コロナウイルスの感染拡大による雇用への影響は、男性と比べてより女性のほうが大きいことが指摘されている。女性の就業問題を研究する、労働政策研究・研修機構(JILPT)の周燕飛主任研究員に話を聞いた。 (聞き手 共同通信=岩原奈穂)

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 JILPTは、4月の時点で民間企業で働いていた4307人を対象に、インターネットで5月と8月の2回にわたって調査を実施した。「18歳未満の子どもの有無が、休業割合や労働時間にどれほど影響したのか」という観点で分析すると、女性には明らかな影響が出ていることが分かる。コロナ禍によって増えた家事や子育ての負担が女性に集中しているのが理由の一つとして考えられる。

ー具体的には?

 4月時点で働いて、その後休業に転じた人の割合とその変化を見ると、全体では5月末の3・3%から2カ月で1・6%に減少した。一方、子育て中の女性の休業割合は7・1%から6・1%と高止まりしたままだった。ちなみに子育て中の男性は1・0%から0・3%に改善した。

ー保育園の利用制限や学校の休校は7月末時点では緩和されている。なぜ子育て中の女性は休業割合が高いままなのか。

 私自身、保育園や学校に通えるようになれば女性の雇用も急回復すると考えていたので、結果を見て驚いた。保育園や学校は再開されても、分散登校や保育園の登園自粛がしばらく続いた。それで母親への負担も続いたのではないかと推察している。コロナ禍の長期化や感染リスクを心配して元々は復職しようと考えていても先延ばしにしたり、あきらめたりする人もいるだろう。

ー休業のほかに、失業した人や、求職活動自体を止めている人を足した割合でも、男性4・2%に対して、女性は7・2%と高い。

 コロナ禍での完全失業率の上昇幅や休業割合も、男性と比較して女性が大きく、影響を受けた。安倍政権下で働く女性の数は増えたが、多くはアルバイトや派遣社員など非正規労働者だ。雇用の調整弁に使われた可能性が高い。

ー影響が大きいのは単身女性やシングルマザーだけか。

 そうではない。日本では、バブル経済が崩壊するまで、主たる世帯の稼ぎ手は男性で、女性は家事育児を担う代わりに、働いたとしても「おこづかい程度」と見なされていた。ただ男性の生涯賃金は1997年ごろがピークで、その後2割も減っている。一方、世帯所得はそれほど減っていない。女性の収入が穴埋めしているということだ。

 妻の収入は子どもの教育費や住宅ローン返済など家計の中で重要度を増している。妻の休業で収入が減れば、世帯の家計が余裕をなくしたり、生活困難に陥ったりする可能性がある。単身女性やシングルマザーだけの問題ではない。

 ーコロナ禍ではテレワークが広がり、定着すれば女性も働きやすくなると期待された。

 男性は5月最終週、7月最終週ともにテレワークをした人の割合がコロナ前より高かった。だが、女性は7月最終週にはコロナ前とほぼ変わらない割合に戻っていた。女性の就業先が飲食業や小売業といったテレワークが難しい仕事の人が多かったためとみている。

 ーコロナ禍で見えた女性の雇用課題にどう取り組むべきか。

 コロナ前には非正規労働者の正社員登用など雇用の質や安定性を高める動きがみられた。これらが後退してしまった印象だ。雇用の質を上げて男性か女性かを問わず労働市場で能力を発揮できるようにすることは、国内総生産(GDP)向上にもつながる。政府は、長期的な視点で正規就業や継続就業を高めるよう取り組み続けるべきだ。

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 しゅう・えんび 中国・湖南省生まれ。専門は労働経済学 、社会保障論。労働政策研究・研修機構(JILPT)主任研究員。