■夫に不満を感じる私がワガママ?
大人同士の夫婦は、対等であるべき。女性たちの多くはそう感じているのだが、夫たちになかなかその真意は伝わらないようだ。むしろ、それは「女性のワガママ」と受け取られてしまうことも多い。

■家族で過ごす時間が長くなって
夫が週に2度の出社、あとは在宅勤務となり、家族で過ごす時間が増えたというカホリさん(45歳)。結婚して14年、中学生と小学生の子どもたちがいる。結婚したとき、カホリさんは勤務先で将来を期待される社員のひとりだった。

「夫とは社内結婚です。当時、私はある企画のチームリーダーを任され、それがうまくいってすごく仕事が楽しかった。仕事は絶対に辞めないという条件で結婚したんですが」

ところが出産を機に状況が変わった。生まれた最初の子は非常に体が弱く、何度も手術を余儀なくされたのだ。

「それでも私は仕事と両立させようと思っていました。夫のサポートがあればどうにかやっていけるはずだし。でも夫は協力してくれなかった。育児休暇をとってほしいと言ってもとってくれなかったし、週末も『飲み会の約束がある』と出て行ってしまう。子どもが1歳になるころ、私も倒れてしまって……。夫は『限界だろ。仕事を辞めてほしい』と。私は夫が辞める選択肢もあると言ったんです。すると『男が仕事を辞められるわけがないだろ』って」

子どもを犠牲にはしたくなかった。だからカホリさんは仕事を辞めた。上の子は幸い、その後、ぐんぐん健康を取り戻し、第二子も産まれた。

「下の子は幸い、とっても丈夫で。だから下の子が小学校に上がったときから少しずつ仕事を始めました。近所でのパートですけどね」

今、夫が在宅で仕事をしているのを見ると、自分があのまま会社にいたらどうなっていただろうと思うこともある。

「夫には悪いけど、絶対、私のほうが出世していたし収入も多かったと思います。仕事に対するモチベーションが違う。在宅での夫の仕事ぶりを見ると、イライラすることもあります。仕事を辞めて10年以上たつけど、今も私はきちんとキャリアを積みたかったと思うし、今だって夫より仕事ができるんじゃないかと思っています」

もちろん、夫にはそれは言えないままだった。

■ふと口を滑らせて
在宅で仕事をしている夫は、子どもたちとも話す時間が増えたと喜んでいる。不機嫌になられるよりずっと気が楽だが、それでもカホリさんは、こんなふうに家庭を維持できたのは自分がさまざまな犠牲を払ったからだという思いにとらわれてしまう。

「上の子が丈夫だったら、私は仕事を続けていて、ひょっとしたらシッターさんや家政婦さんを頼みながら家庭を維持していたかもしれない。どちらが幸せだったかわからないけど、私がどれだけひとりでがんばってきたか、夫にわかってほしいんですよ」

いつもそう思ってきた。だからこそ、つい先日、夫がふと『たまには在宅勤務も悪くないな』と言ったとき、つぶやいてしまったのだ。

「私だって仕事をしていたかった。あのまま働いていたかった」

夫は彼女の顔をじっと見て言った。

「『後悔しているのか』って。子どもたちが元気に育ったことはよかったけど、私自身の人生としてはどうかな、これでよかったとは言えないなと答えたんです。そうしたら夫は、おまえはワガママだ、オレに対する感謝はないのかって。感謝を強要するのはどうかなと思いましたね。お互いさまなんだから」

言い合いをして険悪な雰囲気になったので、翌朝、彼女は夫に謝った。自分が謝る必要がなくても、険悪さを我慢しきれなかったのだ。子どもたちにも悪影響がある。

「結局、そうやって私がいつも折れるような関係なんですよね。そのことがつらくて、あとでひとりで泣きました」

妻が妥協し、妻が折れて、いわゆる「夫を立てる」ことで成立する夫婦関係。そろそろこういう関係を変えていきたい。カホリさんは真剣にそう考えているそうだ。

亀山 早苗(恋愛ガイド)