新型コロナウイルスに感染した人の死亡が国内で初めて確認された。このウイルスはこれまで、肺炎や発熱などの症状がない人からも見つかっていた。ごく普通のかぜだと思い込み、気付かないうちにウイルスが広まり、亡くなる人が出る可能性も以前から指摘されていた。

 世界保健機関(WHO)は現状について「(世界的な流行の拡大を意味する)パンデミックではない」とする。しかし、北海道大の西浦博教授は、武漢市からチャーター便で帰国した人たちのデータをもとに、国内外の感染者数は、実際の9・2%しか把握できていないと推計している。

 感染経路のはっきりしない例が相次いだ以上、いま確認できているよりもはるかに大きな規模でウイルスが広がっていると考えて、重症化するリスクの高い人への感染を可能な限り避けることに、市民が最優先で取り組むべきではないか。

 重症化しやすいのは高齢者や糖尿病、心臓病などを抱える人たちで、まずはこうした人たちにうつさないための配慮が最も求められる。これまで、子どもへの感染例などは少ないとされているが、安心できる情報はまだ多くない。当面は十分に注意したい。

 12日現在のWHOデータによると、致死率は2・5%で、政府が警戒する新型インフルエンザと同等だ。ただ感染者の大部分は軽症で、重症患者を支える人工肺などの医療機器を含め、技術は大きく進んでいる。

 「自分も感染しているかも」と考えて丁寧に手洗いをする、高齢者に接する際は特に注意するなど、ウイルスに対する「社会全体の防御レベルを上げる」(川名明彦・防衛医科大学校教授)ことが、被害を最小限にとどめることにつながる。(編集委員・田村建二)

■医療体制守るため、相談窓口の活用も

 押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は「少なくとも、国内でも感染経路が追えない『見えない感染』が広がっていたことが明確になった」と指摘する。

 国内外の報告によると、新型コロナウイルスは発症しても、熱やせきなどですむ場合が少なくない。ただ、一部の人は肺炎を起こし、特に高血圧や糖尿病といった持病のある人や高齢者では重症化しやすいとされる。

 このため、普通のかぜの人も不安に感じて受診すると、中国・武漢市のように医療崩壊を招き、助かる命を危うくする恐れもある。「これからは、医療体制を守る方法を考えていくことが重要になる」と押谷さんは話す。

 感染を疑った場合、どうすればいいのか。厚生労働省は「14日以内に湖北省か浙江省への渡航歴がある人か、その人と接触した人」で、熱やせきの症状がある人のために、相談を受け付ける「帰国者・接触者相談センター」を保健所などに設置。そうでない場合は、近くの医療機関への受診を求め、フリーダイヤルの相談窓口(0120・565653)を設けている。

 感染確認には、現状では時間と費用がかかるPCRというウイルス検査が必要になり、現在の基準では、発熱と呼吸器症状があり、発症14日以内に湖北省か浙江省にいたことがある人やその人と濃厚接触した人が対象だ。医師が感染を疑う場合は、各自治体と相談の上で検査するよう求めている。

 病院内には重症化しやすい患者が多く、院内感染は最も懸念される事態だ。湖北省では、院内感染が患者を増加させ、スタッフの疲弊を加速させているとみられている。武漢大学中南医院のグループが米医師会雑誌に発表した報告によると、1月1〜28日に同院で入院治療を受けた患者138人の4割は院内感染。うち40人は医療スタッフだった。

 国内で初めて感染者が死亡したことで、ウイルス検査を希望する人が増えることも予想される。今はインフルエンザなども流行している時期で、中島一敏・大東文化大教授(感染症学)は「やみくもにすべての人が、ウイルス検査を受ける必要はない」と強調する。

 元国立感染症研究所室長で国立病院機構三重病院の谷口清州・臨床研究部長も「ただ心配だからと言って受診すれば、病院はパンクしてしまう。相談窓口に電話してから受診するなど、病院機能が破綻(はたん)しないようにすることが大切だ」と指摘する。「感染してもすべて重症になるわけではなく、軽症なら普通のかぜと同じように家で療養することも考えてほしい。重症の患者が優先的に治療を受けられる医療体制を地域で考えないといけない」と話す。

 病院などでは、持病がある人や高齢者らに新型コロナウイルスが到達しないように、周りの人が注意することが大切になるという。感染予防には、インフルエンザと同じような予防策を勧め、「手洗いやせきエチケットを心がけ、自分が少しでもせきなどの症状があれば、マスクを着用してほしい」と呼びかける。

■【新型肺炎相談窓口】

【新型肺炎相談窓口】

▽厚生労働省の電話相談窓口

・電話 0120・565653

・受付時間:午前9時〜午後9時(土、日、祝日も対応)

▽都道府県・保健所などによる電話相談窓口

(下記に詳細が掲載されている)

https://www.kantei.go.jp/jp/pages/corona_news.html