<アース・モンダミンカップ 最終日◇29日◇カメリアヒルズCC(千葉県)◇6622ヤード・パー72>

首位と4打差の4位タイから出た渡邉彩香が、トータル11アンダーで並んだ鈴木愛とのプレーオフを制し、2015年「樋口久子 Pontaレディス」以来となるツアー4勝目を挙げた。世界中で猛威をふるうコロナ禍の影響で、大幅に遅れて訪れた開幕戦の舞台で5年ぶりのタイトルをつかんだ26歳は、「ここ2、3年は苦しかったですね」と涙に言葉をつまらせた。


自身初の経験となるプレーオフ。その1ホール目のグリーン上で、相手がパーパットを決めたのを見届けると、渡邉は4mのバーディパットを打つためアドレスに入った。「下りのスライスは一番好きなライン。『入れたいな』、というよりは『好きなラインだな』という気持ちで打ってました」。放たれたボールは、きれいにその大好きなラインに乗って転がっていく。そしてカップインするのを確信すると、ボールが消えるよりも早くパターを握った左手を高々と掲げた。暗く長いトンネルを抜けた瞬間だった。

「ここまでたくさんの人が私のことを気にかけて、応援してくれました。それにやっと応えられてホッとした」。久々の勝利の味は、うれしさと安ど感が混ざったものだった。「ずっと苦しんできたのもあったし、まさか開幕戦でここまでできるとは。プレーオフになって、初めて『優勝したい』と思いました」。最後の最後まで、この結末を意識することなくプレーを続けた。

「正直、もう勝てないと思った時もありました」。ここ数年の不調を振り返り、こんな本音が漏れる。その原因は、「一番好きなクラブ」だったはずのドライバーにあった。スイングで「上体がつっこむ悪いクセ」を直すことができず、「ずっとティショットに不安と気持ち悪さがありました」。フェアウェイキープ率をみると、2018年が「44.2308%」の95位で、19年も「44.1837%」の97位と低迷。それに比例するように成績も落ち込み、この2年間は賞金シードも手にすることができなかった。

不振脱却のために持ち球のフェードボールを諦め、ドローボールに活路を見出そうとした時期もあった。しかし、去年の夏頃を境に「フェードじゃないとダメ。それを打っている時が気持ちよくゴルフができていた時」と、プロとしての原点に立ち返ることを決意。今オフには中島規雅コーチと、「徹底的に」スイングを見直し、持ち味を取り戻すため悪癖改善に向き合った。

そして迎えた今季開幕戦。ドライバーを振った時の不安は「一切なかった」。「本来の開幕時期(3月)から調子はよかった」という言葉通り、大会を通じて美しいフェードの軌道を描くボールが、しっかりとフェアウェイをとらえた。「ここ数年苦しいゴルフだったので、すごく楽しかった。気持ちよくドライバーが振れて、もし優勝できなかったとしても楽しかったなと思えました」。優勝争いの最中もスコアボードを気にすることなく、普通にプレーできることのよろこびをかみしめていた。

「幸先よく優勝することができました。この状態をキープして、準備を怠らずに今後もやっていきたいですね」

優勝の瞬間、無観客の会場はわずかばかりの拍手の音が響くだけだった。「集中はできました。でもギャラリーがたくさんいる方が気持ちは盛り上がりますよね」。しかしプレーオフでウイニングパットを放った時、インターネット放送の視聴数は24万人を超えていた。多くのファンが、劇的な5年ぶりの復活優勝を、その胸に刻んだ。

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