大質量星の形成現場、大マゼラン雲の「2羽の孔雀」

【2019年11月19日 アルマ望遠鏡】

恒星は水素ガスが重力収縮して誕生するが、太陽の20倍より重い大質量星の形成については、理論的にも観測的にもわかっていないことが多い。理由の一つは、大質量星の割合が星全体の0.1%以下と極端に少ないことにある。

名古屋大学の福井康雄さん、大阪府立大学および国立天文台の徳田一起さんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を使って、天の川銀河の伴銀河である大マゼラン雲の中の星雲「N159」の観測を行った。N159は過去の観測で、高密度にガスが集中している場所として注目されていた領域である。大マゼラン雲までの距離は約16万光年であり、天の川銀河内の大質量星形成領域より10倍も遠いが、アルマ望遠鏡の高感度と高解像度のおかげで、遠く離れた大質量星形成領域の研究ができるようになり、N159の詳細な構造をとらえることにも成功した。

N159
N159。赤い四角内が可視光線画像、その隣が同領域の電波観測の擬似カラー画像(後述)(提供:大阪府立大学リリースより)

観測の結果、N159の中の2か所で、多数のフィラメント構造が扇のような形状に広がっている様子が明らかになった。フィラメントの長さは3光年、幅は0.3光年程度で、領域全体では総数計100本近くのフィラメントがある。この形状を研究チームは「2羽の孔雀」になぞらえている。孔雀の胴(扇の要)の部分にはそれぞれ、太陽の20〜40倍の質量を持つ生まれたばかりの大質量星が存在している。

「2羽の孔雀」分子雲
「2羽の孔雀」分子雲の擬似カラー画像。(左)N159E-パピヨン領域、(右)N159W-South領域。赤と緑はそれぞれ、速度が異なる一酸化炭素の同位体分子^13COからの電波を表す。左図の青色は、ハッブル宇宙望遠鏡により観測された水素電離ガスの分布、右図の青色は波長1.3mm帯の濃いガスに含まれる塵からの電波をそれぞれ示す。フィラメントが集合している「かなめ」(青)の位置に大質量星が存在し、フィラメント状構造が明瞭に写し出されている(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/Fukui et al./Tokuda et al./NASA-ESA Hubble Space Telescope)

このような構造が見られることはシミュレーションでも示されており、星間雲同士が衝突後ほどなくして分子雲フィラメントが形成され、その中で大質量星が約1〜10万年前に誕生したと推測されている。フィラメントの形成には衝突でひき伸ばされた磁場が重要な役割を果たしている。

(Youtube動画)

天文学専用スーパーコンピューター「アテルイ」を使ったシミュレーションから描き出されたガス雲衝突の過程(提供:国立天文台/Inoue et al.)

2羽の孔雀は同じ方向に揃っているが、互いに150光年以上離れた天体がこのように整列することは、偶然とは考えにくい。研究チームはこの整列の原因が、2億年前に起こった大マゼラン雲とその隣にある小マゼラン雲の近接遭遇だと考えている。近接遭遇の際に大マゼラン雲が小マゼラン雲のガスを引き出し、そのガスが両銀河の間を運動して大マゼラン雲に衝突した、というものだ。この説は理論計算による予想ともよく一致している。

これら一連の研究結果は、ガス雲同士の衝突によって大質量星が扇状フィラメントの要で形成され、その中で複数の大質量星が一気に誕生していることを示した成果だ。また、銀河間の相互作用が、数億年規模で爆発的星形成現象(スターバースト)を引き起こすことも示唆している。「大質量星形成と銀河相互作用の役割を、アルマ望遠鏡の観測で初めて結びつけることができました。相互作用銀河の観測研究は今後さらに発展し、宇宙における大質量星団の形成機構の解明につなげることができると期待しています」(福井さん)。


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