渋野日向子に沸く日本、ニーマン初優勝に沸くチリ【舩越園子コラム】

渋野日向子に沸く日本、ニーマン初優勝に沸くチリ【舩越園子コラム】

米ツアーは早くも2019-2020年シーズンが開幕。第1戦のミリタリー・トリビュート・アット・ザ・グリーンブライヤーは、ビッグネームの姿こそ見られなかったが、話題満載のシーズン初戦となった。


この大会から、ランダムにピックアップされた数人の選手のドライバーの抜き打ちテストが開催され、予選カットは従来の70位タイから65位タイに変更されて決勝2日間のフィールドは今まで以上に少数精鋭になった。

そんなふうに、いろいろなチェンジが施された初戦だったが、大会2日目にケビン・チャペルが「59」をマークしたことは、米ゴルフ界では嬉しい出来事として大きく取り上げられた。

米ツアー史上11人目の「59」。米メディアはすぐさま「59達成の歴史」を掲載し、初の「59」をマークしたのは1977年のダニー・トーマスで、近年なら「ジム・フューリックやジャスティン・トーマスの記録が記憶に新しい」等々と振り返っていた。

だが、今回のチャペルの「59」が米メディアやファンから大きな注目を集めたワケは、昨年、腰の手術を受けたチャペルが10か月ぶりに試合に臨み、復帰戦でいきなり「59」出したというストーリーが伴っていたからだ。

「10か月前、僕はソファにじっと座っていただけで、歩くことさえできなかった」

そんな状況から這い上がり、いきなり「59」を出すなんて「ミラクルだ!」、「このまま優勝だ!」と米ゴルフ界は盛り上がっていたのだが、決勝2日間がどちらもオーバーパーとなったチャペルは、終わって見れば47位タイ。

1日爆発しただけでは勝利には及ばない。ゴルフは4日間72ホールの戦いであることを、あらためて感じさせられた展開だった。

そして、その4日間72ホールを最も見事に戦い抜き、勝利したのは、チリ出身の20歳、ホアキン・ニーマンだった。4日間すべてにおいて60台という高い安定性を示したニーマンだが、スコアより何より特筆すべきは、ニーマンが米ツアー史上初のチリ出身のチャンピオンに輝いたことだ。

「僕にとっても、僕の母国全体にとっても、信じられないほどの喜びだ」

南米の国、チリの人々は、渋野日向子の「全英AIG女子オープン」優勝に歓喜した日本の人々と同じように、ニーマンの米ツアー初優勝を喜んでいることだろう。

ニーマンは2018年にプロ転向したばかり。米ツアー2シーズン目の初戦でいきなり初優勝はまさに快挙だが、聞けば、彼とこの大会には特別な縁があるという。

「僕は一昨年のこの大会で米ツアーにデビューし、昨年大会で米ツアー出場権を確定させ、そして今年はこの大会で米ツアー初優勝した」

ゴルフの優勝物語の背後には、どうしてだか、そんな不思議な縁の話が必ずと言っていいほど存在するものだが、もう1つ、興味深く感じられたのは、彼の母国への想いだ。

「チリのゴルフはまだまだビッグではないけど、少しずつゴルフをする人も増え、ゴルフ場も増え、報じるメディアも増えてきた。もっとチリのゴルフを大きくして、米ツアーに来る選手を増やしたい。チリは今、9月18日の独立記念日のお祝いで沸いている。そんな特別なときに優勝できたことが、とても大きい」

日本風に表現すれば、20歳のニーマンは渋野らと同じ“黄金世代”だが、彼の母国にはゴルフの腕を競い合える「同世代」の選手はほとんどいないのが現状である。

だからこそ、初優勝を遂げたそのときに、母国のゴルフのこれからの隆盛を願い、牽引役を担っていこう、率いていこうと意を決していたニーマンの姿が頼もしかった。

いわゆる「ゴルフ後進国」は、ふと気づいたときには、すっかり「ゴルフ先進国」に成長しているというのが、近年の世界の動きである。日本のゴルフ界も、常に自らの立ち位置をチェックしてほしいと願っている。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>


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