九州大学は26日、昆虫のカイコを使い、新型コロナウイルスワクチンの候補となるたんぱく質を開発することに成功したと発表した。「昆虫工場」による大量生産で、数千円で接種できるワクチンの臨床研究開始を来年度にもめざす。

 九大は世界的なカイコの研究機関として知られる。カイコは遺伝子操作したウイルスを注射すれば狙ったたんぱく質を体内で生産できることから、このたんぱく質を使って、新興の感染症を想定したワクチン開発技術を研究してきた。

 九大は1月に公開された新型コロナウイルスの遺伝情報をもとに、ウイルスが人間の細胞に感染するための突起状の「スパイクたんぱく質」に着目。大学で飼育するカイコで、このたんぱく質が生成できることを確認したという。

 別のコロナウイルスの研究では、スパイクたんぱく質を注射したマウスの免疫反応で体内にできた「抗体」で、ウイルスの感染を予防できる結果がすでに得られている。九大は新型コロナでもマウスを使った実験を年内にも終わらせる方針。製薬企業と連携し、早ければ来年度にも人間での研究を始める意向だ。

 26日の記者会見で日下部宜宏教授(昆虫ゲノム科学)は「ワクチン開発は世界中で進むが、スピードよりも、途上国も含めて接種できる安価なワクチンを、安定して生産することをめざしたい」と話した。

 また、九大の西田基宏教授(薬理学)らは26日、すでに使われている約1200種類の薬の中から、新型コロナの重症化防止も期待できる薬を3種類、発見できたと発表した。新型コロナの患者にも見られる呼吸不全や血管の炎症などの治療薬のため、早期の投与開始が見込めるとして「年内にも実用化につなげたい」と説明している。(竹野内崇宏)