「KIMONOで世界が一つになれるという平和のメッセージを伝えたい」。東京五輪・パラリンピックに向け、213の国・地域の歴史や文化、景色などの特徴を盛り込んだ振り袖と帯213着がこのほど完成した。一般社団法人「イマジンワンワールド」(東京)が企画し、人気ユーチューバーのフワちゃんも着用。着物を通じて人と人がつながり、多くの縁も生まれている。新型コロナウイルスで海外へ気軽に旅行できない今、各国の着物で旅行気分を味わえるかもしれない。(共同通信=高田知佳)

 ▽ランウェイ

 9月5日に行われた「第31回マイナビ東京ガールズコレクション2020AUTUMN/WINTER ONLINE」。軽快な和楽器による演奏をバックに、華やかなステージに登場したフワちゃんは、青を基調とした花柄の着物を身にまとい、少しぎこちないながらもランウェイを歩いた。最後は扇子を広げてポーズを決めた。

 この時のフワちゃんの着物はカリブ海のセントビンセント・グレナディーンをイメージしたもの。帯は国の重要無形文化財に認定された沖縄県の宮古上布で制作された。フワちゃんの明るいイメージに合うように選ばれた。

 イマジンワンワールドが手掛けた各国・各地域の着物は、山形県の米沢織や京都府の京友禅などの伝統技法で、18都府県の着物作家や職人が手織り、手染めした。制作費は1着200万円で、総額約4億円を寄付で賄った。

 販売低迷などで衰退する和服産業を盛り上げようと、2014年、イマジンワンワールドの前代表で、福岡県久留米市で呉服店を営む高倉慶応(たかくら・よしまさ)さん(52)が発案。その後、代表を手嶋信道(てじま・のぶみち)さん(53)が引き継いだ。

 制作にあたっては各国の在日大使館や出身者を訪問して、国の文化などを聞き取り、イメージを膨らませた。これまでにも昨年6月のG20大阪サミットなどでも一部披露された。

 ▽文化を知る

 それぞれの着物にはストーリーがあり、デザインや柄などから各国の文化を知ることができる。

 フランス 白い百合の花が大胆に配置され、自由で伸びやか、高潔なイメージを表した。レスリング女子で五輪3連覇の吉田沙保里(よしだ・さおり)さんが今年1月、東京証券取引所で行われた東京五輪に向けたニューイヤーセレモニーで着用した。初めて出場した国際大会がフランスだったことからこの着物を選んだという。

 チャド 風にあおられて波打った砂漠の上を野生のラクダが闊歩(かっぽ)する。その頭上で神秘的な月と太陽が見守る。金沢市の着物作家、高田克也(たかた・かつや)さんが制作した。加賀友禅の作家に弟子入りし、独立するまで10年以上かかったが、現在40代で着物作家としてはまだ若手。失敗が許されない環境で「受け取る側の気持ちを考えながら、自分の思うチャドの世界観も表現できた」と喜んだ。

 マリ 日本全国の「まり」の名前が付いた女性たちが資金を出し合い作り上げた。サハラ砂漠とニジェール川を描いた。かつてのマリ帝国の繁栄を放射状の光で表し、国章に描かれている弓と矢、世界遺産のジェンネの大モスクも見える。

 パラグアイ 国木「ラパチョ」の花を日本画のように描いた。この大仕事に染匠(せんしょう)の山田容永(やまだ・やすのり)さんは「こんなに思いっ切り冒険ができるのは一生に何度もない」と胸を躍らせた。インクジェットの技術が進んで安価な着物が大量に出回ったため、手染めの生産数が激減しているが、「若い人にも未来に誇れる仕事だということが伝わればいいですね」と語った。

 日本 最後に完成したのは日本の着物。京友禅の振り袖で、白と赤を基調に47都道府県の花をあしらった。

 ▽来年の五輪、25年の万博でも

 これらの着物は、本来なら東京五輪の開会式が始まる予定だった7月24日午後8時、イマジンワンワールドのウェブサイトで公開された。

 今後は10月16〜18日に京都市で展覧会を開くほか、来年の東京五輪の大会中や25年大阪・関西万博などでも披露する予定だ。

 高倉さんは「各国の歴史や文化を知るきっかけとなり、見た人が世界に興味を持ってくれたらうれしい」と話し、手嶋さんは「着物を通じて平和への理念を伝えていきたい」と語った。

イマジンワンワールドのホームページはこちら

https://www.piow.jp/