発表されたばかりのモデルじゃないだけで、最近ちょっとスポットが当たっていない
そんな名車に乗りまくる当企画、現行車「再」検証。
今回は兄貴分のVストローム1000が1050にリニューアルしても輝きを失わない
弟分のVストローム650。
ミドルクラスのアドベンチャーモデルならではの魅力とは?
文:中村浩史/写真:松川 忍
※この記事は月刊オートバイ2020年10月号に掲載した「現行車再検証」を一部加筆修正しています。

ビッグオフロードからアドベンチャーへ 流行の変遷

いまのアドベンチャーブームの先駆けとなったVストローム650

これまでの日本のオートバイ史、いろんなブームや流行りがあった。レーサーレプリカが流行った時期があるし、アメリカンも、トライアルも、ネイキッドだってブームになった。

その意味では、いま人気のカテゴリーといえば、アドベンチャーだ。いろんなタイプのモデルはあるけれど、オフロードにも踏み込んでもいけるロードモデル、ロングツーリングモデル──これが実質的な定義だろう。

いうまでもなく、このアドベンチャー人気のけん引役は、BMWのGSシリーズ。「ゲレンデ・シュトラッセ」と名づけられたモデルは、1980年に生まれたR80G/Sを皮切りに、オフロードとツーリングの走りに特化したカテゴリーとして進化してきた。

ただのツーリングバイクではない、ただのオフロードモデルでもないアドベンチャー人気は、やがて日本にも飛び火。87年にはカワサキがKL600R天涯を、88年にはホンダがアフリカツイン650、スズキがDR750Sを、89年にはヤマハが750スーパーテネレを発売し、4メーカーのライバルが出揃うことになる。

この頃は、まだ「ビッグオフロード」と呼ばれることも多かったけれど、いつしか世の中はレーサーレプリカやネイキッド、アメリカンのブームへと移り、今また時代がひと回り。新生アフリカツインが第2期ブームをけん引し、Vストローム1050、そしてテネレ700まで発売された。

この「第2期」アドベンチャーブーム、初めて発売されたのがVストローム650だった。その後Vストロームが1000cc版を追加、新生アフリカツインが発売され、今ではアドベンチャー=ビッグバイク的な印象も色濃いが、ヤマハがあらためてテネレを700ccで発売したように、第2期アドベンチャーの先駆Vストローム650には絶対的な優位性があった。それが「ミドルクラス」というサイズだ。

車両重量を見てみると、BMWの現行R1250GSは256kg、CRF1100Lアフリカツインが226kgに対し、Vストローム650は215kg。車体サイズの数字的には大差なくとも、やはりVストロームはひと回り、ふた回り小さい。このミドルクラスが大きな意味を持っているのだ。

スズキ「Vストローム650XT」試乗インプレ・車両解説

Vストローム650と1050の重量差は30kg以上、その差が生むもの

走り始めると、やはりVストローム650XTの小ささを実感することになる。なにもBMWのGSやアフリカツインと比べなくとも、いちスポーツバイクとしてスリムでコンパクトなのだ。

それもそのはず、Vストローム650シリーズのベースとなったSV650は、国内仕様として400cc版も発売されていた、つまりそれは400ccサイズということ。もちろん、アドベンチャースタイルにカウルやアップハンドルを装着しているから、400ccサイズそのままではないけれど。

街中を走りだすと、650サイズの取り回しやすさがよくわかる。Vツインエンジンを使用していることで車体幅もスリムで、足つき性も身長178cmの私で両足が問題なく接地、ハンドル位置やステップ位置に少しの無理もなく、長距離をリラックスした姿勢で走るためのライディングポジションを取ることができるのだ。

たとえば兄貴分のVストローム1050と比べると、走り出しに駐輪場から引き出すだけで違いを実感できる。車重の差は30kg強、650が軽い。30kgも違えば、サイドスタンドをはらったときにズシリと来る重さにも差があるものだ。

まずは兄貴分で少し持て余し気味の街中でも、650は自在に操ることができる。街中を走る常用回転域は3000〜5000回転といったところで、3000回転以下でもスムーズに回るトルクが使いやすい。

ハンドリングは安定性重視、クイックすぎない、それでいて重ったるくない、ニュートラルなもの。前19/後17インチというホイールサイズの組み合わせも、落ち着きと軽快さをうまく両立している。これは、兄貴分ら1000ccクラスのアドベンチャーでは感じられない安心感。あぁ、やっぱり650っていいなぁ、と実感する瞬間だ。

となると、1000ccクラスの兄貴分の方が優れているのは、やはり高速クルージングだろう。高速を走っていての安定性は、やはりビッグサイズの方がどっしりスタビリティがあるもので、ここはやはり1800ccと3000ccのクルマのような関係性=大きなサイズがクルージング向きになるものだ。

それでも650のクルージング快適性が劣ることはない。もちろん、これが200km/h巡行なんてレベルになると、車重の重さが武器になるものだけれど、国内の法定速度でその差「30kg」のメリットを感じることはない。

次の流行はミドルクラスのアドベンチャーか?

高速道路を降り、ワインディングに差し掛かってみると、ここでも650のメリットを実感することになる。言うまでもなく、30kg差のある2台のオートバイを同じステージで走らせると、やはり軽量なモデルのコントロール性が際立つものだ。

街中、そして高速道路で使っていた5000回転以下のエリアの少し上、8000回転あたりをメインにワインディングを走ってみても、Vストロームの扱いやすさは変わらない。

パワー特性は、低回転から高回転まで見事なほどのフラットトルクで、1万回転あたりまでスムーズに回りきる。Vストロームは、一定スピードで疲れ知らずに距離を稼ぐような乗り方にピタリとフィットしているのだ。さらに特筆すべきはシートの出来で、硬くもなく柔らかすぎず、クッション厚がきちんと確保されているため、どこまで休憩なしで走っても、身体の負担が驚くほど少なかった。Vストローム650シリーズのシートは、国産モデルの歴史でもかなり上位につけると思う。

シャープなハンドリングも、低回転からトルクのあるエンジンももちろんだけれど、このシートの出来こそ、アドベンチャーが本当に持つべきキャラクターだろう。それが、Vストローム650シリーズをロングセラーにしている要因なんだろうと思う。

ツーリングの最中、走っていく方向に分岐があり、メインではない方は明らかに荒れた路面コンディション、というケースがまま、ある。

こんなシチュエーション、旅人ほど燃えるものだけれど、道が荒れるほど、ビッグバイクで踏み込んで行くには勇気がいるものだ。

だからミドルクラスがいい。兄貴分のVストローム1050ではちょっと迷うダートの入り口でも、650ならいける気がする!

アドベンチャーの次に来るもの。それは、Vストローム650が君臨する、ミドルクラスなのだと思う。

[現行車再検証 - webオートバイ]

スズキ「Vストローム650XT」足つき性・ライディングポジション

シート高:835mm
ライダーの身長・体重:178cm・80kg

ハンドルは高め、ステップは後退しない、アドベンチャーのお手本のようなリラックスポジション。足つきは835mmというシート高のわりには低く、178cm/80kgのライダーで踵が少しだけ浮く程度だった。

スズキ「Vストローム650XT」各部装備・ディテール解説

2003年、DL650のネーミングでヨーロッパデビューしたロングセラー。それから10年後の2013年、国内仕様としてVストローム650として発売された。エンジンはSV650の水冷Vツインをベースとしたもので、フューエルインジェクション、デュアルイスロットルバルブなどを装備。今回の取材はワイヤースポークホイールの650XTで、フロントカウルデザインなどを一新した。

スズキ「Vストローム650XT」主なスペック・価格

全長×全幅×全高 2275×910×1405mm
ホイールベース 1560mm
最低地上高 170mm
シート高 835mm
車両重量 215kg
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ90°V型2気筒
総排気量 645cc
ボア×ストローク 81.0×62.6mm
圧縮比 11.2
最高出力 51kW(69PS)/8800rpm
最大トルク 61N・m(6.2kgf・m)/6500rpm
燃料タンク容量 20L
変速機形式 6速リターン
キャスター角 26゜
トレール量 110mm
タイヤサイズ(前・後) 110/80R19 M/C 59V・150/70R17 M/C 69V
ブレーキ形式(前・後) ダブルディスク・シングルディスク
メーカー希望小売価格 96万8000円(消費税10%込)

文:中村浩史/写真:松川 忍

[現行車再検証 - webオートバイ]