「一枚くらいええやろ」ではすまされない シャッター音は選手生命に関わる【記者の目】

「一枚くらいええやろ」ではすまされない シャッター音は選手生命に関わる【記者の目】

国内女子メジャー第2戦「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」は渋野日向子が「全英AIG女子オープン」優勝後初となる関西上陸ということもあって沸きに沸いた。4日間の動員数は今季最多の35719人。会場となった兵庫県のチェリーヒルズゴルフクラブやギャラリー駐車場付近には車があふれ、“シブコ渋滞”と呼ばれる現象まで起きた。


一方で、同時にギャラリーのマナーも目立ってしまった。渋野の組に付く大勢の運営スタッフやギャラリー整理の学生アルバイトが、毎ホールのように「写真撮影をやめてください!」と注意喚起しても、スマホのカメラのシャッター音が消えない。ひどいときには、渋野や同伴競技者のティショットやパッティングのときまで鳴る始末だった。

マナーを知らなかった、ではすまされない人が多数いた。注意を受けて一度スマホを下げたかと思いきや、すぐさま再度スマホを構える人ばかり。あまりにもひどいので筆者も注意をしたが、あるギャラリーは結局筆者が2度注意してその場から離れた後、写真を撮っていた。

また、別のギャラリーには「スマホ越しに見ているだけ」という謎の言い訳をされた。どう考えたって肉眼のほうがよく見える(アップにして望遠鏡として使用しているわけではなかった)。さらには「一枚くらいええやろ」と開き直る人もいた。

問題をはき違えてはいけない。問題なのは写真を撮ることだけではなく、写真を撮る際に発生するシャッター音だ。米ツアーではギャラリーがスマホなどで撮影しているが、それはシャッター音がしないから。だから「一枚くらいええやろ」などという枚数の問題ではない。ツアーを撮影するカメラマンですらアドレスからインパクトまでは音の出るカメラでの撮影が禁止されている。

どうして、ここまでシャッター音に過敏になるのか。それはミスショットが生まれる以上に、選手生命に関わる可能性すらあるからだ。以前、宮里優作が自身のSNSで「トーナメントの時に切り返しでシャッターを押されて、その音に反応してしまい、腰痛を再発させた事がある。。それから凄く敏感になってしまっている。今日のようにずーっとスマホを向けられたままアドレスするのはかなり恐怖感があります。でも克服しなくては(原文)」と発言した。予期せぬ音が鳴ることは、そのレベルの大ごとなのだ。

この「予期せぬ」というところがポイント。野球やサッカーの試合のように常に応援が鳴り響く競技であれば、選手もそこまで気にならないだろう。例えば男子ツアーの「RIZAP KBCオーガスタ」では至るところで音楽が流れているが、選手はそこまで気にしていない。むしろ「その方が細かい音が気にならなくていい」という選手までいた。ゴルファーが静かなところでなければプレーできないのではなく、鳴るはずのないときに鳴る音だから問題なのだ。

渋野が帰国して今大会が4試合目。北海道で2試合、軽井沢で1試合が行われたが、これまでの3試合はここまでひどくはなかった。ギャラリーの人数の問題ではない。当然、今大会のギャラリー全員が全員ひどかったわけではない。マナーを守って応援している人も多数いたことは改めていうまでもないこと。ただ、守れない人があまりにも目立ってしまっていたのだ。

ほとんどの携帯電話にカメラが付き、スマートフォンが普及している。さらにインスタグラムをはじめとするSNSが広まっている今、写真を撮りたくなる気持ちが分からないでもない。思い出として残したいことも理解できる。だからといって、予期せぬタイミングで発せられたシャッター音のせいでミスが起きても、選手はプレーをやり直すことはできない。1打で1000万円以上という金額どころか、人生が変わる世界。大げさではなく、「一枚くらいええやろ」の気持ちが、選手の一生を狂わせてしまうのだ。

もちろん写真を撮りたいギャラリーのために、日本女子プロゴルフ協会や大会側としてまだまだ遅れている部分もある。女子ツアーでは、大会によってチャリティフォト(1000円以上チャリティすることで好きな選手と写真撮影ができる。最大人数が決まっており、人気選手は抽選)というものがあるが、これだけギャラリーの集まった今大会では実施されていなかった。

男子ツアーで行われている、一部エリアに限って写真撮影が可能な『フォトエリア』もない。ギャラリーに何らかのかたちとしてツアー観戦に行ったという思い出を残す方法は、もっともっと考えていかなければいけない。しかし、『そのぶんプレー中に撮影していい』とは絶対にならない。

注意喚起をここまでしても防ぎきれないのであれば、何か別の強攻策に出る必要が出てくる可能性もある。一番分かりやすいのは、「マスターズ」のように携帯電話の持ち込みを禁止すること。今年のマスターズの練習日に「人々が自分の携帯電話を見ていないことがどれほど素晴らしいだろうか」とローリー・マキロイ(北アイルランド)は言ったが、それは同時に、リーダーボードがない場所ではリアルタイムでスコアを知ることができない、待ち合わせの連絡がとれないなどの弊害が生まれることでもある。それはギャラリーにとってあまりうれしいことではないだろう。

10月末には今回のチェリーヒルズから車で15分ほどの場所にあるマスターズゴルフ倶楽部で、今大会と並ぶツアー最高額となる賞金総額2億円のビッグトーナメント「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」が開催される。昨年のアン・ソンジュ(韓国)のように、この大会を制した選手が賞金女王になる可能性は少なくない。また上位に入ってシードを決める選手だっている。各選手の人生が大きく左右する大会で、同じようなことが起きないことを願うばかりだ。(文・秋田義和)

<ゴルフ情報ALBA.Net>


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