驚くべき速さと、目を見張る美しさ。スーパースポーツカーは、両者を兼ね備えた特別な存在です。『autosport web 最新スーパースポーツカー試乗レポート』では、クルマ好きなら誰もが憧れる至高のマシンの数々の中から注目の1台をピックアップして、その走りの印象をお伝えします。

 ハンドルを握るのは、モータージャーナリストの吉田拓生さん。第1回目は、ポルシェ911カレラ4Sを取り上げます。

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■50年以上の歴史を持つスポーツカーのアイコンが8代目に進化

 歌舞伎役者の襲名と同じように、ポルシェ911の車名は何度代替わりをしてもポルシェ911のままだ。2019年にフルモデルチェンジを果たしたモデル(型式は992)は、都合8代目の911である。
 
 ポルシェ911は、モータースポーツ好きにとって“マストバイ”な1台といえる。何しろ911は1964年に誕生して以降、一貫して世界選手権レベルのスポーツカーレースの屋台骨を支えてきたのだから。

 ポルシェ911を購入するということは、ポルシェのモータースポーツ活動のスポンサーになることと同義であり、そのステアリングを握れば、フロントウインドウ越しにユーノディエールの陽炎が見える、なーんていうロマンチストが居てもおかしくない。

 ポルシェ911は現代のスポーツカーでは他のないリヤエンジンレイアウト(RR)を特徴としている。RRのリヤヘビーを解消する施策がそのままこのクルマの進化につながってきたのだ。空力を煮詰め、ターボで過給し、4駆化も当たり前のように盛り込み、RSRやGT2、GT3 Rといった競技系モデルでGTレースを席巻し、シンパを増やしてきたのである。

■992型も“最新こそ最良”は揺るがない

“最新のポルシェは最良のポルシェ”という格言がある。当たり前のような気もするが、カスタマーに「新型の方が良かった」と言わせ続ける企業努力は驚くべきレベルだ。ポルシェ911は「私、失敗しないので」なクルマなのである。

 先代の991型から最新の992型を乗り比べると、ほとんどのドライバーが「あ、新型の方がいい」とわかるレベルで良くなっている。

 とはいえ近年のあらゆるクルマがそうであるように、992への代替わりは、なにかが大幅に変わったというわけではない。シャシーを部分的に鉄からアルミに置き換えている点は目で見てもわからないし、外観もキープコンセプトなので、クルマ好きでなければその差に気づかないほど。

 ではどこが進化したのかと言えば、ADAS(先進運転支援システム)やスマホとクルマの連携、ナビゲーションシステムなどを統括するインフォテイメントが新しくなっている。今回試乗できたポルシェ911カレラ4Sは、どちらかといえばグランドツアラー的な性格であり、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)などの楽チン装備がありがたい。

 今回もまた「最新は最良!」なのである。現代のポルシェ911にRRの悪癖はないし、もっともベーシックなモデルのオーナーにも「このシャシーをベースにしてル・マンを戦っているんだ」みたいなウンチクを語る資格が与えられる。レース好きならばぜひ一度、モータースポーツの歴史(911)を手に入れることをお薦めしたい。

■ポルシェ911カレラ4S 諸元
車体全長×全幅×全高4519mm×1852mm×1300mmホイールベース2450mmトレッド 前/後1589mm/1557mm車両重量1565kg駆動方式AWDトランスミッション8速DCT(PDK)サスペンション前/後マクファーソンストラット/マルチリンクブレーキ 前/後6ピストン/4ピストン(アルミモノブロック)タイヤサイズ 前:245/35ZR20 後 :305/30ZR21エンジン種類水平対向6気筒DOHCツインターボ総排気量2981cc最高出力331kW(450ps)/6500rpm最大トルク530Nm/2300〜5000rpm最高速度306km/h車両本体価格1804万8148円

■Profile 吉田拓生 Takuo Yoshida
自動車雑誌の編集部を経て、2005年からフリーのモータージャーナリストとして活動をスタート。自動車、ヨット、英国製品に関する文章を執筆。現代のスポーツカーをはじめ、1970年以前のヒストリックカー、ヴィンテージ、そしてレーシングカーの試乗レポートを得意としている。