「まだ1枚のマスクも手にしていない」。朝日新聞の「声」欄に9日、新型コロナウイルスの感染拡大によるマスク不足を嘆く、鳥取市の主婦・畠山由美子さん(71)の投稿が載った。数日後、朝日新聞大阪本社に「畠山さんに送ってほしい」と、読者2人から善意のマスクが届いた。

 16日、畠山さんの自宅にマスクが届けられた。封筒の中に入っていたのは、岡山県の読者から贈られた市販のマスク3枚。大阪府の読者からは、7枚入りの市販のマスクと、マスクの作り方が記されたメモ、そのサンプル品、耳にかける部分に使えるゴムが入っていた。それぞれ直筆の手紙も添えられ、「私の手元も残り少なく、取り急ぎ3枚同封させて頂きます」「心痛みます。早く終息して欲しいですね。お元気で!」などと書かれていた。

 畠山さんは糖尿病を患っており、夫にも高血圧や不整脈などの持病がある。高齢者や基礎疾患がある人は、新型コロナウイルスにかかると重症化しやすいことがわかっている。このため、畠山さん夫婦は感染防止に人一倍気を使い、外出も可能な限り控えている。

 それでも、通院時などはマスクを着けて出かけたい。しかし、マスクは一枚も売っていない。ハンカチや家にあった余りの布を使い、1枚30分ほどかけてマスクを手作りした。耳にかける部分にちょうどよいゴムが見つからず、孫の紅白帽で使ったゴムを半分に切って代用した。

 マスクの転売を規制する動きもあり期待したが、売り場はすっからかんのままだ。トイレットペーパーやゴミ袋も店頭からなくなり始めると、買いだめしておきたくなる気持ちも理解できた。いつまでこの不安が続くのだろう。そんな戸惑う気持ちを「声」欄に投稿した。

 届いたマスクを目にすると、優しさに心が震えた。机に並べ、思わず夫と2人で泣いた。「みんなが不安な状況で、ましてや見ず知らずの他人に分けてくれるなんて。こんな行動、自分にはできるだろうか」。畠山さんは、今後の人生での大きな宿題をもらった気持ちでいる。(宮城奈々)