2月11、12日の2日間、テキサス州オースティンにあるサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)でNTTインディカー・シリーズの合同テストが行われた。

 しかし、その1日目は底気温と雨でほぼ走行はできず。2日目の走行時間を延長することもトライされたが、雨が残ったことで、存分に走行が行えるようになったのは午後になってからだった。

 新しい安全装備であるエアロスクリーンを全車が装着して初めて行われるテストは、トータル12時間の走行時間がエントラントに与えられるはずだったが、6時間以下と大幅に短縮された。


 晴れになっても気温は14度までしか上がらず、路面は最後まで完全なドライコンディションにはならなかった。それでも確実に乾いて行った路面でラップタイムは更新されていき、最終的にトップになったのはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)の1分46秒7603だった。

 昨年のCOTA戦でポールシッターが彼だった。その時のラップタイムは1分46秒0177。路面の舗装の一部が新しくされ、バンプが削られている部分もあるため、昨年の数字と今年の数字を直接比較することに大きな意味はない。

 コースの縁石を乗り越えたライン採りも今年は禁じられていた。エアロスクリーン装着によって重量は増えたマシンだが、ラップタイムへの影響は想像しているよりも小さい……ということなのかもしれない。

 2番手はホンダエンジンを使うアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)。シボレーエンジン搭載のパワーに0.2秒以上の差をつけられたが、セッション終了間際にコースアウトするマシンが続出。赤旗でアタックラップを完了できないケースが増えていた。ロッシは日の傾いたコースでエアロスクリーンに光が反射することに悩まされてもいた。

「セッションのトップになるのはいつだって気持ちがいい。速さを見せた僕たちだが、同時に多くのテストメニューもこなせた点も喜びたい。エンジニアたちも手応えを感じることができたはずだ」

「最後の最後で赤旗が連発され、用意してきたメニューを全部こなしきれたわけではなかった。しかし、重要な項目はチェックし、知りたかった情報の大きなものが得られた」とパワーはテスト大成功に気を良くしていた。

 ルーキーながらスコット・マクローリンは3番手につけ、昨シーズンチャンピオンのジョセフ・ニューガーデンも4番手。そして、昨年度インディ500ウィナーのシモン・パジェノーも6番手と、チーム・ペンスキーは全員がトップ10入りし、ライバル勢を一歩引き離す仕上がりぶりとなっている。

 チップ・ガナッシ・レーシングは、6度目のチャンピオンを狙うスコット・ディクソンが8番手。パワーとの差は0.9318秒と決して小さくはなかった。チームメイトはフェリックス・ローセンクヴィストが11番手で、新加入のマーカス・エリクソンは19番手。ペンスキーに比べてチーム内の格差が明らかに大きい。互角の戦いを実現するには若手ふたりの急成長が必要だ。

 アンドレッティ・オートスポートの方がガナッシよりパフォーマンスは良かった。ハーディング・スタインブレナー・レーシングを吸収し、マイヤー・シャンク・レーシングとの提携も結んで、アンドレッティ・グループのマシンは合計6台。豊富に得られるデータを武器に打倒ペンスキーを目指す。

 今回のテストでは最終的にロッシの2番手が最上位で、昨年COTAでキャリア初優勝を飾ったコルトン・ハータ(アンドレッティ・ハーディング・スタインブレナー・オートスポート)がトップと0.6069秒差の5番手だった。

 このふたりが今年のアンドレッティをリードしていくことになりそうだ。そして、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・ハータ・ウィズ・マルコ&カーブ・アガジェニアン)、ジャック・ハーベイ(マイヤー・シャンク・レーシング)、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が12〜14番手に並び、ザック・ビーチ(アンドレッティ・オートスポート)が17番手だった。

 テスト終了の1時間ほど前、アンドレッティ勢6人は全員がトップ10入りしていた。彼らはチーム全体として、昨シーズンよりパフォーマンスを上げている。


 2番手でもロッシは満足気だ。

「戦闘力という面から見て、僕らは今シーズン、現時点でまずまずのところにつけることができていると思う。テスト2日目の午後、短時間で慌ただしく仕事を進め、用意してきたテストプログラムのほぼすべてをこなし切った」

「エアロスクリーンは心配されたほどトラブルを出さなかった。夕日の反射は気になったが、開幕まで対策ができるはずだ」とロッシは語った。


 5月のインディカーGPにしか出場しない予定だが、スコット・マクローリンは将来有望なドライバーであることを強く印象付けた。シーズンエントリー全車を相手に、たった2回目のテストだったというのに3番手につけたのだ。

 昨年度インディ・ライツチャンピオンのオリバー・アスキュー(マクラーレンSP)、9番手に食い込んだアレックス・パロウ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・チームゴウ)、昨年度インディ・ライツ2位のオランダ人リナス・ヴェーケイ、カーリンのテストしていたブラジル出身ドライバーふたり、フェリペ・ナスールとセルジオ・セッテ-カマラとルーキーたちも注目すべきドライバーは非常に多い。

 2年目のドライバーでもハータ、ローゼンクヴィスト、エリクソン、サンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・バッサー・サリバン)らが優勝のチャンスを持っている。

■タイムを追求しなかった琢磨の合同テスト
 今回のテストで十分にパフォーマンスを発揮していなかったのが、佐藤琢磨とグラハム・レイホールのふたりを走らせるレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングだ。

 レイホールが16番手、琢磨が22番手という結果に終わったのは、彼らがラップタイムを追い求めてのセッティング変更を繰り返さず、オフの間に見つけた新しいアイディアを数多く試した結果だった。

 今シーズンを戦う上でのベースをここでまず固めようというアプローチだったのだ。サーキット・オブ・ジ・アメリカスは第4戦の行われるコースなのだから、今回のテストでどれだけ速く走れるかを目指すのが通常だが、そうしたトライをしなかったのだから、ラップタイムでの上位に食い込むことは叶わなかった。レイホールのベストは1分47秒9870で、琢磨は1分48秒6896だった。

「昨年の自分たちの戦いを振り返り、今シーズンにむけて必要になると考えられたセッティングを確認する。それは絶対にこのテストで行う必要があった」と琢磨は説明した。

「ラップタイムを良くするためのセッティング変更はしなかったので、ライバルたちにタイムで差をつけられるのは当然。もっと走りたかったし、タイムも縮めたかったから、フラストレーションの溜まるテストになっていた」

「しかし、シミュレーターなどで試していたセッティングを実際にコースでトライし、想定をしていた結果や反応が得られたので、それは今シーズンのマシンを良くすることに繋がるはず」と琢磨は語った。

 琢磨陣営はフロリダ州セブリング・インターナショナル・レースウェイのショートコースで3月初旬にストリート用テストを行う予定だ。

 そこでは開幕戦セント・ピーターズバーグ、第3戦ロングビーチのストリート2レースでのパフォーマンス獲得を狙ったプログラムを用意するという。

 ルーキーたちの中には全長1.5マイルのハイバンクオーバル=テキサスモータースピードウェイのテストを計画しているチームもある。

 セント・ピーターズバーグで行われる2020年シーズンの開幕戦までは約1カ月だ。