医師の適性

医師の適性

息子を医学部に入れるために収賄を働いた文科省の現役局長が逮捕された。
呆れた話だが、なぜそれほど医学部に固執するのか理解に苦しむ。
医者はそれほど割のいい仕事ではない。これからはAIに取って代わられて、もっと悪くなるかもとさえ言われている。

息子を医学部に入れるために収賄を働いた文科省の現役局長が逮捕された。
呆れた話だが、なぜそれほど医学部に固執するのか理解に苦しむ。
医者はそれほど割のいい仕事ではない。これからはAIに取って代わられて、もっと悪くなるかもとさえ言われている。

まずコスパから考えてみよう。
私立なら入学金、授業料はバカにならないし、卒業しても一人前の医師としての収入が入るまでには5〜10年はかかる。
その後も、勤務医を続ければ収入はサラリーマン並みだし、開業しても現在の保険制度では収支償うのは楽ではない。

次に今の偏差値重視の傾向を取り上げたい。進学指導にあたって、偏差値が高いと、本人の意に反しても医学部進学を勧めるというのはよく聞く話だ。言語道断である。
我々はいくら偏差値が高くても、人の気持ちの分からぬ輩はきて欲しくない。だいたい高い偏差値など、医師に必要ない。医学研究者は別だが。

求められているのは、人間性である。 我々医学教育に携わる者の間では、成績順に医学部の学生を、上位1/3、中1/3そして下位1/3に分けて論ずることがある。
上位は、成績優秀で、目的意識もしっかりしている。
中位は、成績はまあまあで、目的意識は定かでない。
下位は、成績は低空飛行で、関心は医学以外のところにある。
この学生たちの将来を追跡すると、上位の者は研究職で力を発揮するもが多いが、良い医師になるのは意外に中位が多く、下位もバカにできないことがわかった。
なぜだろうと考えると、医師としての明確な自覚は、受験生レベルでは何か個人的体験でもない限り、なかなか持てるものではない。やはり患者に接して初めて生まれてくることが多い。
ここが看護師希望の高校生と違うところで、面接でも彼ら、彼女らの方が、医学部志望の学生よりはるかに目的意思がはっきりとしている。

僕自身、恥ずかしながら学生時代は中位か下位をうろうろしていた。
それがインターンとして患者に接し、特に手術場で手袋をはめて、初めて医師としての自覚、というか"ああ俺は外科医になるべく生まれてきたんだ"という覚悟が生まれた。
そして外科医、形成外科医として歩んできたことを今では後悔はしない。
また生まれ変わっても、やはり形成外科医となるだろうとさえ思う。
それは医師という職業に意義を感じるからだ。
芸術家はともかく、現在のような分業社会では、多くの職業では自分の努力の成果を目にすることができない。まして顧客なりユーザーから直接感謝されることは少ない。
反対に営業成績を上げるためには顧客の利に反する売り込みを強いられることすらあるようだ。
だが医師は、仕事に忠実であるほど、直接相手から感謝される素晴らしい職業である。

若い諸君!
もし意思はあるのに迷っているならば、ぜひ医師の道にすすみたまえ、と励ましたい。

[執筆/編集長 塩谷信幸
 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」


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