さほど魅力が感じられなかった街が、一気に人気エリアに。そんなマジックを可能にしてくれるかもしれないのが新路線の開通です。鉄道の新線や既存路線の延伸は、地価上昇の呼び水にもなるため、地域の発展に多大な影響を及ぼします。
首都圏にはまだまだ多くの鉄道計画があり、事業化が予定されている区間があります。これらの情報を把握しておくと、将来の住まい選びなどの参考にもなるでしょう。(本記事は2020年3月時点の情報を基にしています)

駅無し市・武蔵村山の悲願が叶う? 多摩都市モノレール延伸計画

羽田空港アクセス線と同様に、事業化が見込まれているのが「多摩都市モノレール」の延伸計画です。多摩モノレールは東京都東大和市と多摩市を南北に結ぶ約16キロメートルの路線で、沿線には中央大学や帝京大学、多摩動物公園などがあります。

多摩モノレールの延伸により、周辺エリアの活性化が期待されています

計画されているのは北側の終点・上北台駅から北西約7キロに位置するJR箱根ヶ崎駅(八高線)までの延伸です。この区間には東大和市、武蔵村山市、瑞穂町の3市町が含まれていて、新駅の設置も7つほど計画されています。

特に武蔵村山市は都内で唯一鉄道駅がないエリアのため、住民の間からも早期の開通を望む声が高まっています。

計画では開業までには10年以上、また総事業費も約800億円かかる見通しですが、都はすでに延伸区間沿いにある新青梅街道の道路拡幅工事に着手しています。

なお多摩モノレールに関しては、将来的な構想として南側の終点である多摩センター駅から町田駅(JR東日本/小田急電鉄)、八王子駅(JR東日本)への延伸計画も浮上しています。

参考:武蔵村山市HP 多摩都市モノレールの延伸計画

練馬区人気の起爆剤になるか。大江戸線延伸プラン

東京の地下鉄では「都営大江戸線」に延伸計画があります。こちらは終点の光が丘駅から、北西の大泉町や大泉学園町を通って、埼玉県のJR東所沢駅(武蔵野線)に延伸するという構想です。

この計画は光が丘駅のある練馬区が、積極的に推進しています。というのも、区の北西部には最寄り駅まで1キロメートル以上離れている「鉄道空白地域」があるためです。大江戸線が延伸し新駅が設置されれば、この不便が解消されるだけでなく、さらに開業とともに大規模な再開発が行われれば、たちどころに人気スポットに変身する可能性もあります。

延伸費用は600〜700億円と見込まれていますが、区はすでに50億円の基金を独自に積み立てているとのこと。どれほど区が計画に力を入れているかがわかります。都も2019年10月の段階で「事業化に関する検討を進めている」とコメントを出していますから、実現する可能性が高い計画だといえるでしょう。

参考:練馬区HP 大江戸線延伸地域のまちづくり

東京以外の路線では、「横浜市営地下鉄ブルーライン」の延伸計画が動き出しています。ブルーラインは神奈川県藤沢市の湘南台駅から横浜市のあざみ野駅までを結ぶ、約40キロメートルの路線です。

計画はあざみ野駅から北西約6キロ先にある新百合ヶ丘駅(小田急多摩線)に路線を延ばすというもの。2020年1月に横浜市と、新百合ヶ丘駅のある川崎市との間で合意が取れたことから、事業化の判断がなされました。

あざみ野駅から新百合ヶ丘駅までは、路線バスで30分程度かかりますが、計画が実現すると約10分で結ばれるようになり、延伸ルートでは1日に8万人程度の利用者が見込めるということです。なお開業の予定時期は、他の計画と同じく2030年頃とされています。

参考:川崎市HP 横浜市営地下鉄ブルーラインの延伸「あざみ野〜新百合ヶ丘」概略ルート・駅位置が決定しました!

空の玄関につながる新路線の沿線にも注目

鉄道の新線・延伸計画は、基本的には国土交通省の交通政策審議会の答申に基づいて進められます。直近では2016年に答申案が出されましたが、そこでは24路線の鉄道計画が記されました。答申はおおむね15年ごとにまとめられるため、これは2030年頃までの鉄道整備案といってよいでしょう。

この24路線の中には、具体的に計画が進んでいる区画もあります。その1つがJR東日本による「羽田空港アクセス線」の構想です。

東京の空の玄関口である羽田空港の年間利用者数は現在8,000万人以上で、昼間の国際線発着回数は年間およそ6万回。さらに東京五輪に合わせて今後、発着回数は年間10万回近くに拡大される予定です。

現在、都心から羽田空港に向かうには京急電鉄の空港線と東京モノレールの2路線がありますが、将来的にはこのルートだけでは輸送力が不足すると考えられました。そこでJR東日本が羽田空港への新ルートを提案したのです。

羽田空港。3ルートが開通すれば、より快適に利用できるかもしれません

計画では、羽田空港の第1・第2ターミナル間に「羽田空港新駅」を設置し、湾岸部にある東京貨物ターミナルまで約5キロメートルの「アクセス新線」を設けます。そこへ既存の路線を接続するなどして、都心部と空港を直結させるのですが、そのルートは3つ想定されています。

1つ目が東京駅方面とつながる「東山手ルート」、2つ目が新宿駅方面と結ぶ「西山手ルート」、そして3つ目が新木場駅方面に向かう「臨海部ルート」です。

これらの区間整備にかかる費用はおよそ3,000億円(車両費除く)で、開業予定時期は2029年と見られています。

東山手ルートが開通すれば、今までモノレールへの乗り換えなどで28分かかっていた東京駅−羽田空港間が18分で行けるようになり、他の2ルートでも大幅な時間短縮が可能になるということです。

参考:JR東日本 羽田空港アクセス線(仮称)の環境影響評価手続き着手について

空港へのアクセス向上を目的としたプロジェクトは、もう1つあります。それが東急電鉄の蒲田駅と京急電鉄の京急蒲田駅を連絡する「蒲蒲線」の計画です。

どこかローカル色の漂う名前ですが、地元の大田区では「新空港線」と呼んでいるようです。蒲蒲線は最終的には京急空港線の大鳥居駅までの延伸が予定されており、羽田空港への新たな交通手段としての役割を期待されています。ただ豊住線同様、開業のめどは立っていません。

首都圏ベイエリアで事業化が検討されている鉄道計画は他にもあります。「東京メトロ豊住線」もその1つ。こちらは豊洲駅(東京メトロ有楽町線)と住吉駅(東京メトロ半蔵門線)間を結ぶ新線計画で、「豊洲」と「住吉」の頭文字を取って「豊住線」と呼ばれています。開業予定時期は未定ですが、実現すれば既存路線の混雑緩和につながるといわれています。

莫大な費用がかかる延伸事業には計画の変更も

鉄道新線や延伸の事業化には数百億、ときには数千億円という膨大な費用がかかります。そのため計画の変更を余儀なくされるケースも出てきます。

その一例がブルーラインの計画にも出てきた「小田急多摩線」の延伸計画です。

これは同線の唐木田駅から南部にあるJR相模原駅(横浜線)と結び、上溝駅(JR相模線)まで延伸するプランです。

検討されている路線の距離は約8.8キロメートル。延伸が実現すれば、例えば、新宿駅までの所要時間が相模原駅から12分、上溝駅から22分それぞれ短縮できると相模原市は計算しています。さらに延伸の効果として、相模原駅の周辺に商業施設の誘致が進み、3,000人もの人口増が見込める、という試算もあるようです。

ところが、計画には落とし穴がありました。唐木田駅−上溝駅間が開通しても、黒字になるには何と40年以上かかるという調査結果が出たのです。これではあまりにも採算が取れません。

そのため、まずは相模原駅までのルートを先に整備する方向で計画が見直されました。これならコストも、上溝駅までの延伸に比べて3分の2(約870億円)に抑えることができるというのです。

大事業だからこそ、このような柔軟な対応も必要となってくるのでしょう。

今記事で挙げた鉄道計画が確実に実現するかどうか、現時点で断言するのは難しいです。ですが「将来、人気の出るエリアに住みたい」と思われている人は、新線・延伸計画の動向に気を配っておかれるとよいでしょう。ひょっとしたら、思わぬ「掘り出し物」の街が見つかるかもしれません。