2025年に大阪市を廃止して四つの特別区に再編する「大阪都構想」の賛否を問う市民対象の住民投票が11月1日に迫る。都構想の実現を訴える大阪維新の会代表代行でもある吉村洋文府知事に話を聞いた。(聞き手 共同通信=副島衣緒里、黒木和磨)

 ―なぜ都構想が必要なのですか。

 大阪は狭い面積の中に府と政令指定都市の大阪市があります。都市機能が市外にも広がってきたことで、府と市が似たようなことをする「二重行政」が生まれました。府市は共通の成長戦略を作らず、それぞれで大学や高層ビル、同じような施設をつくり、一方で必要なインフラ整備は進めてきませんでした。この状態が「府市合わせ(不幸せ)」とやゆされてきたのが大阪の歴史です。この問題を解消する手段の一つが都構想だと考えています。改革の必要性は、われわれ大阪維新の会が最初に唱えたわけではなく、他の政治家も言ってきたことです。

 今は僕と松井一郎市長がお互いの役割を明確にし、仮想的な都構想の形(バーチャル都構想)で二重行政を防いでいます。ただし、これは個人的な人間関係で成り立っているもので、脆弱です。制度として確立させる必要があります。

 ―どんなメリットがありますか。

 都構想を実現して意思決定の一本化や迅速化ができれば、都心部を中心とした交通網整備などで都市デザインを進めてきた東京都のように、府全体で最適の都市戦略を作ることができるようになります。これは大阪の成長にとって必要なことです。

 都市として成長すれば税収が伸び、結果的には住民サービスとして住民に還元できます。これが最大のメリットです。京都や兵庫など経済圏が一体のエリアにも経済効果は波及すると考えており、周辺地域にもメリットがあると思います。

 ―デメリットはないのですか。

 前回2015年の住民投票で否決され、今回の制度案は反対派の意見も踏まえて修正してきました。だから決定的なデメリットはないと考えています。あえて言えば、都構想への移行に約240億円の初期コストがかかることでしょうか。でも僕はこれについては、必要な投資の範囲内だと考えています。

 「大阪市」の名前がなくなるといった心情的なものがあるかもしれませんが、それ以外の決定的なデメリットはつぶしたと思っています。今のままなら二重行政が確実に残るわけですから、そのほうが問題だと思います。

 ―新型コロナウイルス禍の中で住民投票を行うことには批判も出ていますが。

 緊急事態宣言が出たり、投票すら難しいぐらい大幅に感染者が増加したりした場合は、当然考えなくてはいけません。しかし、住民投票とコロナは二者択一ではないと思います。大阪の未来に向けた選択とコロナ対策、どちらも必要です。コロナ後を見据えた大阪の未来についても考える必要があります。感染症対策に気を付けた上で両立は可能だと思います。

 ―他の自治体の在り方についてはどう思いますか。

 都構想には、東京一極集中を是正し、東西二極の一極となる副首都・大阪をつくるという意義もあります。僕は各地の都市が個性的、多極的に成長していくことが今後の日本にとって理想だと思っていて、今のままの制度ではそれは難しいでしょう。パソコンだってバージョンアップしていくのだから、統治機構についても考え直すべき時期です。

 すべての都市が都構想を目指すべきだとは思いませんが、政令市と都道府県は程度の差はあれど、どこもぶつかりやすく、関係の在り方は課題です。もっと言えば、都道府県という単位が適切なのかという問題も時代とともに出てくるでしょう。どうすれば力を発揮できるか、それぞれの都市が真剣に考えるべきだと思います。

 ―住民投票の勝算は。

 直前になると、どうしても人間は保守的になりがちなので、厳しい戦いになると思っています。何度もやるものではないので、これが最後になるでしょう。可決に向けてベストを尽くします。否決されたときに政治家としてどうするかは、そのときの自分と相談してみないと分かりません。

   ×   ×

 よしむら・ひろふみ 1975年、大阪府河内長野市生まれ。弁護士。大阪市議、衆院議員、大阪市長などを経て昨年から府知事。