■自粛していない人に、ついイライラしてしまう……
緊急事態宣言で日本中が自粛を強いられている現在、中には「自粛」という言葉を忘れているような人もいる。そして彼らの行動にイライラしている人もいるようだ。

■近所の公園で「密」に
7歳と4歳の男の子をもつリナさん(40歳)が、子どもたちを外に出すのは1日に1度、1時間程度。かわいそうだと思いながらも、誰もいない時間を見計らって近所の公園で遊具を使わずに遊ばせるくらいだ。

「上の子は4月から小学生なんですが、結局、1度もちゃんと学校に行ってないんです。近所に保育園が一緒だった子たちがいますが、子どもは集まるとどうしても“密”になる。とはいえ、あまり気にしない家もあるようで、けっこう子どもたちはその公園で集まってるんですよね。だけど私はどうしてもそれが許せなくて」

子どもたちが集まり、そのママたちも井戸端会議。そんな光景は今も見られるという。リナさんの夫は在宅でできない仕事のため、以前と変わらず出社している。リナさん本人は在宅勤務で2週間に1度、出社すればいいことになっている。すべてが変わったのに、夫だけは変わっていない。そのことにもときどきイラッとするそうだ。

「夫が帰宅すると、どうしても私は『今日はあの家とあの家の子が公園で遊んでいた』『○○さんと××さんは一緒にバーベキューしたんだって』という話をしてしまうんです。自粛ができていないのは無責任だと思うから。何も変わっていない夫に、こっちは日常生活がこんなに変わったことを知ってもらいたいという意図もあります。私だけが子どもふたり抱えて家で仕事をしなければならないのもなんだか腹立たしくて」

夫はいつも、「しょうがないだろ」「世の中、いろいろな人がいるよ」とあたりさわりのない返事をするだけ。それがリナさんのイライラに拍車をかける。

■周りの行動をただしたい
リナさんはもともと正義感の強いタイプだと自認している。だが、決して周りの空気を読まずに正義感だけをふりかざすわけではないと本人は思っているそうだ。

「でも今回は、ことがことだけに黙っているわけにいかなくて。あるとき、私ひとりで公園を通ったとき、しゃべっているママ友3人に、『もっと離れたほうがいいんじゃない?』と言ったんですよ。だいたい、子どもたちだって密になりすぎよって。そうしたら彼女たちにすごくしらーっとした目で見られ、あげく『子どもたちだってストレスたまってるのよ、かわいそうでしょ』と言い返されました」

自粛って言われているのだから自粛しなかったら、逆にいつまでたってもこのままよとリナさんはつい説教口調になってしまったそう。すると中のひとりが、「うち、この前、家族でドライブに出かけたの。楽しかったわ。家にいるばかりがいいわけじゃないわよね」と聞こえよがしに言った。それにリナさんがキレてしまった。

「母親のくせに自粛すら子どもに教えられないなんて、どういう教育してるのって責めるように言ったんですよ。本当に頭に来ちゃって。それ以来、近所の子どもたちからは『自粛おばさん』なんて言われているみたい」

近所の人たちもリナさんの顔を見ると、さりげなく顔を背ける。それがどうやら夫の耳にも入ったようだ。

「先日、夫が『あんまり肩身を狭くするようなことはするな』って。別に私は誰に何を言われようとかまわない。私のほうが正しいと思うと言ったら、正しければいいというものではないと言われました。いや、正しいことは重要でしょと夫と大げんかになってしまって。夫は日常的に家にいるわけではないので、細かいことがわかってないんですよね」

ところがある日曜日、夫が子どもを連れて近くを散歩していると、顔見知りの近所の人たち何人もに「奥さん、大変ね」と言われたそうだ。夫は帰ってきてリナさんに怒りをぶつけた。この状況ではかえって子どもたちもかわいそうだ、と。

「リナのせいで、一家全員がヘンな人だと思われてるって。今やるべきことは家にいることでしょ。それをきちんとしましょうと言っている私がヘンで、密になってもしゃべっている近所のママたちやドライブに行く家族が正しいわけ? そんなこんなでうちは大げんかになりました」

夫とはそれきりあまり口をきかなくなり、家には妙な空気が流れている。夫も本来、きちんと自粛しようというタイプなのに、どうして周りにヘンな気の使い方をしているのか、リナさんは疑問に感じている。

自粛せずに出かける人たちについて、我慢して家にこもっている人たちは確かにおもしろくないと感じているだろう。だからといって必要以上に責められている現状もどうなのか。新型コロナウイルスの悪しき影響は、近所づきあいにも、そこから派生して夫婦関係にも及んでいる。早く終息しなければ、さまざまな人間関係にひずみが出てきそうだ。

亀山 早苗(恋愛ガイド)