677万3987人。国内女子ツアーの今季初戦となった「アース・モンダミンカップ」4日間72ホールのネット中継視聴回数だ。多くの人(延べ人数)がツアーを見たがっていたことがよくわかる数字だ。


鈴木愛とのプレーオフの末、渡邉彩香が復活優勝という試合展開の面白さもあるが、ネット中継も含めて大会が大成功だったのはまちがいない。以前から予備日を用意している数少ない大会とあって、梅雨どきの悪天候にも負けることなく、最終ラウンドを月曜日に順延。これも含めて行ったネットのライブ中継の評判は好評以外の何物でもない。

「やっぱりスポーツはライブ」、「どこでも見られるネット中継最高」、「これから全部これでいい」などという声が、SNSなどを通じてあふれる。ゴルフという競技の性質上、すべての選手のすべてのプレーを放送することは現実的でないため、そこに対する不満や、実況、解説者への不満が出るのは仕方ない。チャット機能により、それについてもその場で吐き出すことができるのもネットならではだろう。

テレビ中継がなかったことで、放送枠や番組スポンサーへの配慮などが必要なかったことも、ネット中継を後押しした。ネットユーザーにとっては、いいことばかりといっていい放送だった。

ただ、ネットユーザーでない人たちにとっては、困った形になったはず。これまでのテレビ放送で主に録画中継を見ていたゴルフファンの年齢層が高いことを考えると、一部のファンは置いていかれた格好となっている。

コロナウイルス感染拡大防止のため無観客という部分を除けば、予定通りのホール数消化に全力を尽くし、ライブでの完全中継という新たな試みを成功させたアース・モンダミンカップ。だが、すべては主催者であるアース製薬の意向によるものだ。日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の方向性と合ってはいるが、アース製薬の大塚達也会長が「選手たちのため」というコンセプトで大会を行っているのも、業界ではよく知られた話でもある。

ただし、ネット中継も予備日使用も一主催者の意向で実現しただけ、というのが現状だ。次に開催されるのがどの大会になるかはまだわからないが、このままこの方式が続くことにならないのが難しいところだ。

ハードルとなるのは、再三書いているようにそれぞれの試合の主催者が違うということ。元々、テレビ放送とセットで広告代理店が主催者にその週の試合を売るのが、これまでのビジネスモデル。JLPGAはツアー公認という形を取っているに過ぎない。

つまり、他の試合はすでにこれまでとあまり変わらないビジネスモデルで準備が進んでおり、いきなり変えることができず“アース・モンダミン方式”を一概にあてはめられないという事情がある。

テレビよりもネットという時代が来ているのは、今さらいうまでもない。自宅にテレビはなくともスマホならある、という若者も少なくない。今回のネット中継は、ファンにとっては何の問題もないことを証明した。ただ、今回は無料だったが、今後はネット中継でいかにお金を生み出すかを考えなくてはならないだろう。もちろんJLPGAはネットユーザーでないファンを置き去りにしない方法を考える必要もある。

コロナ禍の状況は、社会の様々な仕組みを大きく変えるきっかけとなっている。ゴルフトーナメントの世界が健全なスポーツビジネスの世界となるためには、何が必要か。今だからこそ、ツアーにはしっかりしたビジョンと手腕を持ち、情報をディスクローズしながら前に進んで欲しいものだ。

アース製薬の大塚会長が「選手のために」というスタンスを貫いているのは、ゴルフ業界ではよく知られた話。旧態依然としたツアーの仕組みにこだわっていない。JLPGAの小林浩美会長が勧める改革にも比較的理解を示している。4日間72ホールで予備日を作ること、ネット中継をすること。どちらもJLPGAが求めるこれからのツアーの姿だ。

それでも、JLPGAが主催者として主催する試合がほとんどないため、スポンサーの都合で物事が動くのは避けられない、今回のネット中継を楽しんだファンから見放されないように、改革を断行しなければ未来が明るいとはいえない。(文・小川淳子)

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