3月1日から始まる奈良・東大寺の二月堂修二会(しゅにえ)(お水取り)に向けて、堂内を飾るツバキの造花に使われる和紙の染めが佳境に入っている。京都の老舗染織工房「染司(そめのつかさ)よしおか」が毎年奉納し、今年も6代当主の吉岡更紗(さらさ)さん(42)らが、紅花などの自然染料で仕上げを急いでいる。

 造花は、修二会に参籠(さんろう)する練行衆(れんぎょうしゅう)(こもりの僧)らが2月23日に400個を手作りする。工房では1月上旬から、昨年亡くなった5代目幸雄さんの三女更紗さんや、工房を長年支えてきた染め師の福田伝士(でんじ)さん(71)らがかかりきりだ。

 ツバキの造花の赤は、紅花の花びらから色素を抽出する。花が持つ黄色の色素を水の中でもみ洗いして流し、アルカリ性の灰汁(あく)や酸性の米酢を加えるなどして赤の濃度を上げていく。

 この工程を数日間にわたって何度も繰り返し、縦49センチ、横39センチの和紙に5、6回重ね塗りする。3キロの花びらで和紙3枚分の染料を得るのがやっとで、造花に必要な60枚分を染め終えるのは、毎年、2月20日の奉納直前となる。更紗さんは「今年は青みがかった深い赤になった。よりよい色を出せるように毎年がんばります」と話している。(編集委員・小滝ちひろ)