「ARK LEAGUE」内野洋平&瀬尻稜、スケボー界注目の白井空良&池慧野巨が特別対談

 2021年の東京五輪開催を前に、神奈川・寒川町にストリートスポーツの新たな拠点が誕生した。その名も「THE PARK SAMUKAWA」。外見は武骨な工業用倉庫だが、「THE PARK」のネオンサインに導かれるように中に足を踏み入れると、そこにはグレーとブラックを基調としたデザイン性の高いスケートボードとBMXフラットランドの複合パークが登場する。

 日本で開催されるストリートスポーツの世界大会「ARK LEAGUE」を主宰するBMXフラットランドの第一人者、内野洋平が音頭を取って生まれた屋内パークは、デザイン性だけではなく世界基準の機能性も持ちあわせ、ストリートスポーツ界からは早くも「ヤバイ」と絶賛の声が聞こえてくる。

 今回、スケートボードパークの設計プロデュースを任されたのは、東京五輪出場を狙う白井空良&池慧野巨の19歳コンビだ。国際大会で優勝経験を持ち、世界でもトップを争う2人がどうして設計に関わることになったのか。そして、設計から1か月あまりで完成したという“日本最速”パークに込められた想いとは……。

「THE PARK SAMUKAWA」の仕掛け人でもある内野、2人が尊敬する仲間で「SKATE ARK」の中心人物でもある瀬尻稜も加わった特別対談が「THE ANSWER」で実現した。

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 2013年に神戸で開催されたBMXフラットランドの世界大会「FLAT ARK」を前身とする「ARK LEAGUE」。2017年にはスケートボードの「SKATE ARK」、2019年にはブレイキンの「BREAK ARK」が加わり、アジア屈指のストリートスポーツイベントへと成長を遂げた。また、2019年にはイベントの拠点を神戸から、“BMXの街”として立派なパンプトラックを持つ寒川に移転。大会を主宰する内野もまた寒川に移住し、BMX、そしてストリートスポーツのメッカ作りに励んでいる。

 かつての町営プール跡地を利用したフラットランド屋内練習場「FLAT PARK SAMUKAWA」が建物取り壊しのために閉鎖され、次なる練習スペースを探していた内野の元に「手頃な倉庫スペースが空いた」と連絡が入ったのが9月。かねてよりスケートボードパークも併設しようと考えていた内野は、まず瀬尻と連絡を取った。

内野「ずっと倉庫を探していたんですけど、ようやく9月になって空いたって連絡が来て。この広さだったらスケートパークも一緒に作れるなって思って、まずは稜に電話したんです。ただ、稜は東京の練馬にいるから、まあまあ距離はある。だから、2019年のSKATE ARKで優勝した空良と慧野巨が寒川からそれほど離れていない相模原に住んでいることもあって『2人の練習場所として好きなパークを設計したらどうかな』と、稜に相談したんです」

瀬尻「めっちゃいいじゃん、と思いましたね。日本では今、パークが増えてはいるんですけど、大会で使う技や新しい技を練習できる場所がなかなかなくて。きっと、この2人が設計すれば間違いないものができるだろうって話をしました。若きトップスケーターの2人なんで(笑)」

白井「最初は冗談なのかなって思ってたんですよ。スケートパークができるって話があっても、なくなることが多かったので。それが本当にすぐ、1か月くらいで作ってくれて、すごくうれしかったです」

内野「慧野巨は、出来上がるのが来年の10月だと思ってたもんな?」

池「はい、来年だと思ってました(笑)」

白井「多分、日本で一番速い、最速スピードでできたパークですよ。“ザ・最速パーク”に名前変えちゃいましょう(笑)。慧野巨とかめっちゃビックリしてましたから。ホント、出来上がるまで“秒”でした」

瀬尻「秒パーク(笑)。俺もビックリした」

THE PARK SAMUKAWAの外観と内観【写真:荒川祐史】

設計のこだわりは…「まずは『コンクリートにしてください!』って言いました」

 今年4月22日から5日間の日程で開催予定だった「ARK LEAGUE 2020」は「SKATE ARK」だけに特化し、国際運営組織「WORLD SKATE」が認定する五輪予選大会となるはずだった。だが、コロナ禍により開催は中止。この時、東京五輪のスケートパーク設計を手掛けた会社から購入したパーク設計図を参考にしながら、白井と池による設計プロデュースが行われた。

 無駄な時間を省くため、白井と池、内野らパーク設計に関わるメンバーが一堂に会し、1日集中してアイディアを出しあった。

白井「考える時間は一瞬しかなかったですよ(笑)。でも、『どんなパークがいい?』って言われて、まずは『コンクリートにしてください!』って言いました」

内野「世界大会は全部コンクリート製のパークなんです。だから『やっぱり?』って感じでしたね」

白井「アメリカだとパークは全部コンクリートですね。それに比べて日本は、特に室内パークは木製が多くてコンクリートが本当にないんですよ」

瀬尻「コンクリートと木ではボードの弾き方が違うので、技の出し方にも影響があるんですよ。スケボーって飛んでレールにボードを掛けたりするんですけど、飛ぶ瞬間にレールに掛けるボードの位置とか高さが決まる。だから、飛ぶ瞬間の感覚ってすごく大事で。もちろん木のいいコースもあるんですけど、時間が経つと劣化して柔らかくなっちゃって、飛ぼうとボードを弾いた時に上がってくる感触がワンテンポ遅れることがある。コンクリートだと、そういうことは一切ないのでやりやすいですね」

池「技は全然やりやすくなりますね。屋外のコンクリートパークだと、雨にさらされて表面がボコボコになるんですよ。でも、室内だったら、ずっときれいなままだと思うんでいいですね」

瀬尻稜、池慧野巨、白井空良、池(左)と瀬尻(左上から時計回りに)【写真:荒川祐史】

世界のスケートパークを参考に重視した「シンプルであること」

 コンクリート製であることに続くこだわりは「シンプルであること」だった。「日本のパークってすごく難しいんですけど、海外のパークはすごくシンプルで使いやすいんですよ」と白井は言う。

池「インスタで海外のパークを見ながら『これに近いセクションを』って意見を出しあって」

白井「日本ってダウンレールのあるパークが少ないから、日本人って結構ダウンレールが下手。慣れてないから、結構怖いんです」

池「大会会場には必ずあるから、練習できていれば違うかなって」

白井「だからゴチャゴチャさせず、本当にシンプルな設計にしました。ダウンレールとダウンレッチを置いて、サイズの小さいセクションと大きいセクションを2つ作った感じです」

内野「2人は多分、普段から『こんなパークがほしいな』っていうアイディアがあったんだと思うんですよ。稜もそうだと思います。だから、意外とアイディアはすぐに出てました」

白井「『こんな感じで』って言ったものの、実は不安でしょうがなくて(笑)、でも、出来上がったらいい感じのパークになってて嬉しかったですね」

池「僕も嬉しかったですね。思ってた通りでした」

白井「でも、めちゃめちゃ広いスペースだったのに、セクションを2つ置いただけで結構埋まるんで、スケートパークの広さって大事なんだなって気付いたり、初めての設計でいろいろ知れました」

内野「本当はこうあるべきだと思うんですよ。実際に滑るスケーターの意見がリンクしていないと、金をかけてスケートパークを作っても滑りに行く人がいない。だから、僕が勝手に作るつもりはなかったし、引退した関係者にお願いするつもりもありませんでした。実際に滑っているスケーターの声が反映されなければ実用的ではないし、これからのパークも良くならないと思うんですよ」

瀬尻「自分も2017年にSKATE ARKのコースを設計した時に思ったんですけど、紙の上で見るものと、実際に出来上がったものの差はできちゃう。『俺も滑るから、こういうのがいいっしょ』って設計したら、実際はサイズ感が超デカかったっていう(笑)。滑る側がそういうことを知れるのもいいことだと思うんですよ」

白井「あのコースはマジでみんな苦戦してました。もう見たことがないくらいデカいんですよ(笑)」

内野「2017年の神戸で、見た目もカッコよく作って『稜、どないや!』って見せたら、稜が『いや、ちょっとこれ無理っす。滑れるヤツいるのかな?』とか言い始めて。僕はめっちゃ傷つきました(笑)」

白井「でも、自分で優勝しましたからね、すごいですよ」

瀬尻稜、池慧野巨、白井空良、内野洋平(左上から時計回りに)【写真:荒川祐史】

東京五輪へあくまで自然体の2人「出られるなら出てみたい」

 実際に「THE PARK SAMUKAWA」に出来上がったパークで滑った瀬尻、白井、池の3人が揃って言うのが、「技を練習するにはもってこいの場所」ということだ。

瀬尻「出来上がるまでどんなパークになるか知らなかったんですけど、すごく練習しやすいパーク。コンクリートの面がすごくいいから滑っていて気持ちいいし、レールの角度とかも新しい技を挑戦するのにちょうどいい感じです」

池「セクションの大きさがちょうどよくて、怪我しにくい大きさ。新しい技とか怖がらずに練習できますね」

白井「すごく練習しやすいので、オリンピックで勝てちゃいそうですね(笑)。こんなパークがあれば毎日練習できるし、やる気が出てきました」

 コロナ禍のため東京五輪は2021年まで開催が延期された。延期決定を受け、白井は4月に負傷していた左膝を手術。10月から本格復帰し、コンディションを上げているところだ。白井も池も、東京五輪出場の有力候補と目されているが、あくまでも「出られるなら出てみたい」という自然体を保つ。

白井「出られるんだったら出てみたいですね。かっこいいし、記念になるし(笑)」

池「僕も出られるなら出たいって感じで。皆さん、応援して下さる声に応えられるようにTHe PARKで練習しようと思います」

白井「本当に皆さん、たくさん応援して協力してくれるので頑張ろうと思います」

池「オリンピックは多分、スケボーが日本で認知されるチャンスですよね」

白井「でも、スケボーって大会だけじゃなくて、自分の色が出るビデオパートを作る楽しさもあるんですよ。世界中からすごいビデオパートがいっぱい出てきて、ホント嫌になるくらい(笑)。こんな技、俺、練習してできるようになるのかなって。でも、それでモチベーションがすごく上がるし」

池「もしオリンピックに出たら、それをきっかけに自分のスタイルとかスケートをちゃんと見てもらえるように滑りたいと思います」

 パーク設計という貴重な体験を経た白井と池。自分たちがプロデュースした最高のパークで技を磨き、それぞれが唯一無二のスケーターへと成長を続ける。(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)