意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「がんゲノム医療」です。

莫大ながん組織のゲノムを解析。今後の治療に期待。

「ゲノム」とはDNAをはじめとする、遺伝子情報の全体のことを指します。遺伝子情報を個別に検証し、その特徴を明らかにすることで、体質や病状に合わせた、より効果的、効率的な治療や診断を行うのが「ゲノム医療」です。がんは、遺伝子の変異や異常が蓄積することによって起こる病気。日本で最も多い死亡原因であり、日本人の2人に1人は生涯のうちにがんにかかるといわれています。国際的な共同研究グループ「国際がんゲノムコンソーシアム」の調べによると、がん患者の数は世界的に増え続けており、2012年には800万人の方ががんで亡くなり、1400万人が新たにがん患者として診断を受けていました。このままいくと2050年には年間で1750万人ががんで死亡し、2700万人が新しい患者となると推定されており、がんに対する対策は急務なのです。

日本からは国立がん研究センターや理化学研究所、東京大学などが参加している国際がんゲノムコンソーシアム。このたび37か国1300人を超えるがん研究者が協力し、38種類約2800例のがん組織のゲノム解析に成功しました。スーパーコンピューターを使い、4600万個以上のゲノムの変異や異常を調べ、特徴を明らかにしたのです。解析されたデータは公開され、世界中のがん研究者が活用できるようになります。日本では全国に、がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院を指定し、全国どこでもがんゲノム医療を受けられる体制づくりを進めています。

一般にがん治療では、標準治療という科学的根拠に基づいて推奨される治療がなされます。具体的には手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療です。がん遺伝子検査によって、その人の特徴的な異常を調べることで、治療法の選択に役立つ場合があります。たとえば、抗がん剤の投与の検討や、標準治療のないがん、標準治療が終わった患者さんに対して、合う薬物療法を調べるために有効とされています。

症例の少ない希少がんに関しては、まだデータが不足していますが、がんゲノム医療の発展は、将来のがん治療に期待が持てそうです。

ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)公開中。

※『anan』2020年5月13日号より。写真・中島慶子 題字&イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)