ボルタンスキー回顧展 死生観から生まれる独創的な作品の数々

ボルタンスキー回顧展 死生観から生まれる独創的な作品の数々

フランスを代表する現代アーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーの50年にわたる創作活動を紹介する国内最大規模の回顧展が始まった。

人の痕跡を日用品から。ボルタンスキーの大規模回顧展。

ボルタンスキーは日本とも縁が深く、近年では「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や「瀬戸内国際芸術祭」にも参加。また2008年からベネッセアートサイト直島にて展開されている≪心臓音のアーカイブ≫は、人間が生きた証として人の心臓音を採録するという斬新なプロジェクトだ。他にも、越後妻有の廃校を使ったインスタレーションや、ドキュメント映像など、様々な作品を日本で発表してきた。

作品の根底にあるのは、どれも人間の存在を訴える悲痛な叫びだ。原点は彼の生い立ちにある。1944年、ナチスの占領時代が終わった直後のパリで生まれたボルタンスキー。ユダヤ人である彼の父親は、迫害を逃れるため母親と偽装離婚し、家の床下に隠れ住まなければならなかった。終戦後、周囲から聞かされた強制収容所の話など、幼少時の経験が彼の生涯のトラウマとなる。

例えば‘87年に発表された≪保存室(プーリム祭)≫。電球と子供たちの白黒写真を祭壇風に設えたこの作品は、使用されたブリキ缶が骨壺を暗示していて、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を語る代表作となる。その後、ボルタンスキーはユダヤ人にとどまらず普遍的な死の表現に目を向け、あらゆる立場の人々を想った作品を制作。表現手段も多様化し、古着など様々なメディアを使い、人間の存在と不在を示す作品を追求してゆく。‘90年代中盤からは、劇場や廃病院といった空間でのインスタレーションにも着手。最近では作品に神聖さを志向し、人里離れた砂漠や海岸など、簡単には辿り着けない場所に作品を設置していた。

そんなボルタンスキーの作品を、東京で体感できる絶好のチャンスが本展。今回は初期作品から最新作まで約46点(予定)もの作品を紹介する。“空間アーティスト”を自認する彼だけに、展示は会場に合わせて作品を組み合わせ、ひとつの大きなインスタレーションとして構成されている点も見どころ。彼の死生観から生まれる独創的な作品は、きっと私たちの琴線に触れるはずだ。

≪保存室(カナダ)≫1988 / 衣類 / 作家蔵
© Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, © Ydessa Hendeles Art Foundation, Toronto, Photo by Robert Keziere

クリスチャン・ボルタンスキー 1944年パリ生まれ。‘60年代後半から作品を発表し始め、‘70年代からヴェネチアビエンナーレなどの国際展に招待されるなど国際的なアーティストに。2006年、高松宮殿下記念世界文化賞受賞。クリスチャン・ボルタンスキー © Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, Photo by Didier Plowy

クリスチャン・ボルタンスキー −Lifetime 国立新美術館 企画展示室2E 東京都港区六本木7−22−2 開催中〜9月2日(月)10時〜18時(金・土曜に関しては6月は20時まで、7・8月は21時まで。入場は閉館の30分前まで) 火曜休館 一般1600円ほか。 TEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)

※『anan』2019年6月26日号より。文・山田貴美子

(by anan編集部)


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