子どもたちともう一度「ONE TEAM」に―「ラグビー選手から午前9時のメッセージ」第18回

 新型コロナウイルスの感染拡大により、昨秋のワールドカップ(W杯)で空前のブームが巻き起こったラグビー界も大きな影響を受けた。1月に開幕したトップリーグがシーズン途中で中止。1試合の観客最多動員を記録する試合も生まれるなど、W杯から続いていた盛り上がりが予期せぬ形で途絶えてしまった。

 もっとプレーを見せたかった選手、プレーを見たかった子どもたち。距離が遠くなってしまったいま、「THE ANSWER」はラグビー界がもう一度、子どもたちと一つになれることを願って、「#キミとONE TEAM」と題した連載をお届けしている。

 元日本代表主将の菊谷崇さんと廣瀬俊朗さんが発起人となり、多くの現役、OB、指導者らが賛同。いま抱えている思いとともに、全国の子どもたちに向けたメッセージを送る。また、記事は連日午前9時に配信。「#きょうのトライ」として、学校が休校となっている子どもたちにきょう1日を使い、やってほしいことを提案する。

 第18回は、豊田自動織機シャトルズでプレーした後、今年からスーパーラグビーのヒト・コミュニケーションズ サンウルブズに所属する木村貴大さんだ。

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 僕は今シーズン、初めてサンウルブズの一員としてプレーをしました。オーストラリアなど海外でも試合をする中、日本での試合が一番ファンが多くて、熱狂的な人たちも多いと実感しました。本当にすごかったです。オーストラリアでの試合に比べて、何倍ものお客さんが見に来てくれていて、ここで試合ができるのは幸せだと思いました。

 新型コロナウイルスの影響の影響でシーズンは中止になってしまいましたが、これは自分の力ではどうにもできない範囲のこと。普段から、自分のできること、できないことをはっきり分けて考えているので、いまは何をすれば成長につながるのかを考えて、家でできることをやっています。

 具体的に何をしているかというと、家の近くにある山に毎朝登って、カモシカのようなバネのある脚を手に入れようと頑張っています。朝早くの山は人がいないので誰ともすれ違いません。山の上には神様がまつられているので、そこで感謝の気持ちを込めて拝んでいます。

 ラグビーができない日が来るなんて想像したこともありませんでした。だからこそ、ラグビーをしたい気持ちはとても強いです。グラウンドでボールを持って走れる日が来たら、この気持ちを爆発させたいですね。いまはそのためにグッと我慢して、燃料をたくわえる。そういう時期だと思っています。

 外で思いきり遊べずに「つまらないな」と思っている子どもたちも多いでしょう。でも、それは受け止め方次第。インターネットを使っていろいろ調べることもできますし、本から学ぶこともできます。だれかから言われるのではなく、自分で興味を引かれることや楽しいと思えることを探して、没頭してみてください。

 そして、家にいる時間が多くなったことで、日頃自分を支えてくれている家族や友達の大切さを感じているのではないかと思います。実は、僕自身がそう強く感じているんです。いまは実家で両親と過ごしていますが、僕の両親は在宅ワークのできない仕事をしているので、毎日出社。朝早くから出掛ける姿を見ると、僕が子どもの頃からずっとこうやって支えてきてくれていたんだと感謝の気持ちが沸いてきます。子どもたちにも「ありがとう」と家族に伝えてほしいですね。

「ラグビーは勝ち負け以外の部分にたくさんの魅力を持つスポーツです」

 もう一つ、家にいる時間を利用して、今のうちに英語を勉強してほしいと思います。自分が小中学校の時を振り返った時、勉強は一生懸命しましたが、もっと英語の勉強をしておけば、大人になった時にもっと視野が広がったのかなと思います。これから日本だけではなく海外にも活躍の場が広がるでしょう。その時、一つのコミュニケーションツールとして英語が話せると便利だし、国によって文化や価値観が違うので、それまで知らなかったことをたくさん学べます。僕自身、サンウルブズの一員として海外でプレーする機会が増え、英語を通じて海外にたくさん友達を作ることができました。いまもよく連絡を取り合っているんですよ。
 
 僕はラグビーを通じて、たくさんの仲間ができました。ラグビーには勝ち負け以外にも大事なことがたくさんあります。一つのボールを回して、チームみんなでトライにつなぐ。勝つためにチームワークを持って練習する中で感じる仲間の大切さ、喜びや悔しさ、また挑戦したいと思う気持ち。子どもの頃にはわからなかったことですが、ラグビーは勝ち負け以外の部分にたくさんの魅力を持つスポーツです。

 去年、トップチャレンジリーグの豊田自動織機シャトルズをやめて、海外でチャレンジすることにしました。小学生の頃から持つ「日本代表になる」という目標を叶えるためです。これまでも試合に出られずにつらいこともありました。でも、どうやったら日本代表になれるかだけを考えて、試合に出るためには何をすればいいのか考えて、前に進んできました。

 夢や目標は自分からつかみにいくものです。待っていても、向こうからやってきてはくれません。子どもたちにも夢をつかむためにポジティブに、前向きに挑戦を続けてほしいと思います。

【#きょうのトライ「自分の好きなことをノートに書き出してみよう」】

 僕も最近やっていることなんですが、自分の好きなこと、得意なこと、大事にしていることを、何でもいいからノートに書き出してみてください。いま好きな趣味でもスポーツでも、文字を書くことでも感じでも、何でもいいです。全部書いた後で見直してみると、目指したいものや目標にしたいものが見えてくるかもしれませんし、自分の意外な一面が見えるかもしれません。少し違った角度から、自分を見直してみることも大切だと思います。

■木村 貴大(きむら・たかひろ)

 1993年12月9日生まれ、福岡県出身。7歳から福岡の鞘ヶ谷ラグビースクールでラグビーを始め、中学生の時には全国ジュニアラグビーフットボール大会で優勝を飾る。強豪の東福岡高に進むと、全国高校ラグビーフットボール大会で3連覇。高校3年でU-18日本代表に選ばれる。筑波大に進学し、U-20日本代表に選出。2016年に豊田自動織機シャトルズに入団し、トップリーグで3年プレーした後、19年に退団。同年12月にスーパーラグビーのヒト・コミュニケーションズ サンウルブズで練習生になると、20年1月に正スコッドに昇格した。ポジションはスクラムハーフ。

(次回はトヨタ自動車の川西智治さんが登場)(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)