が急増している。近年は毎年のように酷暑となり熱中症への警戒が各方面から呼び掛けられてきたが、新型コロナウイルスが流行中のこの夏はこれまでとは異なった対応が求められる。似ているとされる熱中症と新型コロナ感染症の症状は具体的にどのようなものなのか。感染対策と熱中症予防の両立をどう図るのか。知っておきたいポイントをまとめた。(共同通信=松森好巨)

 「臨床症状のみから熱中症とCOVID―19を鑑別することは困難である」

 熱中症と新型コロナについて、こう明確に記したのは日本救急医学会などが7月に発表した「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き」。医療従事者向けではあるものの、国内外約2700もの論文を基にまとめられたその内容は、医療関係者でなくとも大いに参考になる。

 「鑑別が困難」としている理由は、両方の患者の症状が重なり合うことが多いからだ。では、どんな症状がどれくらいの割合で同じになるのか。

 手引きによると、軽度から中等症までの熱中症に多くみられる倦怠感、頭痛、筋肉痛は、新型コロナでもそれぞれ、35・5〜51%、6・5〜34%、11〜35・5%の割合で発症しているという。また、重症の熱中症で多くみられる意識障害も新型コロナ患者の9%で確認されたとの報告もある。そのほか、胃腸障害や吐き気・嘔吐といった症状も新型コロナと重なる部分だ。

 一方、新型コロナでは83・3〜91・3%という高い確率で発熱を伴うが、熱中症患者の多くも高体温となる。主な症状であるせきなど呼吸器症状も、重症の熱中症で頻呼吸が38・4〜40%、呼吸困難は71・4%に認められたという。

 これだけ症状が似通うなか、新型コロナの特徴的な初期症状である嗅覚障害と味覚障害だけは、熱中症患者の症状として報告されていない。ただ、すべての新型コロナ患者が同様の症状を訴えるわけではなく、嗅覚障害は52・7%、味覚障害は43・9%で認められたという。

 以上のようなデータから手引きは、症状から熱中症と新型コロナを鑑別できるかという問いに対して、「嗅覚障害や味覚障害を認める場合COVID―19を疑う根拠になる」とする一方、それだけでは決定打にならず、冒頭に挙げたように症状のみから見分けることは難しいという内容をひとまずの回答としている。

 手引きではそのほかにも「予防」や「診断」などの項目に「QA」と「解説」を設けてコロナ下における熱中症への対応を記している。「治療」の項目では、熱中症患者であっても新型コロナが疑われる場合は、その体表面や呼気にウイルスが存在していると想定して対応に当たるべきとしている。この点、現場に遭遇し介抱にあたる際は事後の手洗いなど注意しておきたいところだ。

 もちろん、熱中症は放置すれば死を招きかねない緊急事態であり、呼び掛けに応じないなど症状が重い場合は早急に救急車を呼ぶことが求められる。そうした症状に応じた対処法ついては環境省がまとめた「熱中症環境保健マニュアル2018」に記載されている。

 また、環境省と厚生労働省は「新しい生活様式」での熱中症予防行動のポイントをまとめており合わせて参考にしたい。

 そこでは、屋外で人と2メートル以上の十分な距離が取れる場合はマスクを外すことに加え、着用時は負荷のかかる作業や運動は避け、こまめな水分補給を呼び掛けている。また、暑い時は外出を避け屋内で過ごすことが推奨される。その際、エアコン使用中であっても窓やドアなど2カ所を開けて換気することが大切だ。