東京五輪・パラリンピックの開催が1年程度延期されることが決まった。24日夜の安倍晋三首相と国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が電話会談で一致、その後のIOC理事会で正式承認された。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けた対応で、延期は史上初めてだ。五輪を巡っては国立競技場の白紙撤回やマラソン札幌移転など想定外の事態に直面しながらも、7月24日の開幕に備えてきた。しかし今回は、突如現われた感染症という脅威にあらがえなかった。「来年、五輪は本当に開けるのか」。混乱と不安は続きそうだ。(共同通信=松本鉄兵)

 ▽前代未聞の連続

 56年ぶりとなる東京五輪は2013年9月、ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会総会で決まった。東日本大震災からの「復興五輪」を掲げ、アナウンサーの滝川クリステルさんが手ぶりを交えて訴えた「おもてなし」は流行語となるなど、国内は歓喜に包まれた。

 ただその後は、受難が続いた。故ザハ・ハディド氏がデザインを手がけた新しい国立競技場の当初計画は一時3000億円超との試算も出た。巨額費用に世論の激しい反発が巻き起こり、その後白紙撤回された。仕切り直しのコンペで、隈研吾氏らのプランが選ばれ昨年11月に完成したものの、目玉事業が迷走するという汚点が残った。

 前代未聞の白紙撤回は、国立競技場にとどまらなかった。大会エンブレムを巡っては当初の作品に盗作疑惑が浮上。選考が不透明との批判もあり、新しいデザイン選定を余儀なくされた。

 一方、開幕まで1年を切った昨年11月には、暑さ対策としてマラソン、競歩の開催地が札幌に急きょ変更された。五輪マラソンを開催都市以外で行うのは史上初。東京都の小池百合子知事は猛反発したが、IOCの決定には従わざるを得なかった。

 ▽贈賄疑惑も浮上

 贈賄疑惑もくすぶる。招致委員会がシンガポールのコンサルタント会社に支払った2億円超の一部が、IOC委員の票買収に使われたとみてフランス当局が捜査に着手。約18年にわたって日本オリンピック委員会の会長を務めた竹田恒和氏は五輪を見届けることなく、昨年6月に任期満了をもって退任した。

 五輪招致が決まって以後、都政の混乱も続いた。猪瀬直樹、舛添要一両氏は、いずれも自身の「政治とカネ」の問題で“開催都市の顔”である知事を辞任した。

 ▽戸惑うアスリート

 昨年末、中国・武漢市から始まり世界に広がった感染症。世界保健機関(WHO)がパンデミックと表明した3月以降、五輪延期を求める声がスポーツ界を中心に日に日に高まっていた。バッハ会長は24日、「来年の東京五輪は未曽有の危機を克服した人類の祝いになる」と強調してみせた。

 アスリートたちからは延期決定に賛同する意見が出る一方、「1年はちょっと長い」(重量挙げ女子の三宅宏実選手)など戸惑いも広がった。 

 代表選考がこれから行われる競技もあり、競泳や柔道は4月の選考会で五輪代表が出そろうはずだった。ただ今回の決定を受けて選考会の扱いは不透明に。感染拡大が続く中で、十分な準備ができない恐れがある他、既に出場権を得ている選手のモチベーションをいかに維持するかという課題も克服しなければならない。 

 大会関係者は今後、新たな日程や会場確保などの調整を急ぐ。しかし開催が想定される1年後、新型コロナウイルス感染症が収束している保証はない。専門家からは「1年延期されても開催が困難になる可能性はある」と指摘する声も出ており、本当に開催できるかは不透明なままだ。