子どもたちともう一度「ONE TEAM」に―「ラグビー選手から午前9時のメッセージ」第17回

 新型コロナウイルスの感染拡大により、昨秋のワールドカップ(W杯)で空前のブームが巻き起こったラグビー界も大きな影響を受けた。1月に開幕したトップリーグがシーズン途中で中止。1試合の観客最多動員を記録する試合も生まれるなど、W杯から続いていた盛り上がりが予期せぬ形で途絶えてしまった。

 もっとプレーを見せたかった選手、プレーを見たかった子どもたち。距離が遠くなってしまったいま、「THE ANSWER」はラグビー界がもう一度、子どもたちと一つになれることを願って、「#キミとONE TEAM」と題した連載をお届けしている。

 元日本代表主将の菊谷崇さんと廣瀬俊朗さんが発起人となり、多くの現役、OB、指導者らが賛同。いま抱えている思いとともに、全国の子どもたちに向けたメッセージを送る。また、記事は連日午前9時に配信。「#きょうのトライ」として、学校が休校となっている子どもたちにきょう1日を使い、やってほしいことを提案する。

 第17回は、日本代表キャップ数3のNO.8堀江恭佑さんだ。東京高、明大を経て13年にヤマハ発動機に入団すると、1年目からリーグ新人王に輝くなど活躍。7人制ラグビー代表経験もある男は、今シーズンから日野に移籍した。トップリーグで感じた熱狂を振り返るとともに、子どもたちへメッセージを届けた。

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 昨年のラグビーW杯から、ラグビー熱がかなり高まっているのを感じていました。僕は直接スタジアムに試合を見に行くことが何回かありましたし、パブリックビューイングなども開催していただいていたので、イベントなどにも参加させてもらったりしました。一般の方と一緒になって喜んでいましたね。

 W杯の中でも、開幕のロシア戦は特別だったと思います。僕はテレビで見させてもらったのですが、見ているこちらにもすごい緊張感が伝わってきました。普段はしないようなミスもありながら、しっかり勝ったのは本当にすごいと思いましたね。

 ベスト8を決めたスコットランド戦は、スタジアムで直接見ていました。いままで経験したことのないような雰囲気を体感させてもらいましたね……。勝った瞬間、会場は見たことのないような盛り上がりでしたから。

 W杯が終わって、次はトップリーグ。一番初めの開幕ゲームが僕たち日野とNTTコムの試合だったのですが、お客さんもたくさん来てくれるかなと期待していました。フィールドに出た瞬間、本当にたくさんのお客さんが目に入ってビックリしました。試合には勝てず、結果は出なかったのですが、あれだけのお客さんの中でプレーさせてもらえるのはすごく楽しめました。緊張ももちろんありましたけど、楽しめたという気持ちが大きいですね。

 試合以外でも、ラグビー熱を感じる機会は増えました。これまで、チームのグラウンドに子どもが来ることはあまりなかったのですが、W杯後にはお母さんと子どもが練習を見に来ていたりしていましたね。子どもたちが興味を持ってくれることには、ウェルカムなチームです。グラウンドで子どもと一緒にラグビーボールで遊んだりしましたよ。公園でボールを使って遊んでいる子も見かけるようになりましたし、周りから「ラグビー面白い!」という声をいっぱいいただけました。

この時期だからこそ新しいことを「英語もその一つ」

 トップリーグのレベルに関しては、僕がプレーを始めてから7年間で見てもレベルは上がっているなと感じますね。要因はいくつかあると思いますが、世界的な外国人プレーヤーがいっぱい来ていること、日本代表の強化、スーパーラグビーに参戦したこと。世界のスタンダードに慣れていっているという日本人選手がどんどん増えていて、国内リーグのレベルも全体的に上がっていっているんではないかなという感覚はあります。

 トップリーグは新型コロナウイルスの影響で中止になりました。ほかのスポーツでもそうですが「いまは健康が一番大事」としか言えないと思います。こういう時間って、誰も経験したことがないですよね。中止が決まってからは、時間をどういう風に使うかということで、できるだけすぐ切り替えられるよう、シーズンが始まったときにいいスタートができるよう、何ができるかを考えるようになりました。

 いまはウェート施設などに行けないので、僕は人の少ない早朝や夜に近くの大きな公園を走ったり、階段でトレーニングをしたり、YouTubeでよくあるタバタトレーニングのようなものをたくさんやっています。

 新しいことも始めました。4月から1日4時間くらい、英語の勉強をしています。家で過ごす時間が長くなる中で「何かラグビーに活かせることを勉強できないかな」と考えたら、どのチームにも外国人選手がいるので、コミュニケーションが取れる英語もその一つかなと思いました。英会話教室というわけではないのですが、テキストを用意してもらって、担当の方と連絡をオンラインで取りながら学んでいます。この機会じゃなきゃ、やらなかっただろうなと思いますね。

 いま、子どもたちは外で遊ぶということが自由にできない中にあると思います。自分が子どもだった時に置き換えると、むちゃくちゃ悲しいし、寂しいですね。僕も小学校、中学校と、近所の子どもたちで鬼ごっこ、サッカー、野球とか、その時によって流行っていた運動をしていました。

 そんな時期からすると考えられないような状態ですけど、逆に、いまはいろんなスポーツ選手の動画などが見られると思うので、自分の好きな動画を見たりしてほしいです。もし学ぶ気持ちがなくても、そういうのを見るだけで勉強になるし、感じることもたくさんあると思います。「意外と見てみたらおもしろいな」とか、「やってみたら楽しいな」と思えることが家の中にもあると思います。普段しないようなことをしてみて、楽しめるようなものを探してみてほしいですね。

 いまの子どもたちに伝えたいことは、「引きずらず、先のことを見てほしい」ということです。子どもなら、落ち込んだり、気持ちがしずんでしまったりすることはあると思うんですけど、その時にどれだけ引きずらないか、一度起きてしまったことに対して次はどうするか、考えることが大切だと思います。ラグビーだと、トライされたり点を取られたりしたとき、チームで集まって話をするのですが、その時は「なんで点を取られたのか」ということより、「次はどうしようか」ということを話すことが多いんです。

 これは、試合の中だと時間がないから「いま起きてしまったことを次にどうするか」を考える方が大切だからです。なかなか難しいとは思いますが、子どもたちにも辛いことがあったりして落ち込んだとき、「次はどうしようか」と考えることができたらいいと思います。僕もラグビーをやっていくうちに、自然とこういう考え方ができるようになりました。前向きにポジティブに、いろんなことを考えてみてほしいなと思います。

改めて考えるスポーツの価値「再開しても、近くで見てもらえるように」

 僕たちもいま、なかなかラグビーがしたくてもできない中にありますが、できるようになった時にはラグビーを楽しんでやりたいと思っています。ファンの皆さんにも見て楽しんでほしいですが、僕らも真剣に思い切り楽しんでいるようなプレーをしたいと思っています。

 試合にお客さんがあれだけ来てくれたら、改めて「ありがとう」と感じます。トップリーグでは、地方でも試合が予定されていましたが、中止になってしまいました。中にはラグビーを見られる数少ないチャンスがなくなってしまった方もいると思いますし、SNSなどを見ていると、楽しみにしてくれていた人がいっぱいいたんだなと改めて感じました。申し訳なさもあるし、感謝したいという思いですね。

 いまはスポーツの価値というか、そういうものを考えさせられると思っています。試合を実際に見て、楽しんでくれる人がたくさんいる。いまのこの状況で、スポーツはどういう価値を生み出せるかとかを考えたりしますね。最近だと、いろんな選手たちのトレーニング動画だったり、食事だったり、普段の生活だったりを、ファンの人たちと直接見てもらえる機会も増えました。それをきっかけにファンの人と触れ合えるようにもなっています。外でラグビーが再開しても、距離感は変わらず、近くで見てもらえるようにやっていくことが大切だと思います。

【#きょうのトライ「何か新しいことに挑戦してみよう」】

 こういう時期だからこそ、新しいことに挑戦してみましょう。例えば、普段からやっている子もいると思いますが、お母さんやお父さんのお手伝いをする。何か手伝えることはないか聞いてやるといいと思います。ほかには、ラグビーの選手やチームの動画を探して、トレーニングなどに挑戦してみてください。

■堀江 恭佑(ほりえ・きょうすけ)

 1990年7月11日、東京都出身。183センチ、103キロ。中学3年時に小平ラグビースクールで競技を始め、東京高では全国高校ラグビー選手権(花園)に2度出場。卒業後は明大へ進学し、13年にヤマハ発動機入団。1年目からリーグ新人賞とベストフィフティーンに輝くなど活躍し、17年からは主将を務めた。19年に日野に移籍。15年のW杯アジア地区最終予選(アジア5か国対抗戦)フィリピン戦で日本代表初キャップを獲得。日本代表キャップ数3のほか、7人制ラグビーの代表経験もある。ポジションはナンバーエイト。

(次回はサンウルブズ・木村貴大さんが登場)(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)