今から47年前、1973年にタイムスリップ。帝王ジャック・ニクラス(米国)のスイングを振り返ってみよう。当時ニクラスは33歳。メジャー1勝を含むPGAツアー7勝を挙げ、通算6度目の賞金王に輝いた。キャリアとしては、歴代3位のPGAツアー通算73勝、歴代1位のメジャー通算18勝を挙げているレジェンド中のレジェンド。そんな全盛期のニクラスのスイングをゴルフスイングの歴史に詳しいプロコーチの井上透氏が解説する。


当時は左足をヒールアップして切り返すことで、地面から大きな反力を得て飛ばすというのが1つのパターンでした。ニクラスの時代は反力創世記で、この後、下半身を安定させてミート率を上げる方向性の時代が来るわけです。代表的なのはトム・カイト(米国)やカーチス・ストレンジ(米国)。それは、メタルヘッドが出て道具が飛ぶようになったから、自分から飛ばす必要性がなかったからなのです。ニクラスのときは自分で飛ばす時代でした。すごく球が飛んでいたんですよね。現代ゴルフのスイングにけっこう似ていると思います。

実際、バックスイングではフェースを地面に向けてシャットに使い、トップから切り返しで左サイドに倒れる動作そのものは、今の反力系のスイングの根幹ともいえます。左サイドに傾きを作ることによって、左に踏み込んだときにより大きな加重を生み出すわけです。もし今、当時のニクラスを反力測定したら、大きなフォースが出るでしょうね。

インパクトでヒザを伸展する動作がないので、今のスイングとは違うと感じるかもしれませんが、それはボールの違いが大きい。球を上げたいか上げたくないかの違いですね。今のボールは高弾道低スピンでも球筋が安定しますが、当時のボールは重心の位置がズレていたり、表面のティンプルの形状が甘かったりして、低スピンだと飛び方が安定しなかったのです。

野球でもスピンが少ないと、球が揺れて落ちますよね。それと同じことが起こる。ヒザを伸ばしてアッパーに打つよりも、上から打ち込んで低く出して浮き上がらせる方が変な球が出ない。そういう意味でボールの影響は大きいのです。ニクラスは地面から反力を得ながら、低く出してスピンを上げることで飛距離を出していた。当時の道具での飛ばしつつ曲げない最高レベルが、ニクラスのスイングだったわけです。

■解説・井上透
1973年生まれ。神奈川県出身。1997年からツアープロコーチとしてのキャリアをスタート。中嶋常幸、佐藤信人、米山剛などのコーチを務めた。現在は成田美寿々や穴井詩らを指導している。東京大学ゴルフ部監督としての顔も持つ。

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