新しい愛の形を選んだ人々が暮らすシェアハウスの光景とは。

「3年ほど前、ポリアモリーのニュースをちょこちょこ目にして、新書を読んでみたんです。もともとそういう性質の人だけでなく、あえて試みる人や、好きになった人がポリアモリストだったという人もいて。恋愛の仕方を自分で選ぶということに興味を持ちました。嫉妬心などの感情をコントロールする愛ってなんだろう、という気持ちもありました」

その家に住むのは男性2人、女性2人で、年齢もポリアモリストになる経緯や姿勢もバラバラ。彼らの恋愛相関図は複雑だ。当事者以外が家にいる時は性行為をしない、といったルールを設け、仲良く暮らしているこの4人。

「ポリアモリストたちは、お互いに言葉を尽くして折り合いをつけている。知的で理性を働かせられる人たちが営んでいる印象もありました。シェアハウスにすれば、そういう部分が書きやすいと思ったんです」

絶妙な均衡を保つ様子に、改めて恋愛感情とは何かを考えさせられる。

「嫉妬や独占欲というのは愛を構成する要素なのだろうかという疑問もありますよね。たとえば子供が2人いたら、1人ずつを100%愛することのできる親もいる。愛がいくつも同時に抱えられるものだと考えると、安易にポリアモリーを否定できないし、むしろしっくりくる部分もあります」

途中で、この家に感情を持つAIロボットがやってくる。これも奥田さんが書きたかったことだ。

「感情と懸命に向き合っている人たちと、作られた感情を持つAIの組み合わせが私の中でしっくりきました。AIは人間に不都合な感情を持つようには設定されていない。それはフェアではないですよね。でも人の感情と向き合う時、フェアであることは大事ではないかと思います」

4人の関係がどんな結末を迎えるかは、考えながら書き進めていった。

「私にとって大きな挑戦でした」と言うが、それでもあえてこの難しいテーマに取り組んだのは、

「窮屈さに対する反発があるんです。世間でおかしいと言われているものも、そうじゃないんじゃないかということをずっと考えています」

おくだ・あきこ 1983年生まれ。2013年「左目に映る星」ですばる文学賞を受賞しデビュー。著作に『ファミリー・レス』『五つ星をつけてよ』『青春のジョーカー』『魔法がとけたあとも』など。写真提供・中央公論新社

『愛の色いろ』 ポリアモリストの性質を持つ黎子、離婚してこの恋愛を選んだ良成、ポリアモリストを好きになった千瀬らが住むシェアハウスの日常は。中央公論新社 1600円

※『anan』2020年5月13日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)