教育の現場に人工知能(AI)やITなど新しい技術を取り入れる「エドテック」といわれる動きが広がっている。「Education(教育)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語だ。国は小中学生に1人1台パソコンを配布する方針で、小学校ではプログラミングの授業が必修となった。新型コロナウイルスの影響もあり、みんなが同じ教室で同じ内容の授業を受ける従来のスタイルは変革が求められている。教育現場は変わるのか。最新の現場を報告する。(共同通信=澤野林太郎)

 ▽コーチ

 「大丈夫かな」。塾講師が生徒に歩み寄り、声を掛けた。講師のタブレット端末には、中学2年生13人がどの問題をどれぐらいのスピードで解いているかが表示される。ある生徒には「1次関数の文章題に2倍以上の時間がかかっています」と警告が出た。

 愛知県で60校舎以上を展開する「野田塾」は6月から授業にAI教材を導入した。生徒の習熟レベルや進度に合わせた最適な問題と講義映像を生徒用のタブレットに提供する。問題が解けなければ基礎に戻って再スタートし、つまずきの原因も特定する。

 教材を開発したIT企業「アタマプラス」(東京)によると、教材の組み合わせは全員が別々で、パターンは数億を超える。勉強した履歴は全て記録され、つまずいた箇所や進捗(しんちょく)状況も確認できる。中学2年の男子生徒は「苦手な部分がよく分かる」と満足そうだ。

 授業中、生徒はイヤホンをしてタブレットに向かい、講師は黒板を使わない。野田塾の稲垣光亮(いながき・こうすけ)講師(34)は「生徒が自分のペースで、ゲーム感覚で学習する。講師の役割は生徒の状態に早く気付いて声を掛けること。コーチする感じだ」と説明した。「ログアウトしてください」。50分の授業が静かに終わった。

 ▽リモート

 大手の駿台予備学校は4〜6月、新型コロナウイルスの影響で校舎を閉鎖し、リモート授業に切り替えた。AI教材はインターネット環境があればどこでも使えるため多くの生徒が自宅で授業を受けた。

 授業開始時間はいつもと同じ。生徒がログインすると、校舎にいる先生のタブレットに生徒の進み具合が表示される。ログインしない生徒や解答が進まない生徒には、職員が電話して状況を確認する。分からない問題や質問があるときはチャット機能で先生に連絡が取れる仕組みも整えた。駿台津田沼校(千葉県習志野市)の職員佐藤栞(さとう・しおり)さん(24)は「離れていても何をしているかが分かる」と説明する。

 全国の学習塾約2千教室がアタマプラスを採用し、学校でも授業にAI教材を導入する動きがある。アタマプラスの稲田大輔(いなだ・だいすけ)社長(39)は「コロナの影響でリモート授業も増えた。皆が同じ場所で同じ内容の授業を受ける時代ではなくなった」と話した。

 ▽格差

 学習塾などではIT機器の導入が進んでいるが、学校での動きは鈍い。学校には高速大容量の通信ができるインターネット回線が整備される予定で、デジタル教科書の導入も検討されている。しかし先生がデジタル教材に慣れておらず、教材の質や内容も十分ではない。地域や学校によってネット環境の整備状況に差があり、自宅にパソコンがない生徒もいるため、教育に格差が出ない配慮が必要だ。