子どもたちともう一度「ONE TEAM」に―「ラグビー選手から午前9時のメッセージ」第12回

 新型コロナウイルスの感染拡大により、昨秋のワールドカップ(W杯)で空前のブームが巻き起こったラグビー界も大きな影響を受けた。1月に開幕したトップリーグがシーズン途中で中止。1試合の観客最多動員を記録する試合も生まれるなど、W杯から続いていた盛り上がりが予期せぬ形で途絶えてしまった。

 もっとプレーを見せたかった選手、プレーを見たかった子どもたち。距離が遠くなってしまったいま、「THE ANSWER」はラグビー界がもう一度、子どもたちと一つになれることを願って、「#キミとONE TEAM」と題した連載をお届けしている。

 元日本代表主将の菊谷崇さんと廣瀬俊朗さんが発起人となり、多くの現役、OB、指導者らが賛同。いま抱えている思いとともに、全国の子どもたちに向けたメッセージを送る。また、記事は連日午前9時に配信。「#きょうのトライ」として、学校が休校となっている子どもたちにきょう1日を使い、やってほしいことを提案する。

 第12回は、昨年のラグビーW杯に日本代表として出場し、ガッツあふれるプレーで史上初のベスト8入りに大貢献したトヨタ自動車ヴェルブリッツの姫野和樹さんだ。得意とするプレー「ジャッカル」は昨年の流行語大賞候補にもなったほど。そんな姫野さんが子どもたちにメッセージを届ける。

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 W杯で生まれた盛り上がりを、今年はトップリーグでも持続することができました。素直にW杯での日本代表の活躍が認められ、ラグビーに関心を持つ人たちが多くなったんじゃないかと思います。そして、ラグビーに携わるいろいろな方々が、さらに盛り上がるように宣伝もしてくれて、本当にラグビー界全体で「ONE TEAM」になれた結果が、ラグビー人気を継続できた理由だと思います。

 その中でも、ラグビー選手になることが夢だと言ってくれる子どもたちもたくさん増えて、本当にうれしい限りです。おかげさまで、僕も本当にどこに行っても声を掛けてもらえるようになりました。SNSでおうちトレーニングのための腕立て動画を発信したら、たくさんの方にチャレンジしていただいて、家で運動するきっかけにしてもらえたのはうれしいですね。

 トップリーグが中止になってしまったことは、ただただ残念です。でも、いま新型コロナウイルスで大変な状況を考えると、ファンの皆さんはもちろん、選手や関係者の安全が第一。中止という決断は致し方ないものだったと思います。いまはしっかりステイホームして、自分が感染しないように、他の人にうつさないように、感染防止のためにできることを考えてやっていきましょう。

「人として大切なものを教えてもらえるのがラグビー」

 僕はいま、家で映画を見たり、本を読んだり、勉強したり、トレーニングしたりしながら、毎日を過ごしています。最近読み始めたのは「エンデュアランス号漂流記」という南極大陸横断に挑戦したアーネスト・シャクルトンという探検家の物語です。探検隊の隊長だった彼が、どんなリーダーシップを取っていたのか。読み始めたばかりですが、面白いです。

 外に出られずに悲しい思いをしている子どもたちもいると思います。まずは自分の身を守ることを心掛けてください。家の中で過ごす時間で、何か興味があるものを見つけたり、自分の得意な部分を伸ばしてみたり、たくさんある時間を有意義に過ごすことを意識してみるといいかもしれません。いまの時間をネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに捉えて、いろいろなことにチャレンジしてみてください。

 子どもの頃の僕は、活発でやんちゃで、よく外に遊びにいっていました。家の中ではなく、いつも仲間を引き連れて、外で野球をしたりサッカーをしたり。そんな感じだったので、家にいるように言われたら、つらかったと思います。いまでも、早くラグビーがしたいなと思っています。でも、ラグビーが好きだという気持ちがあれば、苦しいことは乗り越えられます。

 僕はラグビーが持つ文化がすごく好きです。相手をリスペクトすることもそうですし、仲間のために体を張るとか、人を思いやる気持ちとか、そういったことがW杯でも人の心を動かしたと思っています。人として大切なものを教えてもらえるのがラグビー。こういう魅力をたくさんの人に感じてもらいたいし、伝えていけたらと思っています。

 W杯で日本代表はベスト8に入り、あれだけ盛り上がって大成功したと思います。でも、ラグビーというスポーツが日本に根付いたかというとまだまだ足りない部分はある。これからラグビーをもっと日本に浸透させるために頑張らないといけないですし、次のW杯ではベスト8より上を目指さないといけないと思っています。これからの日本代表を背負っていく中で、そういう責任感や使命感もあります。また、外でラグビーができるようになったら、子どもたちも含め、これからの若い世代にいいバトンを渡せるようにやっていきたいと思っています。

【#きょうのトライ「『ありがとう』を一日に2回言ってみよう」】

 こういう時だからこそ、感謝の気持ちを持って過ごしてもらいたいと思います。なので「ありがとう」を一日に2回言ってみましょう。僕はいま、医療従事者の皆さん、運送業の皆さんなど、たくさんの方々が僕たちの生活を支えてくれていると実感しています。そういった方々に感謝の気持ちを伝えたいですね。

■姫野 和樹(ひめの・かずき)

 1994年7月27日生まれ、愛知県出身。春日丘高から帝京大に進学。2017年にトヨタ自動車ヴェルブリッツに入団し、1年目からキャプテンという大役を任された。同年11月のオーストラリア戦で日本代表初キャップを獲得。187センチ、112キロという体格を生かした闘志溢れるプレーで存在感を示し、2019年に開催されたW杯では得意とするプレー「ジャッカル」で相手ボールを奪い、ベスト8入りに大貢献した。ポジションはナンバーエイト。日本代表キャップ数は17。

(次回は元日本代表の大西将太郎さんが登場)(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)