【2020年3月26日 JAXA】

探査機「はやぶさ2」は2019年4月5日に小惑星リュウグウへ衝突体をぶつけ、人工クレーターを作る実験に成功した(参照:「「はやぶさ2」クレーター実験成功、飛散物質の「カーテン」をとらえた」)。この実験は宇宙風化の影響を受けていない小惑星地下の新鮮な物質を観測するとともに、重力が弱い小型小惑星におけるクレーターの形成過程を調べることを目的としている。

この人工クレーターには「おむすびころりんクレーター」という愛称がつけられており(参照:「「はやぶさ2」人工クレーターの愛称は「おむすびころりん」」)、2019年の流行語大賞に選ばれたことで話題にもなった。

「はやぶさ2」は小型搭載型衝突装置「SCI」と分離カメラ「DCAM3」をそれぞれ切り離してから破片の届かないところへ退避し、2kgの銅でできた衝突体を秒速2kmでSCIからリュウグウへ向けて放つことでクレーターを作った。衝突の際に物質が円錐状に飛び散る「イジェクタカーテン(またはエジェクタカーテン)」が発生する様子をDCAM3がとらえている。

エジェクタカーテンの画像
DCAM3によって撮影されたイジェクタカーテン(衝突から192秒後)。(右)左の画像を拡大したもの(提供:Arakawa et al., 2020、以下同)

イジェクタカーテンの広がり方から、クレーターは200秒かけて成長し、衝突体による掘削と巻き上げられた物質の堆積は衝突から500秒間以上継続していたものとみられる。また、カーテンは北へ広がる一方、南側へは物質が放出されていない。これは「オカモト岩」と呼ばれる大きな岩によってクレーターの成長が阻害されたためと考えられている。

「はやぶさ2」は実験の約3週間後にリュウグウの上空1.7kmまで近づき、1ピクセルあたり18cmの解像度でおむすびころりんクレーター付近を撮影した。この画像から、クレーターが北側へ半円状に広がっていること、数十cmほどの岩塊が多数移動するとともに、大きさ5mほどの「イイジマ岩」も掘り起こされ約3m移動していることが確認された。

衝突前と衝突後の画像
衝突実験の前(左)と後(右)。北側では物質が飛散して「イイジマ岩」(MB)もずれた。一方、南では「オカモト岩」(SB)がクレーターの成長を阻んだ

イイジマ岩の東端には直径約3mのピット(くぼみ)が見つかり、人工クレーターはここを中心として直径約14.5m、周囲のリム(盛り上がり)も含めると17.6mまで広がっていた。これは地球で同様の衝突が起こった場合に形成されるクレーターと比べて7倍も大きいものだ。また、クレーターの深さは1.7m、リム頂上からピット底までの深さは約2.7mと推定されている。他方、衝突地点の南にある「オカモト岩」は動かず、クレーターもこちら側へは広がってないことが確認された。

おむすびころりんクレーターの数値標高地図
SCIクレーター(おむすびころりんクレーター)の数値標高地図。色で地形の高さを示してあり、赤いほど標高が高い

撮影された画像では、地下から掘り起こされた堆積物は元々表面にあった物質よりも暗く写っている。この堆積物があると推測された地点は、2019年7月11日に「はやぶさ2」が2回目のタッチダウンを行って試料の採取に成功している。1回目のタッチダウンで取得した表面の物質と比較することで、宇宙風化の影響などもさらに詳しく知ることができると期待される。

ところで、衝突前のリュウグウの表面はそもそもどれくらい古かったのだろうか。地表の年代を推定する手法として、クレーターの数とその大きさを集計するというものがあるが、そのためには天体の衝突に応じてどれくらい大きなクレーターができるかをあらかじめ見積もっておく必要がある。採用するモデル次第で、リュウグウ表層の年齢は600万年から2億年と大きく推測がばらついてしまうのだ。

衝突体によるクレーターはオカモト岩のような岩塊に阻まれただけで、それ以外の地表は砂のようにやわらかいことが今回の実験で判明した。この結果から、表層の年齢は若めの見積もりである640〜1140万年だろうと予測される。小惑星の表面活動やその形成(衝突破壊や再集積)が、これまで考えられているより頻繁に起こっている可能性を示す結果である。

今回の成果は、リュウグウのような瓦礫がゆるく集まってできた「ラブルパイル天体」に適用されるクレーター年代の再検討を促すものとなった。