渡邉彩香の復活優勝に沸いた「アース・モンダミンカップ」。大会の話題の1つに、復活とまではいかないが、服部真夕の2季ぶりの予選通過があった。衝撃的なのは長年悩まされたアプローチイップスの克服法。なんと56度の左用のウェッジでアプローチしていたのだ。


ツアー5勝の服部がアプローチイップスに悩まされるようになったのは2013年頃。持ち前のショット力でカバーし、17年までは賞金シードをキープし続けたが、グリーン周りではだましだましパターやユーティリティーを使うなど工夫を重ねてきた。それでも18年にはシード陥落。19年はレギュラーツアー8試合に出場したものの、すべて予選落ちに終わり獲得賞金はゼロに終わった。

「アース・モンダミンカップ」のマンデー予選で本戦の切符をつかんだ服部は、「アプローチイップスになってから、右でなかなかうまく打てない。それなら、左で打ってみようと思い、かなり練習しました。バッグに左用の 56 度のウェッジを1本入れています。今日のラウンドでは 4 回打って2 回がパー。右だとダブルボギーになってしまうところが、左だと寄せてパー、悪くてもボギーで収まることを今日実感しました」と本戦中もコメントしている。

そもそもアプローチイップスとはどんな症状なのか。一時は服部と同じアプローチイップスに陥りながら、それを克服し、10年の「キヤノンオープン」でツアー2勝目を挙げた横田真一に話を聞いた。しかも横田は、昨年の国内男子下部ツアー「南秋田カントリークラブみちのくチャレンジトーナメント」の予選ラウンドで、AbemaTVチャレンジャーズの一員として参戦した服部と同じ組で回っている。

「イップスというのは、結局ヘッドがリリースできない状態です。本来なら釣りで竿を投げるように、手首を小指側に曲げてコックをほどくリリース動作があるのですが、それができないからボールまでヘッドが届かないわけです。昨年、真夕ちゃんと一緒に回ったときに『イップスで全然ダメなんです』という話は聞いていました。確かに、ラフからのアプローチがおかしかったから重傷だと思いました。花道からダメなのはわかるけど、ボールが浮いているラフもダメっていうのはよっぽどです」

なぜイップスになってしまうのか?

「ザックリやトップといった失敗体験が重なって、大脳に刺激的な信号が行ってしまうと、『その動きをもう2度としない』という制御が働くのです。極端な例でいうと、1歳や2歳の小さい子供だったらビルの上から飛び降りることができるけど、2歳を過ぎたらもう高いところからは飛び降りることができない。それがイップスです」

横田はアプローチイップスになった経験から、イップスになった人に会えば必ず克服法を聞くようにしている。

「イップスを直したっていう話はいろいろ聞きますね。ジャンボさんは、フォワードプレス(手元を一度目標方向に動かしてからヘッドを引く動き)をすることで、パターイップスを克服しました。ドライバーイップスでツアーから撤退した真野佳晃は、アドレスから正面に30センチくらいヘッドを持ち上げてからバックスイングに入るようにした。要するに同じ動きに戻すのは絶対に無理なんです。違う動きに変えないことには、イップスは直らない」

そこで話は左打ちのアプローチで予選を通過して4日間戦った服部真夕に戻る。

「左打ちで試合に出たことは素晴らしい。エクセレントです。イップスの人が行き着くところまで行ったら、左打ちしかない。僕もアプローチイップスになってからいろんな人に教わりましたけど、左打ちは極めて賢い選択ですね。僕自身は試合で試したことはないけど、10ヤード以内のアプローチであれば、グリーン周りで左打ちは意外と寄ります」

昨年からYouTubeを始めた横田は、クラブ契約をフリーにして、いろいろなクラブを試して動画にアップしている。そんな中、アプローチイップスに最適なウェッジを見つけたという。

「クリーブランドの『RTX4』です。普通の形状のウェッジに見えるんですけど、重心角が少し違っていて、パターのフェースバランスのような感じになっている。イップスの人はリリースができないから、ダウンスイングでどうしてもフェースが開いてしまうわけです。『RTX4』はトゥが開きにくい形状だから、リリースしなくても届く。それもロフト56度のバンス10度のモデル(Mid)でないとダメ。他のモデルだとフェースが開いてしまいます。これはぜひアプローチイップスの人に試してもらいたいですね」

横田自身は60度のウェッジから56度のウェッジに替えたことで、アプローチイップスを克服している。なぜ56度がいいのか?

「60度のウェッジってボール位置を右足寄りに置くことによって、リリースしなくても当たるようになっているんです。でもそれだと付け焼き刃的で、根本的な治療にはなりません。症状はどんどん悪化していく。リリースしなくても良いわけですから。

アプローチイップスの人間にとって一番怖いのは、リリースしてすくい打ちになること。その瞬間に、トップしたりダフったりする嫌なイメージがよぎるからです。でも56度を使うと、リリースしないと球が上がっていかない。だからすくい打ちっぽくなっていく。それが逆に良かったんです。左打ちじゃないけど、ゴルフって『逆もまた真なり』なんですよ」

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