【AFP=時事】警察の拘束下で米黒人男性ジョージ・フロイドさんが死亡した事件を受けて世界に広がった人種差別問題をめぐる議論の中で、国際的な注目を浴びるようになったフランス人女性がいる。アッサ・トラオレさんは4年前、弟のアダマ・トラオレさん(当時24)が警察に逮捕された直後に死亡するまで、社会運動とは全く無縁だった。

 3人の子の母親であるアッサさんは今や、警察の暴力と人種差別に立ち向かう象徴的存在として世界に知られ、米黒人政治運動家の名前にちなんで「フランスのアンジェラ・デービス」と呼ばれている。

 アッサさんは28日、米ケーブルテレビ局BETがアフリカ系米国人やマイノリティーの人々に贈る文化賞「BETアワード」で、「グローバルグッド賞」を受賞した。BETのウェブサイトによると、同賞は「自らの立場を社会的責任と善行に活用し、世界の黒人コミュニティーの福祉に尽くしている公人」を表彰するものだという。

 受賞に先立ちAFPの取材に応じたアッサさんは、「アダマに正義を」とプリントされたTシャツ姿で、「私たちが4年間取り組んできた全てが報われる。未来への力にもなる」と語った。

 2016年の弟の死以後、アッサさんは社会運動を起こし、抗議デモを主催し、人々に向かって演説し、無数の取材を受けてきた。ソーシャルワーカーの仕事を辞めて活動家に専念しながら、パリ郊外のアパートで小さな子どもたちと暮らしている。

「アダマのための闘い」はずっと地域レベルの運動にとどまり、フランス国外では全く知られていなかった。それが、フロイドさんの事件をきっかけに世界中で注目されるようになった。

 6月初めにはパリで大規模の抗議デモが行われ、全国的なデモも展開されて若い世代が関心を寄せるようになった。人生で初めてデモに参加したという女性は、「私も友人たちも皆、アッサのファンなんです。近所の女の子たちは彼女のおかげで政治に興味を持つようになりました」と話した。

■「偉大」な女性、「革命」呼び掛け物議も…

 アッサさんの兄ラッサナさんによると、アッサさんは弟アダマさんの死後「自然に」遺族を代表して発言するようになった。「息子を亡くした母親に少し似ている」とラッサナさんは昨年、AFPに語っていた。きょうだいの父親は1999年に他界したが、以降はアッサさんが「弟たちの面倒を見て、家族を抱き締めてきた」という。

 父親はマリ出身で、4人の妻との間に17人の子どもをもうけた。妻は2人が白人、残る2人が黒人で、アッサさんは「あらゆる人種と宗教が交ざった」家族だと述べている。

 27日のAFPの取材に対し「弟の名において、私に変えることができる何もかもを変えていく」と抱負を口にしたアッサさん。一方で、「革命」を呼び掛け、物議を醸してもいる。

 2018年にエマニュエル・マクロン大統領の政策に抗議する「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」運動のデモが起きた際、仏紙フィガロはアッサさんが、「アフリカでは人々が大統領を失脚させる。民衆が宮殿の中に入っていく。アフリカでそうしたことが起こるのだから、フランスで起きてはいけない理由はない。私たちには用意ができている。美しい革命を実行できる」と発言したと伝えた。

 ある警察高官はアッサさんについて、「カリスマ的な旗手を欠いた反体制運動を巧妙に体現している」と評価。「彼女は偉大だ。しかし、事実は残酷だ」と述べた。

 2016年以降、トラオレ家のきょうだい4人がアダマさんの死をきっかけに起きた暴動や無関係の犯罪容疑で逮捕・収監されている。アッサさんは、4人とも「政治犯」だと主張。「トラオレ家は警察によっていつの間にか戦士にされてしまった」と訴えている。 【翻訳編集】AFPBB News