子どもたちともう一度「ONE TEAM」に―「ラグビー選手から午前9時のメッセージ」第16回

 新型コロナウイルスの感染拡大により、昨秋のワールドカップ(W杯)で空前のブームが巻き起こったラグビー界も大きな影響を受けた。1月に開幕したトップリーグがシーズン途中で中止。1試合の観客最多動員を記録する試合も生まれるなど、W杯から続いていた盛り上がりが予期せぬ形で途絶えてしまった。

 もっとプレーを見せたかった選手、プレーを見たかった子どもたち。距離が遠くなってしまったいま、「THE ANSWER」はラグビー界がもう一度、子どもたちと一つになれることを願って、「#キミとONE TEAM」と題した連載をお届けしている。

 元日本代表主将の菊谷崇さんと廣瀬俊朗さんが発起人となり、多くの現役、OB、指導者らが賛同。いま抱えている思いとともに、全国の子どもたちに向けたメッセージを送る。また、記事は連日午前9時に配信。「#きょうのトライ」として、学校が休校となっている子どもたちにきょう1日を使い、やってほしいことを提案する。

 第16回は、三菱重工相模原ダイナボアーズでプロップを務める成昂徳(そん・あんど)さんだ。帝京大から近鉄ライナーズに入団し、2012年、13年にはトップリーグオールスターに選ばれた。2014年からダイナボアーズでプレーする。

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 新型コロナウイルスの影響でトップリーグが中止してしまったことは本当に残念ですが、今年は本当に盛り上がりました。日本で開催されたW杯の影響はすごく大きかったですね。日本代表選手をはじめ、いろいろな方のサポートがあったおかげで、トップリーグも開幕戦からどの試合会場もたくさんのお客さんで埋まりました。僕らもプレーしていて、すごく楽しくて興奮しました。感謝しています。これこそ、日本代表が掲げている「ONE TEAM」だと思います。

 また、たくさんの子どもたちがラグビーに興味を持ってくれました。小学校で将来の夢として「ラグビー選手」と書く子がいるという話を聞くとうれしいですし、僕らももっともっと頑張らないといけないという責任が出てくる。子どもたちの夢を持続させるためにも、もっともっと盛り上げていきたいと思います。

 僕が所属するダイナボアーズは、今年からトップリーグに昇格し、第5節でチーム史上初めてトップリーグで勝ちました。チームは12年前にもトップリーグに昇格しましたが、1勝もできずに次の年に降格していたんです。僕がチームに加わったのは、その後のこと。当時を知る選手やスタッフの想いを聞いて、ファンをはじめサポートしてくれる方々のためにも頑張りたいと思いました。そして今年、昇格して初勝利。すごくうれしかったのですが、すごく楽しみなチームなので、これに満足しないで2勝目、3勝目と目指していきたいと思います。

 そんな中、新型コロナウイルスの影響でトップリーグは中止になってしまいました。非常に残念なことですが、こういう状況になったのは誰が悪いわけでもない。たしかに厳しい状況かもしれません。でも、いまの時間を無駄にせず、みんながやるべきことをしっかりやっていくことが大事。たとえば、ラグビーであれば室内でできる練習もあるし、いろいろな選手がSNSを使ってトレーニング方法を発信しています。そういったものを参考に、家の中での時間を無駄にしないようにしていけば、またラグビーができる時になったら思いきりラグビーができるんじゃないかと思います。

 僕はいま、自宅でできるトレーニングをしたり、娘と一緒に近所を散歩したり。人との距離を保ちながら公園でストレッチをすることもあります。本当に基本的なことしかできませんが、体を動かさないとストレスがたまってしまいますからね。

「親への感謝の気持ちを忘れず、スポーツができることを当たり前だと思わずに」

 家にいる時間が増えて、いつも家のことをケアしてくれている奥さんの大変さを感じ、あらためて感謝の気持ちを持っています。子どもたちもまず、ラグビー以外の家のお手伝いなど簡単なことから毎日取り組んでみてください。そして、親への感謝の気持ちを忘れず、スポーツができることを当たり前だと思わずにいてほしいですね。いまは我慢強く辛抱して、外で遊べる日が来たら、いままでのストレスを一気に発散してほしいなと思います。

 僕は感謝することはすごく大事だと思っていますし、感謝という言葉と大切にしています。それを教えてくれたのは高校時代の恩師、金信男(きむ・しんなむ)先生でした。ラグビー選手にとって怪我をした時は本当につらいものです。ラグビーをしたい気持ちが強すぎてしまったり、チームから離れて個人で治療をしなければいけなかったり。こういう時にあらためてチームスポーツの魅力を感じますし、サポートしてくれた親、家族、チーム、ファンの方々には感謝の気持ちでいっぱいになります。ラグビーができない状況になったいまも、あらためてラグビーができることに感謝しています。

 子どもの頃はサッカーと空手をやっていました。ラグビーを始めたのは高校から。花園ラグビー場で試合を見たのがきっかけです。コンタクトスポーツに魅力を感じていて、トライではなく、選手同士がバチバチ当たる姿に一気に感動してしまい、すぐに入部しました。僕はプロップというポジションで、最前列でスクラムを組んでいます。よく「縁の下の力持ち」と言われますが、もっと日の目を見るポジションにしたいと常に考えていますが、難しいですね(笑)。でも、またラグビーができるようになったら、必ず花を咲かせたいと思います。

【#きょうのトライ「家族に『ありがとう』と言ってみよう」】

 しっかり挨拶をすることは大切ですよね。それと同じように「ありがとう」と感謝の気持ちを素直に伝えられることも大切です。多分、子どもたちは自分の親や知り合いに対して、恥ずかしがって「ありがとう」と言えないことが多いんじゃないかと思います。なので、今日は家族に「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えてみてください。

■成 昂徳(そん・あんど)

 1983年4月28日生まれ、兵庫県出身。大阪朝鮮高から帝京大へ進み、2006年に近鉄に入団。同年にU23日本代表候補に選ばれた。07年には近鉄のトップリーグ昇格に貢献し、09年と10年には関西代表、12年と13年にはトップリーグのオールスターに選出。14年に三菱重工相模原に移籍し、18年にはトップリーグ昇格に尽力した。ポジションはプロップ。

(次回は元日本代表の堀江恭佑さんが登場)(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)