■プールでウイルス感染は稀? 塩素濃度など衛生管理されているプール
多くの人が潜ったり、口や鼻をつけたりするプールは、いわゆる「プール熱」を始め、ウイルス感染リスクが高い場所だと思われるかもしれません。プール熱(咽頭結膜熱)や流行性結膜炎はアデノウイルスに感染することで起こりますが、実はしっかりと衛生管理されているプールの水を介して感染することは通常ありません。感染リスクがあるのは水の消毒が不十分なプールの使用によるものです。

水を介してウイルス感染することがないのは、プール水には定められた量の塩素が含まれているからです。塩素濃度は文部科学省での水泳プールに係る学校環境衛生基準で、「プール水の遊離残留塩素濃度0.4mg/L以上であること。 また、1.0 mg/L以下であることが望ましい」と決められています。

水道水の場合は、水道法で「蛇口での残留塩素濃度を0.1mg/L以上保持すること」とされていますので、比較してもかなりしっかりした濃度で衛生的に管理されているといえるでしょう。プールの水は屋外の空気と同じく、ウイルスがあっても希釈、不活化されると考えられるため、プールの水から感染する危険性は少なく、比較的安全であるといえます。

■プール内の水は安全だが、飛沫感染リスクは他の場所と同様
日本スイミングクラブ協会より出されている『スイミングクラブにおける新型コロナウイルス感染拡大予防のためのガイドライン』(2020年5月18日)では、「プールの水は新型コロナウイルスに対しては安全であるが、人間そのものを消毒することはできない」とされています。

プール内も他の場所と同じく、無症状の感染者からの感染リスクを減らすことが重要です。プール施設内や送迎バス内ではマスク着用が推奨されています。

指導員、スタッフについては、健康管理はもちろん、指導前後のうがいや、プール内で飛沫を防ぐための耐水透明マスクの使用が推奨されています。無症状者もいることを考えると、指導員が絶対に新型コロナウイルスに感染していないことを証明することは難しいため、終息するまではやむをえない対応法かもしれません。

スイミング中のマスク着用は難しいので、水泳をする人はマスクはつけません。通常通り体調管理に注意し、体調が少しでも悪いときは無理をせずに休みましょう。

■送迎バスや更衣室、観覧席などプール外での感染に注意を
スイミングを行う場合は、プール内にいるとき以上に、「プールの外」での行動を注意すべきでしょう。人との距離が近くなったり、マスクを外したり、会話をしたりすることで、感染リスクが生じますので、特に空間が狭く密室になりやすい送迎バスや更衣室、トイレ、観覧席などは、注意が必要です。

そうした場所は換気をして、会話を避け、できるだけお互いにマスクをすることが大切です。飛沫が拡散しやすいドライヤーの使用も控えたほうが良いでしょう。

もちろんプールの施設は消毒されていることが前提ですが、手すりなどをあまり触らないようにし、触った場合は顔などを触らないように気を付けることは、他の場所と同様です。

■安心してプールを楽しむために
何よりも普段からの体調管理が重要です。体調が少しでも悪いときは、自分のためにも感染拡大させないためにも、プールは控えましょう。風邪症状や37.5℃以上の発熱がある場合はもちろん、新型コロナウイルスの症状といわれている味覚障害、嗅覚障害がある場合や、咳、痰のある人は、今年の夏は特に注意すべきでしょう。

また、循環器疾患、糖尿病などの基礎疾患のある人、透析を受けている人、免疫抑制剤や抗がん薬を使用している人、家族に新型コロナウイルス感染症が疑われる人がいる場合は、プール施設への来館自体が制限される可能性もあります。

プールに入っているときは感染リスクは少ないですが、プールの外の館内施設では注意が必要です。一般的な感染予防法としてのマスク、手洗い、消毒などの手指衛生で、より安心してプールを楽しむことができると思います。

安心・安全を重視すると、どうしても手間がかかることは増えてしまいます。今後、新型コロナウイルス感染症の状況によっては、制限を減らしても大丈夫になるかもしれませんが、現時点では個々人もできるだけ注意して楽しむのがよいでしょう。

▼清益 功浩プロフィール小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院にて小児科診療に従事。論文発表・学会報告多数。診察室に留まらず多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。

清益 功浩(医師)