和歌山県古座川町の古座川で「火振り漁」の時季を迎え、地元住民たちが各地で夜に舟上からたいまつを振って、産卵のため川を下る「落ちアユ」を網に追い込んでいる。漁期は12月31日まで。
 明治時代に山口県から出稼ぎに来た林業家が地元の人に教え、大正時代に町全域に広がったと伝わる漁法。かつてはわらで巻いたスギの葉に火を付けて振っていたが、今は灯油を湿らせた布を籠に入れて振っている。雨が降って川が濁ると川底まで火が届かないため漁ができず、曇りの日が漁に適しているという。
 同町高瀬の古座川では2日、杉尾延弥さん(63)=古座川町月野瀬、山﨑誠造さん(63)=同町池野山、杉尾行久さん(45)=同町高池=の3人が漁をしていた。
 3人は解禁日の9月20日から漁をしているが、雨が続いたため、この日は今季3回目の漁だった。日が沈んだ午後6時ごろから舟に乗り込んで、川に網を3枚仕掛け、たいまつの炎でアユを網に追い込んだ。約1時間で20センチほどのアユを約50匹取った。
 40年以上、火振り漁をしているという延弥さんは「昔は多い時で1枚の網に200匹以上掛かる時もあったが、今はそんなに取れないし、アユが小さい」と言い、中学生の時から火振り漁をしているという行久さんは「本格的に取れるようになるのは、今月中旬ごろになるのではないか。今月いっぱいは漁をする予定」と話した。
 延弥さんらによると、40年ほど前には100組以上が古座川で火振り漁をしていたが、現在は5組。この漁をするには舟と網が必要なことに加え、漁獲量が減っていることから、新たに始めようとする人は少ないという。