今年のお盆休みは帰省して良いのだろうか―。新型コロナウイルスの感染が再拡大している中、帰省の是非を巡る混乱が広がっており、お盆を目の前にしても収まる様子はない。政府内でずれが生じていることに加え、専門家や帰省する人を迎える自治体の首長がそれぞれに発言しているためだ。(共同通信=榎並秀嗣)

 ▽分かりにくい

 「慎重に考えないといけないのではないか」

 2日の会見で西村康稔経済再生担当相が口にしたこの言葉が発端となった。帰省に際しては、実家の祖父母ら高齢者への感染リスクを考慮するよう求めたのだ。この発言に対し、菅義偉官房長官は翌3日、「国として県をまたぐ移動を一律に控えてくださいと言っているわけでない」と言明。西村氏の発言は、自粛を含む帰省を制限する方向性を意図したものではないと釈明した。

 これを受け、野党は「支離滅裂。国民は何が政府の方針だと理解すればいいのか」と批判。与党からも「メッセージが分かりにくい」と苦言が出た。

 5日には政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長が記者会見。十分な感染防止策が困難な場合は「帰省はできれば控えていただきたい」と述べた。加えて、慎重な判断を国民に促すよう政府に提言したと明らかにした。ところが尾身氏の後に会見した西村氏は「一律に自粛を求めるものではない」と強調した。

 6日に広島市で記者会見した安倍晋三首相。基本的な感染防止策の徹底を求めた上で「高齢者の感染につながらないように十分注意してほしい」と述べるにとどめ、自粛は求めなかった。

 ▽同じ県で違う見解も

 帰省に対する首長の考えもさまざまに分かれている。

 秋田県の佐竹敬久秋田県知事は「この夏は学生らの帰省を控えるよう、家族からお願いしてほしい」と首都圏など感染拡大地域からの帰省自粛を要請した。6日に会見した東京都の小池百合子知事は、帰省や夏休みの旅行で都外に出るのを控えるよう都民に要請した。

 6日時点における直近1週間の新規感染者数(人口10万人当たり)が29・9人と6日連続で全国最多となるなど深刻な状況にある沖縄県の玉城デニー知事も「できるだけ沖縄にリスクを持ち込まないでほしい」と自粛を求めている。

 一方、栃木県の福田知事は「ふるさとや親を思うという点でお盆は特別。一律に自粛・中止を求めることは致しかねる」と話した。兵庫県の井戸敏三知事も「帰省をやめろというのは酷」とした上で、大人数での宴会を控えるなど感染防止対策を徹底するよう呼び掛けた。

 青森県のように同じ県内の首長で発言が違う例もある。三村申吾知事は「友達や親戚に会う重要な機会。県民には帰省する人を温かい心で迎えてほしい」と話したのに対し、むつ市の宮下宗一郎市長は、感染拡大地域からは帰省を控えるよう動画投稿サイト「ユーチューブ」で訴えている。

 各県や地域で感染を巡る状況が違うので発言に差があるのは仕方がない。とはいえ、これらの発言が帰省するべきか判断に迷っている人の悩みを深めているのも事実だ。

 ▽インターネット上でも賛否分かれる

 専門家である医師会は一貫して帰省を控えるよう呼び掛けている。

 日本医師会(日医)の中川俊男会長は5日の記者会見で「我慢のお盆休みとしてほしい。3密を避け、帰省先の医療提供体制を確認した上で行動してもらいたい」と呼び掛けた。

 沖縄県医師会は7日に会見を開いた。この中で宮里達也副会長は「身内がいるから戻りたいと思うだろうが、ここは我慢してほしい」と述べた。

 インターネットの書き込みなどでも賛否が分かれている。その中で目立つのが、「自己判断すべき」という意見だ。西村氏も5日の会見で「国民の箸の上げ下げまで言うつもりはない」と語った。

 最終的には自分で判断しなければならないことは言うまでもない。だが、その前提となる材料がばらばらなのだ。国が国内旅行を推奨する「Go To トラベル」を実施していることも事情を複雑にしている。これでは戸惑う人が多いのも理解できる。

 西村氏は5日の会見で「(各地の知事の)メッセージも参考にしながら、それぞれの家庭で判断してほしい」と話した。

 こうした混乱状況の中で、国がやるべきは、すべてを国民任せにするのではなく、施策や方針など判断材料となるべきことを急ぎ整理し、わかりやすい言葉で国民に知らせることだ。