相続税や贈与税の算定基準となる路線価(2020年分)が1日、国税庁から発表された。全国平均は前年より1・6%上回って5年連続の上昇だったが、今回の数値は今年1月1日時点のもののため新型コロナウイルスの影響を受けていない。昨年まで好況だった訪日外国人観光(インバウンド)目当ての観光地は、落ち込んだ現状との差に戸惑っている。

■1月1日は「絶好調」の最中だったけど…

 東京・浅草の「雷門通り」。赤い大提灯(ちょうちん)がシンボルの観光スポット周辺の路線価は、前年比33・9%増の1平方メートルあたり403万円だった。近くで「旅館加茂川」を営む矢島弘之さん(77)は「土地を転売すればもうかるという神話が浅草にはあった」と話す。

 加茂川は創業約70年の老舗だが、母親から14年前に旅館の経営を継いだ矢島さんはターゲットを外国人に絞った。トイレや風呂を個室完備し、英語が堪能なスタッフをそろえた。宿泊客の8割を外国人が占め、今年も花見シーズンには、中国やシンガポール、オーストラリアから観光客が押し寄せるはずだった。

 路線価が評価時点とする1月1日は、そんな「絶好調」(矢島さん)のさなかだった。地元の不動産業者によれば、浅草エリア全体をみても、インバウンドによる宿泊需要を見越したホテル用地への資金投入が相次ぎ、好景気も相まって土地の価格を押し上げていたという。

 しかし新型コロナがすべてを変えた。

 加茂川では3月初旬からキャンセルが相次ぎ、外国人宿泊客「ゼロ」が続いた。同業者の苦境も耳にする。「ホテルがダメになることは、浅草がダメになるということ。バブルははじけた」と矢島さんは言う。

 公表された20年分の路線価は全国平均で前年を1・6%上回り、5年連続の上昇。主要な観光地はホテル用地の引き合いが強いこともあっておおむね上昇率が高いが、「コロナ後」の見通しはどこも暗い。