日産自動車が、会社資金の私的流用など数々の不正を認定したカルロス・ゴーン前会長に対し、100億円の損害賠償を求めて提訴に踏み切った。民事上の責任追及を本格化する構えだが、前会長は昨年末にレバノンに逃亡しており、実際に賠償の支払いを受けられるかどうかは不透明だ。

 日産はゴーン前会長が逮捕される前の2018年10月から外部の法律事務所と連携し、前会長の不正について社内調査を実施。調査結果に基づいて、前会長に損害賠償を求める方針だったが、民事訴訟は被告に訴状が届かなければ進めることができない。被告が海外にいるケースでは、「民事訴訟手続に関する条約」などに基づいて裁判所から外務省を通じて書類を送り、被告が居住する国の当局などを通じて本人に届ける。訴状を受け取った被告は、同様のルートで日本の裁判所に受け取ったことを知らせる。

 裁判関係者によると、レバノンもこの条約に加盟しているとみられ、このルートに従って手続きが進められそうだ。ただ、条約の加盟国は国際法上の義務を負うものの、実際に被告に届くかどうかはその国の対応次第といい、不透明だ。

 民事訴訟に詳しい裁判官によると、提訴がゴーン前会長に伝わり、前会長が日本で代理人を選任すれば、その代理人に届ける可能性も考えられるという。「提訴を知って対応するか、知らないふりをするか、本人次第だ」と話す。