1957年生まれのスペインの英雄、セベ・バレステロスは、17歳で欧州ツアー初出場。19歳で欧州ツアー賞金王に輝き、23歳でマスターズに優勝するなど数々の最年少記録を打ち立てた。マスターズ2勝、全英オープン3勝でメジャー通算5勝。1977年には20歳7カ月で日本オープンに出場し、当時のツアー史上最年少優勝を飾っている。この記録は2007年に石川遼が優勝するまで30年間破られなかった。ピンチをチャンスに変える伝説的なショットの数々は世界中のゴルフファンを魅了。日本ツアーでは通算6勝を挙げていて、日本のファンも多かった。2008年にがん性脳腫瘍と診断され、4度の摘出手術を受けて復活を目指していたが、2011年に54歳の若さで亡くなった。“セベ”の愛称で親しまれたレジェンドの20歳のスイングを、プロコーチの井上透氏が解説する。


セベは手首のコックを入れながら体の中心点とグリップの位置を遠くに取るスイングで、脚の力というより、クラブワークを上手に使うプレーヤーでした。本当にクラブさばきの天才で、彼がいろんなトリックショットができたのは、腕でクラブを動かすのが人並み外れて上手かったからです。

ただし、現代のクラブでこの振り方をするとダフります。トップからインパクトにかけて下半身よりも胸がかなり右にあるので、クラブの最下点も右に来る。よく言えば、ビハインド・ザ・ボールなんですけど、ここまで右サイドに体をキープしていると、クラブがアッパーに入ってチーピンする可能性が高いですね。

セベは球が曲がったからこそ、球を曲げることがすごく上手でした。当時のボールは曲がりやすかったので、曲げるサイドを限定したり、球を自在に曲げることそのものがゴルフの上手さだったのです。現代のボールは曲がらなくなってきたので、曲げる必要性がなくなりました。

ボールさばきの上手さにつながっているセベのアーリーコックも、今はあまり意味がない。テークバックで左手を下げるようにして、手首のコックを最初に作ってしまうと、切り返しにかかるエネルギーが弱くなってしまうので、私はあまりオススメしません。見た目はきれいだけど意外と球は曲がる。だからこそクラブの扱いが非常に卓越していたのです。

■解説・井上透
1973年生まれ。神奈川県出身。1997年からツアープロコーチとしてのキャリアをスタート。中嶋常幸、佐藤信人、米山剛などのコーチを務めた。現在は成田美寿々や穴井詩らを指導している。東京大学ゴルフ部監督としての顔も持つ。

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