自然からのいただきものであるハーブの力を取り入れて、心と体に優しく寄り添う「レメディ」のようなお菓子を作る〈foodremedies〉として活動する菓子研究家の長田佳子さん。砂糖にはない甘さやほのかに感じる苦味、鼻をくすぐるいい香り——。ハーブはそのときの心と体の状態によって、五感で感じ取るものが繊細に変化する奥深さを秘めた暮らしに役立つ植物です。そんな季節のハーブを使った長田さんオリジナルのお菓子のレシピを紹介するこの連載。第10回は「ライ麦のパン・デピス」をお届けします。

This Month's Herbal Sweets

「ライ麦のパン・デピス」

蜂蜜の濃厚な味とスパイスが香る、腹持ちのいい焼き菓子。

ちょっと小腹がすいたときや、ディナーにパンが欲しいときに、ぜひ作ってみてほしいのが「パン・デピス」。直訳すると、フランス語で「スパイスのパン」という意味の焼き菓子だ。その誕生の歴史は古く、意外にも10世紀頃の中国で兵士のための保存食として重宝していた、という逸話もある。生地作りは砂糖の代わりに、ビタミンやミネラルを含んだ蜂蜜を使うのがいちばんの特徴で、数種類のスパイス、牛乳を混ぜて作るのが一般的なレシピだ。そうした伝統を重んじつつ、より軽やかな仕上がりになるように、生地のベースはライ麦をチョイス。色に深みを出すために、コーヒーを少々。風味づけに、すりおろしたジンジャーやシナモンのような風味がするニッケイのハーブを加えてみましょう。仕込みは10分あれば完了。オーブンで焼いている40分間、仕事や家事に取り組んでいるうちに、香り豊かでモダンな「パン・デピス」が出来上がり。表面の皮の軽やかな焼き上がりと、蜂蜜とスパイスが染み込んだ濃厚な生地はクセになる味わい。ティータイムなら、紅茶やチャイをお供に。夜ならチーズと一緒にいただき、赤ワインやオレンジワインを楽しんだら、いい時間を過ごせそう。

左/ジンジャー 

古くからスパイスや薬草として使われている植物。主に根茎の部分がハーブ、アロマ、食用に用いられています。体を温める作用や血液の循環を良くする作用があり、筋肉痛や筋肉疲労が気になる人にもおすすめ。冷え性の人や風邪のひきはじめや免疫力が落ちているときに効果的です。

中央・右/ニッケイ

クスノキ科の常緑樹。日本名は肉桂。濃厚な甘い香りとマイルドな風味が特徴の植物。古人は、根っこをカリカリとかじり、その甘い風味を楽しんでいた、と言い伝えられています。また、ニッキ飴の原料にも使われています。体を温める作用もあり、新陳代謝のアップも期待できます。

レシピ 型5×11.5×5㎝分

・ライ麦80g
・重曹ひとつまみ
・塩ひとつまみ
・ジンジャー10g ※ジンジャーパウダーでも可。その場合は1gを目安に。
・蜂蜜90g
・牛乳70g
・インスタントコーヒーひとつまみ
・ニッケイの葉と根適量 ※シナモンパウダーでも可。その場合は1gを目安に。

How to cook

1. ボウルにライ麦、重曹、塩を入れ、ジンジャーをすりおろす。
2. 別のボウルに蜂蜜と牛乳を入れて湯せんをする。インスタントコーヒーを加えてホイッパーで混ぜながら溶かす。
3.1に2を加え、ホイッパーで素早くよく混ぜる。
4. クッキングシートを敷いた型に生地を流し入れ、ニッケイの根と葉を入れて150℃のオーブンで40分を目安に焼く。

photo: Hiroko Matsubara edit & text : Seika Yajima
ハーブ:まるふく農園 キッチンクロス提供:FLUFFY AND TENDERLY
ペーパーバッグ:For Ocaille /Inoue Yoko

<プロフィール>

菓子監修 長田佳子〈foodremedies〉
菓子研究家。レストラン、パティスリーなどでの修業を経て、YAECAフード部門「PLAIN BAKERY」でメニュー開発、お菓子の製造を担う。2015年に独立。〈foodremedies〉という屋号でハーブやスパイスなどを使ったまるでアロマが広がるような、体に素直に響くお菓子を研究している。著書に『foodremediesのお菓子』(地球丸)、『全粒粉が香る軽やかなお菓子』(文化出版局)などがある。

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