毎日の暮らしをちょっと幸せにしてくれるおいしいパン。「絶品パンさんぽ」は、「365日、パンのことで頭がいっぱい!」というライター・斎藤若菜さんが、地元の人に愛されるとっておきのベーカリーをめぐる連載です。第4回は「清澄白河」駅周辺のパン屋へ。後編では、小さなブーランジェリーとパンのある八百屋さんを訪れました。

前編はこちら:【清澄白河パンさんぽ】ワンコインで大満足の街のパン屋「コトリパン」

常連客でにぎわう「Bopangerie Panta Rheiブーランジェリー パンタレイ」

清澄白河のパンさんぽ、後編で紹介するのは、2017年4月のオープン以来、地域に根差した営業を続けるパン屋さん「Bopangerie Panta Rhei(ブーランジェリー パンタレイ)」です。

深川資料通りにある「ブーランジェリー パンタレイ」。行列の並び方に関する看板を出すほど、常ににぎわっていました

店内には、約35種類のパンが並びます。この日は午前中に訪問しましたが、パンを並べた先から売れていく様子が印象的でした

日常使いのパンを作り続ける伊丹さん。おすすめパンは「プラリネショコラ」(540円)や「大納言フランス」(250円)、「果実とくるみとクリームチーズ」(1本680円・1/2個350円)とのこと

パティシエからパン職人となり、日常使いの店をオープン

オーナーの伊丹さんは、日本とフランスで合わせて約13年間、パティシエとして働いた経歴の持ち主。自分の店を持つことを現実的に考え始めたとき「パティスリーは特別な日に買いに行く場所。それよりも、毎日来店してもらえる店を開きたい」と考えるようになったそうです。「パン屋の方が私のやりたい店の形に近いのでは」と考えた伊丹さん。クロワッサンをはじめとするデニッシュ系やブリオッシュ系のパンはフランスのパティスリーで手がけていましたが、より深くパンを学ぶため、都内のベーカリーで5年間修行した後に独立しました。

「ブーランジェリー パンタレイ」という店名の由来は、古代ギリシャの哲学者・ヘラクレイトスの思想「万物は流転する」から引用しました。「お客さまの好みに応じて常に変化していきたい」という思いを込めて名付けたそうです。
また、店名には伊丹さん自身が変化し続けている意味も込めているとのこと。かつて理系大学で機械工学を学んでいた伊丹さんは、健康上の都合で進路を諦め、フランス料理のシェフを目指して調理師学校に通いました。しかし、希望のフレンチレストランに採用されなかったため、元々甘い物好きであったことからパティシエに転向。さらにその後、前述の理由でパン職人に。店名は、伊丹さんのドラマチックな半生そのもののようです。

ベーコンエピを成型中の伊丹さん。モチモチとした食感のフランスパン生地と塩気が効いたベーコンの相性が抜群です

幅広い年齢層が食べやすい食感のパンを提供

「ブーランジェリー パンタレイ」のパンは、低温長時間発酵による、モチモチとした食感が特徴。「清澄白河はおしゃれな街というイメージがありますが、実際は年配の方が多い印象です。また、近くに幼稚園があり、子ども連れのお客さまも多いため、フランスパンの生地は硬く焼き込まないようにしています」と伊丹さん。リベイクすると、まわりはパリッと、中はモチモチの食感で、よりおいしく食べることができるそうです。
また、子どもが食べられるようにアルコールや添加物が入っていないパンを求めるお客さまが多いため、イーストフード、BBJ(製パン用生地改良製剤)、マーガリン等は不使用、なるべくリキュールを使わず、原材料も厳選した物を使うようにしているとのこと。それぞれのパンに合わせて北海道、フランス、カナダ、ドイツ産の10種類の粉を組み合わせるなど、粉にも並々ならぬこだわりがあります。

1番人気の「北海道食パン」(1本700円・1斤350円・1/2斤185円)は、北海道産の小麦・バター・牛乳・練乳を使用。小麦はゆめちから・はるきらり・きたほなみのブレンドを使用しています。軽くトーストして食べてみたところ、甘みのあるリッチな味わいで、何もつけなくても十分なおいしさでした!

「奥久慈卵のクリームパン」(200円)はSARAH JAPAN MENU AWARD クリームパン部門で2つ星を受賞。生地のやわらかさと上品な味わいが印象的でした

北海道食パンの生地がベースの「レーズンボール」(150円)は常に人気の商品

写真上から時計回りに、レーズン・クランベリー・くるみ・クリームチーズがたっぷりと詰まった「果実とクルミとクリームチーズ」、「奥久慈卵のクリームパン」、もっちりとした食感の生地と大納言あずきがよく合う「大納言フランス」を購入。セーグル(ライ麦)、ブリオッシュ、フランスとそれぞれに異なる生地を使用していますがいずれもおいしく、あっという間に完食してしまいました

売り切れ必須! 午前中の訪問がおすすめ

「ブーランジェリー パンタレイ」のパンは、200円台が中心。営業時間は10:30〜15:00ですが、午後には大半のパンが売り切れてしまうそうです。食パンは1日3回焼いていますが、そのうち2回はオープン時間前の8:00と9:40で、3回目は12:55。「奥久慈卵のクリームパン」「ザクふわメロンパン」などブリオッシュ生地のパン、「シナモンロール」などデニッシュ生地のパンは、オープン前にすべて焼いています。フランス生地のパンは13:00頃まで随時焼いているとのこと。お目当てのパンがある人は、早めの時間に訪ねてみてはいかがでしょうか。

ブーランジェリー パンタレイ
住所:東京都江東区三好1-6-7 余郷ビル102
営業時間:10:30〜15:00
定休日: 月・火・金曜
公式ホームページ:https://www.facebook.com/bopangerie.pantarhei/
Twitter:@b_pantarhei 

野菜とパンのペアリングを楽しめる「野菜のちから」

最後に、当連載では初となる八百屋さんを紹介します。「野菜のちから」は、2019年7月末、清洲橋通り沿いにオープン。3年ほど前から月2回開催していた「清澄白河おやさい市場」の常設店舗です。実はここ、4つの人気ベーカリーのパンを日替わりで販売している、隠れパンスポットなのです。さまざまなパンや、パンと店内の野菜を使ったサンドイッチを販売しているとのこと。早速、店内を覗いてみましょう。

白いのれんが目印。円形の黒板には毎日、おすすめの野菜や日替わりで仕入れ先が変わるパン、総菜などの情報が記載されます

季節により50〜80種類の野菜が並ぶ店内。口コミで取引先が増え、現在は40以上の農園から野菜を取り寄せているそうです

店長の加藤さんが手にしているのは、神奈川県茅ヶ崎市・伊右衛門農園のにんじん。地元の朝市では行列ができるほど人気のある農園です。「生のままスライスして飾りにしてもいいですし、茹でたり焼いたりすれば甘みが引き立ちます」

取材日は西日暮里「BOULANGERIE ianak!(ブーランジェリーイアナック)」のパンとともに、「小原農園の小松菜白和え」「天心農場にんじんのオレンジマリネ」といった総菜やサンドイッチが並んでいました

大分県日出町・小田農園の「プレミアムベビーネギ」(230円)は酢味噌和えにおすすめ。農園を営む小田さんが、ネギ嫌いの子どもに食べさせたくて作ったのだとか

「野菜」「総菜」「パン」が買える店に

「清澄白河で旬のおいしい野菜を購入できる場を提供したい」という思いでスタートした「野菜のちから」は、全国の農家から届く「顔が見える野菜」が要。「野菜が野菜の味がする」そんな当たり前の野菜が揃う、職を楽しむ八百屋というコンセプトです。農家の記載がある野菜はすべて、スタッフが実際に食べておいしいと感じたものばかり。スタッフと訪れる人々のコミュニケーションも大切にしていて、おすすめの調理法や保存法など、気軽に質問して欲しいと言います。例えば、同店が提案する「野菜を丸ごと買う暮らし」は家族構成により、使いきれるのか心配になりがち。しかし、野菜は丸ごと購入した方が長持ちすること、さまざまな活用法があることなどをじっくりと説明することで、丸ごと購入に踏み切るお客さんが多いそうです。

同店で購入できるのは、野菜だけではありません。「野菜・総菜・パン」を3本柱として、旬の野菜を使って店内で製造した総菜や、国産小麦をメインとした人気ベーカリーのパンも揃えています。

常時10種類以上のパンが届きます。取材時は「ブーランジェリーイアナック」のパンがずらり。加藤さんのおすすめは「お豆とレンコンのカレーパン」(280円)や、ナッツとドライフルーツがたっぷりと入ったライ麦パン「ライナッツ」(340円)とのこと

「本日のサンドイッチ」(500円)。取材時は、ブーランジェリーイアナックの「角食パン」(300円)と店頭でも販売している有精卵を使用した「蒸し鶏とトマトとレタス&卵サラダのサンド」を販売。シンプルでやや弾力がある食パンと具材がマッチし、大満足の味わいでした!

7〜8種類の野菜に日替わりの自家製ドレッシングを添えた「野菜たっぷり! 本日のサラダボール」(450円)。「野菜に合うパンを」と加藤さんに選んでもらった「ヴィエノワ」(200円)とともにいただきました。ほんのり甘いミルク生地のパンと野菜がよく合います

人気店のパンを日替わりで提供。野菜とのペアリングを楽しんで

レジ前のパンコーナーには、日本橋浜町「Bopangerie Django(ブーランジェリージャンゴ)」、板橋区「HIGU BAGEL&CAFÉ(ヒグベーグル&カフェ)」、西日暮里「ブーランジェリーイアナック」、千葉県松戸市「Zopf(ツォップ)」いずれかのパンが日替わりで並びます。4店とも、粒ぞろいの名店ばかり。

また、それらのパンと店内に並ぶ野菜を使って店内で手づくりしたサンドイッチも人気。化学調味料不使用のシンプルな味付けで、パンや野菜の持ち味を生かしています。野菜が主役のスープがついた「平日限定 日替わりスープとサンドイッチのセット」(テイクアウトのみ・750円)も販売しています。

「購入目的でなくても、旬の野菜を知り、献立のヒントを得るために気軽に来店して欲しい」と加藤さん。また、パンや野菜は品数に限りがあるため、お目当ての商品がある場合は早めの来店がおすすめとのこと。散歩がてら、ふらりと立ち寄る買い物スポットとして、チェックしておきたい一軒です。

野菜のちから
住所:東京都江東区清澄2-7-9
営業時間:火〜金曜11:00〜20:00 土・日曜、祝日9:00〜18:00
定休日: 月曜(祝日の場合は翌火曜)
公式HP:http://food-voice.com/yasai-no-chikara

編集後記

今回は、2つのベーカリーとカフェ、八百屋をめぐりました。今回は定休日の関係で紹介できませんでしたが、ほかにもハード系のパンが豊富に揃う「oval(オーバル)」やサンドイッチが人気の「CLOP(クロップ)」など、魅力あるベーカリーがたくさんあります。運河沿いや清澄庭園ではお花見も楽しめますので、皆さんも春の風を感じつつ、出かけてみてはいかがでしょうか。

今回訪れた4店舗の位置関係

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前編はこちら:【清澄白河パンさんぽ】ワンコインで大満足の街のパン屋「コトリパン」

※営業時間や税抜き価格、パンの焼き時間など、記事内の情報は取材時点(2020年1月)のものです。変更される可能性がありますので、お出かけの際はホームページなどで最新情報を確認ください

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